長嶋茂雄記念岩名球場「予算0円」の闇 ①

高橋 富人

先日、佐倉市にある「長嶋茂雄記念岩名球場」で、4年ぶりに「長嶋茂雄少年野球教室」が開催されました。

長嶋茂雄少年野球教室、4年ぶり開催 G戦士が熱血指導「名誉監督、来年は待ってます」横断幕でエール

長嶋茂雄少年野球教室、4年ぶり開催 G戦士が熱血指導 「名誉監督、来年は待ってます」横断幕でエール  佐倉
 プロ野球・巨人軍の終身名誉監督、長嶋茂雄さん(86)の名を冠した少年野球教室が5日、出身地である佐倉市の長嶋茂雄記念岩名球場で4年ぶりに行われた。同球団の往年の名選手が講師となり、地元の野球少年少女

ジャイアンツの往年の名選手7名による少年少女たちへの熱のこもった指導を観覧しながら、私は議員になったきっかけの一つであるこの球場を、複雑な思いで眺めていました。

4年ぶりに開催された「長嶋茂雄少年野球教室」の様子
筆者撮影

地方議会の権力固定化による「国家的損失」

これから紹介する内容は、私が議員になる前の2013年から2016年までに発生した「長嶋茂雄記念岩名球場」の改築に係る佐倉市議会で発生した「闇の深い」顛末の記録です。

本件をアゴラで紹介する理由は、以下2点です。

  1. 権力が固定化した地方議会では、一部議員の利権や面子の維持のためだけに、国家国民の希望をも踏みにじる事案が容易に発生する証左として、よい事例である点。
  2. 佐倉市議会がなした「恥ずべき議決行為」を、記録として残しておくべきであると考えたこと。

また本件について、佐倉市議会主流会派である、さくら会等がなした行為の要約と結果は以下の通りです。

  • 2013年、佐倉市議会は「岩名運動公園野球場」を「長嶋茂雄記念岩名球場」に名称変更する条例改定に賛成し、さくら会は「長嶋氏の名前に恥じない立派な球場にする」よう市に公式に要請する。
  • 2015年、執行部が、上記を踏まえ「長嶋茂雄記念岩名球場」の改築のために算出した予算総額16億7,000万円を、さくら会がいったんは常任委員会で賛成・可決したにもかかわらず、そのわずか5日後の本会議最終日「0円」に修正してしまう。
  • 結果、国が佐倉市に内示をだした「長嶋茂雄記念岩名球場」の交付金予算7億円は、大元の予算が「0円」となったことで予算化されず、反故になってしまう。
  • 2016年、佐倉市は改めて「長嶋茂雄記念岩名球場」の予算を10億円以上縮小し、総額約6億6,500万円で議会に上程し、市議会で可決。このときは、さくら会も賛成にまわる。
  • 結果、予算が大幅減額されたことで、当初計画されていた一三塁側スタンド、バックネット側の広い観客スペース、硬式用防球ネット等が設置できない「一般的な市民球場」の規模で設計、改築される。
  • 以上により、「長嶋茂雄記念岩名球場」は高校野球の夏の地区大会予選すら実施できない設備の球場となり、現在に至る。

本件について私は、今でも「さくら会等当時の議員が、佐倉市民と我が国に取り返しのつかない損失を与えた事案」と考えています。なお、球場改築予算「0円」に賛成した議員は、現在でも12名が現職です。

冒頭私が「議員となるきっかけ」として紹介したのは、このような振る舞いをする議会を放置することは許されないと考えたことが、私が議員を志すひとつの契機となったことによります。

次の稿では、本件のはじまりから行政の予算の検討過程までを詳述します。

(次回につづく)