第20回統一地方選挙の前半戦である、9都道府県と6政令指定都市の首長、それから41都道府県議会の投票が4月9日に行われ、後半戦の市町村長と市町村長議員選挙は本日、23日投開票であるが、知事、政令指定都市市長については、なんと前代未聞の、15選挙すべてが「ゼロ打ち」、つまりNHKが投票締め切りと同時に、開票率ゼロパーセントで「当確」を出すという一方的な選挙だった。
知事選については、激戦かどうかで前回より上がったり下がったりだが、都道府県議会選挙の投票率は、41.9パーセントで前回より2.2パーセント下がり、過去最低を更新した。
統一地方選の後半戦のうち、政令指定市を除く88市長選と294市議選、東京の特別区の11区長選と21区議選が16日に告示されたが、25市長と、14市議選の237人が無投票で当選だった。
また、18日、町村長と町村議員の選挙が告示されたが、町村長選挙のうち、56%にあたる70町村の選挙で無投票で当選が決まり、町村議員の選挙では、約3割が、無投票で、20の町村では候補者が定員に満たず、定員割れとなった。
議員のなり手不足の問題は、また、論じたいが、知事や市長の多選も酷いし、経歴のバラエティも著しく偏っている。詳しくは、『都道府県のトップは実は「よそもの」が多い…知事47人中27人が「東大出身のエリート」である本当の理由』という記事を別のところで書いて表も入れたので参照頂きたいが、概略は以下のようなことだ。
現職の47都道府県知事の初就任時の平均年齢は52.6歳である。最年少は鈴木直道(北海道)の38歳で、最高齢は服部誠太郎(福岡県)の66歳である。30歳代が2人、40歳代が16人、50歳代が14人、60歳代が15人である。
職歴を見ると、いわゆる官僚が28人で過半数を占める。
地方公務員では、服部誠太郎(福岡)は生え抜きの県職員ではただ1人、副知事から知事になっている。佐竹敬久(秋田)も元県庁幹部だが、佐竹氏は旧藩主佐竹一門だから少し意味合いが違う。福田富一(栃木)は早くに県庁を辞めて市議からのし上がった。鈴木直道(北海道)は東京都庁から夕張市役所には出向、市長から知事になった。
学歴では、27人が「東大出身だ。かつて、県庁職員出身の知事が10人ほどいた時期もあったのだが、いまは定年延長で、都道府県庁のプロパー職員が副知事になれるのは60歳くらいであるので、「生え抜き知事」というのはなかなか誕生しにくい状況にある。
また、最近の傾向とか、制度改善の提案は、同じく『若くて見た目がよければ知事になれる…政策などほとんど議論されない「日本の地方自治」という深すぎる闇』をご覧頂きたいが、
それなりに無風選挙でなかった、北海道・大阪・奈良・徳島で勝ったのは①若い、②端正なルックス、③姿勢だけでも改革指向という面々で、それほどの政策論争があったわけでない。直接選挙でも米国の選挙では、予備選挙などを通じて、候補者をしっかり品定めするプロセスがあるが、日本ではそういうものもないから、断片的な印象での勝負になるのだ。
大分では、「一村一品」で知られる平松守彦、全国の知事の中で唯一の事務次官経験者である広瀬貞夫という大物のあと、同じ経済産業官僚で大分市長の佐藤樹一郎が後継として出馬した。市長としてコロナ対策などで優れた手腕を発揮して評価も高かった。
しかし、3人連続経済産業官僚というのを不安に思う人もいた。しかも、対立候補として立候補したのが、野党系の参議院議員の安達澄で、まさに上記の三つの条件を備えた候補だった。
といっても、4年前に獲得した議席を任期途中で投げだした安達では、連合が中立とするなど、野党系はまとまらず、政策らしきものもなかったので、佐藤が57.3%に対し、安達は42.7%と差をつけられた。それでも安達がそこそこの票を集めたのは、若くてイケメン、姿勢だけ改革を打ち出したからだ。
どうしたら首長多選を減少させ、官僚に偏った出自を多様化させ、議会を活性化させられるかについても同じ記事で書いたが、憲法を改正できるなら、私は都道府県首長も首相と同じように議会で選ぶ議院内閣制のほうがいいと思う。
現行憲法のままなら、現在は、首長や議員などが他の公職に立候補する段階で職を失うが、これを当選したらにすればいい。首長が国会議員に出馬したり、逆に国会や地方議会の議員が首長に立候補できるので無風選挙は少なくなる。
なお、都道府県議会選挙では、維新の躍進と共産の凋落が対照的だった。共産党について、私はG7でただひとつ共産党がそれなりの勢力をもっていることがおかしいので、名前を変え、過去を反省し、日米同盟を認めるのが再生に不可欠と、『日本の政治「解体新書」: 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)で書いた。
そうしたところ、代表公選を提案した京都の有力党員を除名して、古典的な共産党から脱皮してないことを露呈してしまったのが敗因だ。