黒坂岳央です。
「人生の選択肢は多ければ多い方がいい」という意見をよく見る。確かに選択肢はないよりあった方がいいに決まっているという感覚は誰しもあるだろう。しかし、物事は意外とそう単純ではなく逆にその選択肢の多さが苦しみになってしまうこともあると思うのだ。
本稿ではなぜ選択肢が多すぎると人生は不幸になるのかという理由に加えて、どうすれば解決できるかを論考したい。
選択肢は一定を超えると逆効果に
選択肢が多すぎると、逆効果になるという話はthe paradox of choiceといって、アメリカの心理学者のバリー・シュワルツ氏によって言及されている。
シンプルに考えると、この効果は日常に溢れかえっている。過去ふらりと入ったお店では、100種類以上のメニュー数を売りだった。「こんなにある中からたった一つをとても決められない!」と感じ、店員さんに「一番人気は何ですか?」と早々に思考を放棄してしまった経験がある。
また、その他でも英会話スクール、投資信託、保険、マッチングアプリなどあまりにも選択肢が多すぎるために、「多すぎて決められない」という新たな悩みとなった経験者は多いのではないだろうか。
食事のメニューならかわいいものだが、それが就職、転職、起業するビジネス、結婚相手など人生インパクトが極めて大きいものだと本当に悩ましくなってしまう。
選択肢が多いとそれだけ思考に負荷がかかる。わかりやすい優劣が見えるなら楽だが、大抵の場合はそれぞれがメリットとデメリットを内包するため、決めるのが難しい。損をしたくない!と考えるほど、選択が難しくなる。結果、このプロセスが苦しみになるのだ。
選択肢を絞る力
そこで重要になるのが「選択肢を絞る力」である。全体論的にいって枝葉の部分ではなく、あくまで木の幹を押さえればいい。
たとえば勉強法についていえば、様々な講師が様々な流派で提唱しているため誰を信じていいのか分からないということが起きる。この場合、見るべきは講師ではなくむしろ生徒の結果の方だ。華々しい講師の経歴や説得力のある主張だけを聞くのではなく、その流派で成功している生徒をどれだけ輩出できているかが重要である。
極論、教師のプレゼンが優れていても学力が上がった生徒がいなければ効果がないということになるだろう。加えて、自分自身が勉強を経てどうなっていたいか?という明確なビジョンを持った上で、その学習メソッドで自分の願望を叶えることができるか?を評価するのだ。
また、就職、転職について言えばまずは自分にとって重要なポイントを言語化し、優先順位をつけることが肝要である。目先の給与を最大化させようとするのではなく、5年後、10年後にその分野の専門家になるために必要なスキルアップができる仕事を選ぶことで、長期的なトータルリターンはより大きくなるというイメージである。
つまるところ、選択肢を絞るためには自分自身のニーズを正確に理解しておく必要があるとうことだ。「どれを選べばいいか分からない」という感覚は「自分自身が望むものが分からない」と同義である。そうなるとやるべきは自分自身の価値観の棚卸しなのである。
自分が何をやりたいか? どういうことに価値を感じるのか? 楽しいと感じるか? こうしたことを理解しておけば、たくさんの選択肢の中から自分が望むものを拾い上げることができるだろう。
自身の価値観の棚卸し
前のパラグラフでは、自分の人生の価値観の棚卸しが必要だと話した。いうのは簡単でも実行は難しい。ではどうすればいいか?結論、言語化することである。
自分の頭の中だけでモヤモヤ考えることは勧めない。なぜならそんなことをしても、その時々の感情で簡単に右往左往してしまうためだ。人間の感情は水物であり、まったく信用ならない。たとえば普段から「この人は嫌いだ」と嫌悪している相手がいるとしても、その人物から満面の笑みで「おはよう!」と言われた瞬間から、嫌いがひっくり返ってむしろ好感を持つということは誰でもありえる。頻繁に感情に上書き保存されてしまうので、頭の中だけで処理をするべきではない。
しかし、言語化することで事実や体験ベースで自分の価値観を正確に残すことができる。筆者はプライベート日記を20年くらいつけているが、今思えば「あの頃は楽しかったな」と感じていることでも、日記を読み直すと「こんなに心が暗黒に染め抜かれていたのか」と驚かされるほどである。
記憶は美化されるので役に立たない。信用できるのは「記憶」ではなく、「記録」なのである。日記でもブログでもメモ書きでもいいので、自分が良かった、悪かった、「今後はこうしよう」と決めたルールなどがあるなら、面倒でも書いておき整理することである。
これを繰り返すことで、思考のパターンや価値観のクセなどが浮かび上がり、自分自身を客観的に理解することにつながる。結果、ブレない指針ができることでその時々の選択肢に迷うことがなくなるだろう。
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