夫婦選択性別姓に反対しているのは高齢者
まず、世界で夫婦同姓を強制しているのは日本一国のみであり、しかも伝統でも歴史でもありません。法務省のサイトにはっきりと出ています。
明治9年3月17日太政官指令
妻の氏は「所生ノ氏」(=実家の氏)を用いることとされる(夫婦別氏制)。 ※ 明治政府は,妻の氏に関して,実家の氏を名乗らせることとし,「夫婦別氏」を国民すべてに適用することとした。
このあと明治31年民法(旧法)が成立し、夫婦は,家を同じくすることにより,同じ氏を称することとされました(夫婦同氏制)。つまりそれまでは別姓でしたから日本の伝統は別姓です。
富国強兵制度の中、管理が楽なために旧民法は「家」の制度を導入し,夫婦の氏について直接規定を置くのではなく,夫婦ともに「家」の氏を称することを通じて同氏になるという考え方を採用したわけです。つまり夫婦別姓のほうが歴史的には古いのです。同姓強制は明治の富国強兵の名残というわけです。
さて、こちら総務省の調査データです。
まず、選択性夫婦別姓に反対するのは高齢者というのが明確に出ています。そして女性は若いほど旧姓を使いたいと言う人の比率が高い。
そしてこれが平成8年とだいぶん前の話ではありますが、
4割の爺さん、婆さんが「実家の名前を残すためには結婚が難しくなっても仕方ない」と回答している。
まあ、なんだかかんだ理屈を付けても結局は「嫁が息子と別の性を名乗るなんてけしからん」ということだし、政治家もこの層に配慮しているわけですね。
さらに夫婦選択性別姓を推している団体には「女性は男性の付属物ではないから反対」という感情的なフェミニストの皆さんもおり、こうした感情論では「旧姓併記でいいじゃん。勝手に旧姓名乗ってろ」という屁理屈に対応できない。
旧姓併記でいいじゃんと言えるのは、旧姓表記では物理的にだめな人たちがいるという前提がわかってないか、分からないふりをしている人たちであり、日本国民の大半はこういう人たちだから話がややこしくなるのです。
ジェンダー平等とかじゃなくて本当に必要な人に認めてあげる
という事が必要なわけ。従いまして今回は私は感情論は全く抜きにして
物理的に困る人は誰か
という話をします。準備はいいですか?
夫婦選択性別姓が本当にないと困るのはグローバルなハイスペック女子
ひとことでいうとこうです。
専業主婦とか、働いているといってもパート程度の人は全く困りません。困ることさえ想像付かないので「通称名併記でいい」と答えるわけです。あんたら関係ない。
グローバルで働くハイスペック女子は
- 海外渡航が多い。または駐在もある
- 論文を書いている
- 海外に銀行口座を持つ
- 労働ビザを取得している
みたいな人を指しますね。パスポートの旧姓表記など世界ではどの国も認めません。論文は改姓をすると別人扱いになります。
戸籍の名前 → マイナンバー → パスポート → ビザ → 銀行口座(日本の銀行だって大半は旧姓は認めない) まですべて紐付いております。結婚したら姓を変えないといけないとめちゃくちゃ大変な作業になり、下手したら実績を失うわけです。変えたい人は手間掛けて変えればいいだけで、今のように全員変えろだと不便すぎるわけです。
また、グローバルでなくてもしっかりとした企業で働いている場合、たいていは女性が姓を変えますから、離婚すると会社に届けて保険証から年金まですべて改姓届けを出さないといけない。つまり
離婚したことが強制的に会社に知られる
ということになります。今どきの会社ではいちいち結婚しているか、離婚しているかなんて訊きません。外資系なんて訊くだけでセクハラです。なのに離婚した場合は改姓届を出すことでみんなに知られる。これ、おかしいでしょうよ。
全員が別姓になるわけではなく、変えたくない人が変えないでいることにになんでジジババやネトウヨが反対するのか本当に謎です。ついでに「戸籍制度がなくなる」という人もいますが、別に戸籍制度のままで選択性夫婦別姓は実現できるし、ついでに世界で日本しかない(台湾もあるけど使ってない)戸籍制度もなくてもいけます。世界は個人を国が管理していて「家で管理する」なんて概念はなく、それで誰も困ってないのです。家で管理したほうがいいというのは単なる感情論です。
こうしたハイスペック女子はロースペック女子の何倍もの収入があるのでそのまた何倍もの税金を払い、日本経済を支えています。彼女たちが働きやすい環境にしないと日本は滅びてしまうわけですね。政府系組織のあるハイスペ女性には、海外に出張に行くたびに離婚と結婚を繰り返す人までいるそうです。
変えたい人は変える、変えたくない人は変えない
人の都合にまで口を出して、世界で日本だけの強制同姓を守れというのはちょっと変です。自民党でも菅さんをはじめ、改革派の人たちには選択性別姓を早く進めないと日本の滅亡が早まるというひとがたくさんいます。右曲がりの明治脳に振り回されていると、日本は本当に終わってしまうんですよ。少子化も止まりません。日本は何も変わらないとみんなが考えているからマインドが上がらないのです。
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2023年5月11日の記事より転載させていただきました。