ドナウ川よ、永遠に美しくあれ!

6月29日は「ドナウ川の日」(DanubeDay)だ。「ドナウ」といえば、日本の読者はワルツ王と呼ばれたヨハン・シュトラウス2世(1825~1899年)が1867年に作曲した「美しく青きドナウ」という曲名を思い出す人が多いだろう。シュトラウス2世の曲に詩人ゲルネルトが「ドナウよ、美しく青いドナウよ、谷を越え、牧場を越え、静かに流れる」といった牧歌的な詩を付けた。

ウィーンから見た“美しき青きドナウ川”の風景(2013年4月26日撮影)

720b3c59-s
▲ウィーンから見た“美しき青きドナウ川”の風景(2013年4月26日撮影)

ドナウ川はドイツ南部バーデン=ヴュルテンベルク州のシュヴァルツヴァルト(黒い森)に端を発し、東へ、そして南東方向に流れ、中欧・東欧諸国を通って黒海に注ぐ国際河川だ。河口にはドナウ・デルタが広がる。全長は2850kmで、ヨーロッパではヴォルガ川(全長3690km)に次いで2番目に長い河川だ。

その川沿いに14カ国、約8000万人がさまざまな恩恵を受けて生きてきた。「ドナウ川の日」は、その美しき青きドナウ川の水質や生態圏を保護し、改善することを目的とした日だ。ちなみに、「ドナウ川の日」は1994年6月29日にブルガリアの首都ソフィアで「ドナウ川保護条約」が締結された日を記念して2004年に制定された。

「ドナウ川の日」は今日、世界最大の国際河川フェスティバルに成長し、黒い森から黒海までの川岸でドナウの文化的多様性を祝うイベントやアクティビティが毎年開催されている。国際レベルでは、オーストリアのウィーンにある常設事務局「ドナウ川保護国際委員会」(ICPDR)がイベントを計画し、ICPDR加盟国とパートナーがさまざまな企画を行い、国際協力を推進してきた。

2023年の「ドナウの日」のモットーは「ドナウ川をきれいにしよう!」(Haltet die Donau sauber!)だ。ドナウ・アウエン国立公園では若者たちがゴミ収集キャンペーンを行った。ウィーンの高校のクラスを率いた国立公園レンジャーらはゴムボートでドナウ川を下り、川が絶えず運んでくる沖積ゴミを土手地帯から清掃した。また、ウィーン市やニーダーエステライヒ州から小学生たちがドナウ川とその生き物、そして積極的な自然保護について学んでいった(「ドナウの日」やICPDRについてはwww.danubeday.org、www.ICPDR.orgを参照)。

ICPDR事務局長のビルギット・フォーゲル氏は、「毎年ドナウの日、私たちは個人や地域社会が持続可能な未来に向けて行動を起こすよう促すことを目指している。今年も、私たちの共有の河川を現在と将来の世代にとってより清潔で、より健康的、より安全なものにするために、協力を推進している。ドナウ川流域を含むヨーロッパでは、干ばつが頻繁に発生し、河川の水位が低下している。これらの変化は、降雨パターンの変化、高温による蒸発量の増加、気候変動の影響によって生じているものだ。力を合わせて団結することで、ドナウ川の本来の美しさを維持し、気候変動の影響を緩和するために有意義な行動を起こさなければならない。ICPDRは、干ばつや水位低下に関連する国境を越えたニーズを理解し、対処するために積極的に取り組んでいる。現在と将来の世代のためにドナウ川の活気と回復力を維持することを目指して私たちは団結していきたい」と述べている(ウィーン国連広報サービス=UNISのプレスリリースから)。

「ドナウ川保護国際委員会」は、14の協力国と欧州連合(EU)から構成される国際機関だ。1998年の設立以来、河川流域管理に携わるヨーロッパ最大かつ最も活発な国際機関の1つに成長してきた。その活動はドナウ川とドナウ川流域全体の支流と地下水資源に関連し、さらに黒海との密接な関係もある。

なお、現在のドナウ川は水質汚染、化学汚染などが明らかになっている。ドナウ川の水質改善のために、氾濫原がドナウ川流域の硝酸塩汚染を除去できることを示す新しい研究が明らかになったばかりだ。最近の大規模なモデリング研究では、氾濫原を復元し、遮断された水域をドナウ川およびその支流と再接続することで、ドナウ川流域の水質改善と硝酸塩汚染の除去に重要な役割を果たす可能性があることが示されたという(氾濫源とは、洪水などによって河川が氾濫し、運ばれてきた土・砂・小石などが堆積して生じたほぼ平坦な土地)。

ウィーンの国連に取材に行く時など、地下鉄がドナウ川を通過するが、快晴の日にはドナウ川の水面が空の青さを反映して青く染まる時がある。今回掲載したドナウ川の風景は10年前の2013年4月26日に撮影したものだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年6月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。