これからはグリーンとデジタルだ。
4月2日の日曜日は、神奈川県議会選挙3日目で期間中の唯一の日曜日。前半戦のハイライトであった。初陣を戦う私の応援で新百合ヶ丘駅に入った前首相の菅義偉は、私の横で集まった聴衆にこう訴えた。
2030年度の日本の温室効果ガス排出量について、2013年度比で46%削減。そして50%の高みに向けて挑戦を続けていくとした意欲的な目標に触れ、自らの首相時代を振り返りながら、環境問題の解決を成長戦略に位置付ける世界の潮流を説いたのだ。
EUは環境覇権を狙い、世界をEUルールで席巻しようとしている。
好むと好まざるとに関わらず、企業は脱炭素の流れの中で自社の戦略を立てざるを得ない状況に置かれている。そして自国政府がその流れについていっていないとしたら、政府に対して方向転換するよう促さねば自社の生き残りは覚束ない。
実際にEUとのFTA交渉において、南米のアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイから構成される南米南部共同市場(メルコスール)は、欧州議会から決議批准を拒否された。これら4か国のビジネス関係者は、EUでの商機をみすみす失うこととなったのだ。
環境問題の解決に向けた様々なビジネスを、新たな成長戦略と位置付けるEU。欧州で国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)を取材してきた著者は、欧州グリーンディールの現状と、世界に先駆けてルール形成することによって経済の覇権を握ろうと試みる欧州の姿を追う。
気候変動を巡る交渉は、世界最大の排出国である中国、先進国グループの米EU、そして世界最大の人口を抱えるインドを中心に繰り広げられるだろう。
先進国VS途上国で展開される国際社会での交渉は、まさに各当事国が国益をかけて戦う外交の最前線だ。
しかし、北京や上海など場所によって先進国と変わらない豊かさを享受する中国と、国の大部分が未だ貧しいインドでは、立場は微妙に異なる。また、温暖化によって水没の危機にあるツバルなどの島しょ国は、必ずしも多くの途上国グループと利害を一にしない。
こういった流れの中で、途上国の分断を図ろうとする先進国グループ。米中対立が激しくなる中で、潮流を見極めようとする、日本を含めたその他の国々。今後の議論は2024年の米国大統領選の結果いかんで再び力学が変わることも十分考えられるため、複雑さを増す各国の立ち位置をこの機会に把握をしておきたい。
このような激しい国際交渉は、次世代エネルギーと目される水素においても既に各国で綱引きが行われている。ロシアによるウクライナ侵略を目の当たりにした各国は、特定の一国にエネルギーを依存することのリスクを、身をもって知った。各国が水素の自国生産を進める中で、日本は挽回し再び環境問題解決で世界を先導できるだろうか。
奇しくも今年2023年は、第1次石油危機から半世紀の節目。エネルギー依存のリスク軽減・供給先の多角化を図り、新エネルギー開発に原発を活用することも厭わない欧州に、日本も学ぶべき点は多い。
■