黒坂岳央です。
国税庁の民間給与実態統計調査(2023年9月)によると、個人で年収1000万超の所得を得る個人の数は1997年のバブル期のピークを超えて過去最多となった。
税負担は増加し、インフレもしているために実質使える所得は昔よりも減った。しかし、生活必需品は高くなっても娯楽費は大幅に安くなったといえる。年収1000万超が過去最多になった理由など数字を考察したい。
高所得者が増えた理由
なぜバブル期のピークを超えて高額所得者が急増したのか?それにはいくつか要因が考えられる。
まず、女性が労働市場に参入したことがデータに大きなインパクトを与えただろう。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、女性の賃金水準は右肩上がりに伸びており、女性の高額所得者数は大幅に増加している。
さらに一部の収益性の極めて高いリーディングカンパニーにおいては、中小零細を圧倒するような高額所得のオファーも寄与しただろう。特にIT、金融、商社、広告では20代で1000万稼げる仕事を探せば驚くほど出てくる。高度専門技術の深化に伴って能力主義に応じた報酬を出す企業は確実に増えている。
そして労働市場は高い流動性や多様なワークスタイルに変化した。転職サイトに経歴を登録しておくことで、キャリアアップオファーが飛び込んできてわらしべ長者のように所得を増加させたり、会社員をやりながら空き時間でプログラミング制作などを請け負うエンジニアなどである。
労働環境やプレイヤーの質的変化に伴う複合的理由があげられるだろう。
高額所得者増加は喜ぶべきか?
データ上、高額所得者が増えている。普通は稼ぐ人の数が増えることは喜ばしいはずだ。だが、その実態を見るほど、手放しで喜んで良いかわからなくなってくる。
国民全体の所得が向上して緩やかなインフレが起きる、これが一つの理想形とする声もあるが、実際には所得格差によるものだ。つまり、能力や環境に恵まれた強者がより多く稼ぎ、そうでない者が非正規雇用で長時間労働でなんとか食いつないでいるという状況である。内閣府発表のミニ白書によると、特に若年層において所得格差の拡大が深刻となっている実態が明らかになっている。
知識、スキルを主体的に獲得していかなければ、格差の「ネガティブ側」に甘んじることになる。いつの時代でも「芸(ビジネススキル)は身を助ける」という本質は変わらない。
どの場所で稼ぐか?も重要
年収1000万という所得を「どの場所で稼ぐか?」は極めて重要になってくる。
たとえば子持ちで東京都内に住むとなれば、世間が考えるほど贅沢な暮らしはできない。全国宅地建物取引業協会連合会の発表(2023年4月)によると、子供一人の3人家族が2LDKの賃貸物件で生活する場合の平均は23区内で約18.9万円、生活費は約36万円以上だ。一馬力家庭であれば、手取りは年間約750万円、月62万ほどなので娯楽費や教育費を加えて贅沢をすれば即パンクする。
翻って地方に身を置けば状況はまったく異なる。家賃は圧倒的に下がるので生活費は20万円以下に抑えることは可能であり、実家ぐらしならさらに安い。同じ年収1000万でもこちらは非常に余裕のある暮らしを送ることができるだろう。最も、地方在住で高額所得者になろうとするなら、医師かリモートワークか事業経営者、投資家など職業はかなり狭まってしまうのだが。
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年収1000万超の高額所得者は増加したが、住んでいる場所や家族構成によっても数字の捉え方は随分変わってくる。
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