モダンフレンチ美食の誘惑:L'ARGENT(ラルジャン)

出口 里佐

出口里佐です。

今回は、銀座から虎ノ門に移転して、今月10月初めにリニューアルオープンした、ラルジャンをご紹介します。

ラルジャンの加藤順一シェフのお料理は、銀座の前のお店の麻布十番と新橋、スブリムの時代からずっとお気に入りで、7年以上通っています。

国内では吉野建シェフ、パリの当時三つ星のアストランスのパスカル・バルボシェフ、コペンハーゲンでは北欧料理の名店のいくつかで修業されています。フランス料理の基本を押さえた、肉の焼き方、魚の火入れ、ソース、食材の活かし方、北欧の発酵、洗練された盛り付けのセンスなど、どれも素晴らしいです。

今回は、夫の誕生日が近かったので、そのお祝いで訪れましたが、誕生日などのお祝いごとでなくても、1ヶ月半から、2ヶ月に一度は行っています。なぜか定期的に食べたくなるお料理です。

虎ノ門ヒルズ駅の白いドラえもん

お店の最寄りの虎ノ門ヒルズ駅は、東京に住んでいるのに、初めて降りて、びっくり。白いドラえもんが居て、未来都市の様な雰囲気でした。エレベーターで地上に出て、そこから徒歩で5分ほどで、ラルジャンの入るビルに到着。そちらの2階です。

カウンター席がメインで、4人用のテーブルが2つ、個室もあるそうなので、商談など接待にも使えそうです。

ライブ感あるカウンターで、目の前で盛り付けされます。

カウンター席からは、シェフやスタッフの方が目の前で盛り付けしているのが見られるので、ライブ感があります。料理に興味があるかたなら、これは嬉しいと思います。

アミューズ。宮城県の畠山さんのムール貝、茄子のムース、ソテー、スウェーデンのサスティナブルなキャビア

アミューズは、宮城県のムール貝、茄子のソテー、泡、スウェーデンのキャビア。ムール貝は畠山さんという方が、数十年前から植林で森を作り、それが海を豊かにすると考えで養殖されているものだそう。焼き茄子(と言っても、作り方をシェフに聞いたら途方もなく手間がかかってました)の香りと味わいが、ムール貝の旨みと一緒になって、押し寄せてきます。キャビアはお腹を裂かないで取り出すサスティナブルな方法を採用しているそう。一口で食べるにはもったいないくらいです。

ステラマリスの吉野シェフへのオマージュ、梨と縞鯵。

前菜のひとつめ、愛媛の縞鯵と梨のお料理は、加藤シェフの師匠、吉野建シェフへのオマージュだそう。マリネした少しピンクの縞鯵、真っ白な梨の薄切りが隠れていて、ヴィネガーの酸味に、グリーンのディルのハーブオイルと、柚子の泡がベールになっている美しいお皿です。イメージは吉野シェフの小田原の名店、ステラマリスで出された料理だそうですが、お魚と果物を合わせるのは当時は珍しかったとか。食べ終わったとき、パリでいただいた鯖とプラムのフランス料理を思い出しました。

掛川茶とフォアグラ、ラタフィアのジュレ

次は、掛川のお茶とフォアグラ。加藤シェフの実家は静岡でお茶の栽培をされているそうです。ご実家のお茶の葉をフォアグラの外側に使ったお料理。添えられたジュレは、ラタフィアという香りの良い希少なシャンパーニュ。ほんの少しでも贅沢な気分になります。ブリオッシュのトーストも一緒に別皿で。

そして、明石の蛸のベニエ。中には、一口サイズの蛸がコロコロと柔らかく潜んでいました。旨みがある蛸で、噛むたびに味わい深かったです。

フォアグラには、ブリオッシュトーストが定番

ここで、ラルジャン名物のバター2種、毎朝厨房で作られる、フレッシュバターと、焦がしバターとバターミルクを合わせたホイップバターが、サワードゥパンと共に登場。このバター達がほんとうに美味しくて、食べきれないのを持ち帰りたい衝動に駆られます。サワードゥパンは親指くらいの小さなパンですが、ぎっしり中身があって、2つでも満足感あります。それでも、美味しいのでもう1つお願いしました。

加藤シェフのスペシャリテ、発酵マッシュルームスープ。

加藤シェフのスブリムの時からのスペシャリテ、発酵マッシュルーム スープ。これを最初にいただいて、リピーターになりました。発酵することで、食材がこんなに美味しくなるんだと感動です。上からフレッシュなマッシュルーム、ソテーしたマッシュルーム、火入れした卵黄がなかに潜んでいます。以前は、温泉卵でしたが、新しいお店のために、全体のメニューのボリュームを考えて、変更されたそう。目の前で最後に発酵マッシュルームのソースが注がれて完成です。

根セロリに藁の香り

北海道の根セロリ。シェフがコペンハーゲンで修業中にいただいた料理で、暖炉で焼いていたそうです。レストランでは、藁につつんで、オーブンで焼いて丸ごとプレゼンテーションの後、一人分を提供。緑のふさふさの葉を束ねているのは、北欧ぽいです。隣のお皿は出汁を使ったソースで、これにつけて根セロリをいただきます。あったかくてホクホクして、藁の香りもします。

長崎県のクエと帆立ムース、蛤の出汁とサフランソース

長崎県五島列島のクエ。クエの中には帆立のムース。クラシックなフランス料理です。鮮やかな黄色いソースは蛤の出汁にサフラン。

愛知県の高原コーチン、松茸、黒トリュフのポトフ。ほっこりします。

メインの最後は、愛知県の高原コーチンを使ったポトフ。寒くなってきたので、こういうほっこりする、スープのお料理は身体に染み入ります。

長野県シャインマスカットとニッキのソルベ

デザートの最初は、シャインマスカットとニッキの葉のソルベ。ニッキの葉は初めて見ました。青々として、レモンの様にしっかりした葉なんですね。

メインデザートは、イチヂクのタルトとアイスクリーム。サクサクのパートフィロとイチヂクのややねっとりした食感のコントラスト。良い感じです。

ミニャルディーズ。右から2番目の、宮城県延岡市でしか自生しない、くまの香酢を使ったギモーブが絶品。

最後はミニャルディーズ。銀座の時は、3段のボックスでしたが、量は同じで、一皿に。今回初めていただいた、宮崎県延岡市にしか自生しない、くまの香酢という珍しい柑橘を使ったギモーブが、目が覚める様な華やかな酸味で、他のお菓子とお菓子の間でリセットする様な、ミニャルディーズのアクセントになっていました。日本には、素晴らしい食材が全国にあるんですね。

ラルジャンは日曜日がお休み、ランチ12,000円(税込、サービス料10%別)、ディナー19,800円(税込、サービス料10%別)です。

ぜひ、訪れてみてください。

L’ARGENT(ラルジャン)