銀行預金に感じる「不安」

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銀行預金といえば、これまでは「最もリスクの低いお金の置き場所」というのが、常識的な捉え方でした。

ところが、最近銀行に残高を保有していることに、むしろリスクを感じるようになりました。

銀行預金が安全と考えられるのは預金保険があるからです。預け入れた銀行に万が一のことがあった場合、預金保険の対象金融機関であれば、普通預金や定期預金に対し預金者1人当たり、1金融機関ごとに1000万円までの元本とその利息がカバーされています。

しかし、例え預金保険の保証内の預金残高であっても、利便性や流動性に不安を感じることがあるのです。

日本の銀行の中には、振り込みや現金引き出しの限度額が設定されているところがあります。限度額以上は、自由に引き出したり他の口座に振り込んだりすることができません。

ある銀行では、法人口座の場合、1日の振込限度額が500万円に制限されています。店頭で手続きをすれば、枠を広げることができますが、支店まで出向かなければならず、不測の事態には対応できません。

自分の預金であるにもかかわらず、流動性に制約があって、銀行にコントロールされている状態です。

さらに、それよりも大きな銀行預金に対する不安は、インフレによる資産価値の毀損です。

銀行預金が元本保証といっても、それは名目の金額だけの話です。

インフレによって物価上昇すれば、実質的な貨幣価値は目減りしていくことになります。

今後日本国内でインフレが続けば、銀行に預けている資産の価値はどんどん減っていくことになるのです。

預金だけではなく、保険、年金といったこれまで手堅いと思われていたものが、今やリスクとなっている。

マーケット環境の変化に、自分の思考回路も合わせ、行動を変えていかなければ、将来大きな後悔をすることになるでしょう。

銀行預金の残高が潤沢にあることは、安心ではなく不安と捉えるべきなのです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年11月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。