登庁せず給与をもらう「寄生虫」と呼ばれるアルゼンチンの国家公務員

一つの政党が長期政権を維持すると腐敗が堆積するものである。それが明らかにされるのは、次に別の政党が政権に就いた時である。

登庁しないが給料はもらう国家公務員の多さ

昨年12月に誕生したアルゼンチンのミレイ大統領政権の一番の目標は財政支出の削減である。財政の赤字がアルゼンチン政府の慢性的な高騰インフレの主因だからである。

その一環としてミレイ大統領が指示したのが、国家公務員は勤務先に登庁することと義務づけたことである。それまでの16年続いたキルチネール派の政権で噂にあった「公務員として雇われてはいるが、実際には登庁しないで給与日29日だけ姿を現す者が多くいる」ということを明らかにするためであった。

その効果はすぐに表れた。例えば、12月14日、大統領官邸カサ・ロサダ(Casa Rosada)で勤務していると称する公務員がおよそ700人姿を現したのである。彼らは3年前から出勤したことはない。給与日だけ登庁してそれを受け取っていたということだ。このような同一例は各省庁で確認された。さらに必要以上の公用車の存在やアルゼンチンの新聞という新聞はすべて購読されていた、などなど。これらを維持するには膨大な出費が必要である。

なぜそのような事態になったのかという理由はただひとつ。雇用するから、或いは車を買うからといった義理を売って、その代わり選挙ではキルチネール派の候補者に投票すると言うのが交換条件ということだった。

働かないが給料だけは貰う彼らのことをアルゼンチンではニョキス(Ñoquis)と呼んでいる。これはジャガイモ、卵、小麦粉、ミルクなどを小粒のコロッケのような仕上げにしたイタリア料理の名前を拝借したもの。

月末には貰った給与が底をつくようになる。そこで安価に作れる料理がニョキス。それをもじって月末になったら給料をもらいに登庁する寄生虫公務員のことをニョキスと呼ぶようになった。彼らの存在は噂にはあった。しかし、その規模がキルチネール派政権下ではこれまで明にされなかった。

寄生虫の国家公務員の数はおよそ100万から150万人

アルゼンチンで国家公務員として登録されている人の数はおよそ350万人。その内の100万から150万人は国家公務員として存在しているが、登庁して勤務することはないというのである。しかし、月末29日の給料日にはちゃんと登庁して給与を受け取っているというのである。

ミレイ大統領の新政権は就任早々、この寄生虫公務員を解雇する行動に出た。これを調査するには時間もかかる。しかし、先ず最初に中央政府に絞って、そのような寄生虫公務員の数の調査を開始。それで判明したのは、その数はおよそ3万人。昨年だけに限定すると7500人。彼らは即刻解雇されることになっている。勿論、違法であるから解雇による補償金はなし。(2023年12月15日付「リブレメルカド」から引用)。

アルゼンチン政府によって2022年に特例426条が発行された。それには、それ以後の国家公務員の雇用は禁止されることになった。だから、ミレイ大統領政権はこの特例が発行された以後の雇用者については違法で採用で採用されていたということで全員補償金なしで解雇する方針でいる。

それでなくても、新政権ではそれまでの18省を9省まで削減し、補佐官の人数もそれまでの106人から54人に削減した。だから正規に採用されていた公務員も9つの省が削減されたことによってその数は減少することになる。

このようにして政府の歳出の削減を積極的に今後も断行して行くというのが新政権の方針である。

ある一つの省では昨年だけで3000人の新規公務員の採用があったとTNテレビが報じた。この数も調査を進めて行く内に増える可能性もあると指摘している。勿論、彼らは即刻解雇されることになる。(2023年12月13日付「ヌエボ・ポデール」から引用)。

彼らは全員キルチネール派の議員に投票するのが条件であったはずである。これだけでもキルチネール派の16年の政権が如何にアルゼンチンの財政を悪化させたか言うことを証明するひとつの良い証である。