ソーシャルゲーム騒動にはもう一幕あるよという話 --- 木曽 崇

アゴラ編集部

先の投稿では、「ソーシャルゲーム規制、コチラの業界からの助言」というタイトルにて、射幸性を扱うにおいては「一日の長」のある賭博業側からの要らぬご助言をしました。その後のコンプガチャ騒動など、迫り来る世間の荒波に青色吐息の真っ最中であるソーシャルゲーム業界の皆様に対して、さらなる難題をぶつけるのは非常に心苦しくはあるのですが、後に想像もしていなかった方向から大砲の弾が飛んでくるよりはマシであろうということで、要らぬ老婆心ながらもまたコチラの業界側からの助言をご紹介したいと思います。

業界の皆様はすでにご存知の通り、ソーシャルゲーム業界の一連の騒動というのは今に始まったことではなく、昨年下半期くらいに巻き起こった青少年保護に関する問題をキッカケとして波及してきたものです。「子供に渡しておいた携帯端末で知らぬ間に高額課金が為され、請求書を片手に右往左往する親が多数」などと報道された例のあの騒動ですね。この青少年保護問題に関しては、昨年末くらいからソーシャルゲームの各プラットフォーム会社による具体的対策も採られ始め、「GREE、青少年保護育成のネット利用啓発アプリをリニューアル」などと報じられたのもこの時期でした。私はこれをソーシャルゲーム騒動の第一幕と位置づけています。

その後に引き続く騒動の第二幕となるのは、まさに目下進行中の「射幸性問題」です。もう少しコチラの業界っぽく表現するのならば、射幸心を過度にそそることによって発生する消費者の「のめり込み問題」です。これに関しては、まずは消費者庁からコンプガチャの違法性が指摘され、ひょっとするとこれから商品表示やゲーム仕様などに対して、さらなる行政側の措置が取られるかもしれないという局面。それに対して、業界団体は「自主規制」という形で、何とかこれをかわそうと動いているのは皆様も連日の報道でご存知のとおりです。このソーシャルゲーム騒動の第二幕が、いつどのような形に終わるのかは今のところ誰も読みきれていない状況であります。

で、そんな中で申し上げるのは非常に心苦しいのですが、本日の投稿の主題は「ソーシャルゲーム騒動は二幕完結ではなく、実はもう一幕ありそうですよ」というお話。実は、射幸性を扱う一応の先輩(?)にあたるコチラ側の業界人からすれば「青少年」「のめり込み」とくれば、次に来るのはアレだなと10人中8人位がすでに気づいている状況。結論から申し上げれば、お次に控えているのは「反社会的組織の関与」問題であります。「青少年、のめり込み、反社会組織」、これはコチラの業界人にとっては、お決まりのように常に三点セットで登場する論議なのですね。

4月20日、プラットフォーム事業者大手GREEは私設組織である「第一回利用環境の向上に関するアドバイザリーボード」を開催し、サービス利用規定違反となるRMT行為(現金によるデジタルアイテムの売買行為)に対する各種対抗施策結果を発表しました。施策実施以前と比べて違反行為が56%減となったというこの発表は、多くの業界人から「各種施策が有効であった」と評されたわけですが、コチラ側の業界の人間として一番気になるのは減少した56%ではなく、依然として残った44%なのです。「違反ユーザーアカウントの停止」にまで踏み込むという強硬な対抗策に対して、何処吹く風で違反行為を続ける人達というのは一体どういう人種なのか? ご想像に難くなく、そこに反社会的勢力が含まれているということですね。

反社会勢力のRMT行為への関与は、現在のようにソーシャルゲームが興隆する以前からオンラインゲーム業界で燻り続けてきた問題です。プログラムのバグを利用して大量にレアアイテムを複製したり、自動でゲーム内通貨を稼ぐbotと呼ばれるプログラムを開発して、それを転売するなんて事は朝飯前。最悪プログラムを組む知識なんぞ無くとも、人件費の安い途上国で労働力を買い叩き、PC環境を与えて一日中ゲームをやらせればRMTビジネスは成立します(いわゆるゴールドファーマー問題)。反社会的勢力にとっては、IT時代に生まれた手っ取り早い稼ぎ口といっても良いでしょう。

こういった反社会的勢力によるRMT行為を通じた資金獲得は、残念ながら正確な市場規模推計のようなものは見当たりませんが、これまでも確実に存在してきたもの。そして、国際的には大分以前から問題視され、それに対する法的対応も行われてきたものです。

ソーシャルゲーム業界内では今回の消費者庁の勧告によってひとまず事態を収束させたいような動きも見えますが、こういった問題が払拭されない限り、警察は依然として業界に法的枠組みをかけようと動きますし、ソーシャルゲーム業界の騒動は終わらないという事。逆にいえば、すぐそこに第三幕が控えていますから、その辺もふまえた上での多面的な論議を今のうちに行っておくことが重要なわけです。

木曽 崇
国際カジノ研究所 所長