仕事の先延ばしグセは時間帯を見直すことで回避できる(滝川 徹)

Mohamad Faizal Bin Ramli/iStock

ある仕事に取り組もうと思ったのに、つい先送り・先延ばしをしてしまう。そんな時、自分はなんて意思の力が弱いのだろう。そう自責する人も多いだろう。しかし先送りしてしまう本当の原因は、実は仕事に取り組む時間帯・タイミングにある。

そう語るのは時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング) 』より再構成して、つい仕事を先送りにしてしまう原因を、脳科学の観点から解説します。

脳科学で考える時間のとらえ方

人は何かしらの作業に着手したり、物事を考えたり、意思決定をするときに脳のエネルギーを使っていると考えられている。ちなみにこの「脳のエネルギー」はタスク管理界隈では「認知リソース」などと呼ばれている。なのでここでは認知リソースと呼ぶことにする。

認知リソースは限りある一種の資源だ。起床直後がフル(満タン)の状態で、朝起きてから時間の経過とともに、何もしなくてもどんどん消費されていく。

認知リソースはタスク管理界隈では有名なゲーム「ドラゴンクエスト」のMP(マジックポイント)にたとえられている。たとえばドラゴンクエストでは一番弱い火炎呪文の「メラ」を使うより、一番強い火炎呪文である「メラゾーマ」を使うほうがMPを消費する。

これと同じでタスクに取り組むときや物事を考えたりするときも、その内容によって認知リソースの消費量も変わるのだ。

簡単な事務処理作業に取り組むより、頭を使う企画書作成のほうが認知リソースを消費する。またMPがなくなったら魔法が使えなくなるように、一定の認知リソースがなければタスクに集中して取り組めず、結果的に先送りしてしまう。

以上のことから、認知リソースとタスクの先送りの関係については次のことが言える。

・朝の早い時間帯は認知リソースがたくさんあるので、タスクの先送りをしにくい
・時間の経過や何かタスクに取り組む毎に、認知リソースは減っていく

ちなみに認知リソースを回復する手段は睡眠しかないと言われている。昼寝が「パワーナップ」と呼ばれる所以がこれだ。仕事が思うように進まないときは少し仮眠を取ることで認知リソースを回復することができる。このことも覚えておこう。

認知リソースの仕組みを味方につけて、同じタスクでも取り組む時間帯やタイミングを変えればいい。「企画書作成」という集中して取り組む必要があるタスクなら、夕方ではなく午前の早い時間帯に取り組むほうがよい。

午後になれば君はそれなりに認知リソースを使ってしまっている。その状態ではいざ「企画書作成」に取り組もうとしても、やる気がおきず「あとでやろう」と先送りしてしまう可能性が高まってしまう。

消費MPが多いタスクは先送りを防ぐためにも、1日のできるだけ早い時間帯に取り組むのがよいのだ。

一方「経費処理」をはじめとした、あまり頭を使わないような単調な作業は消費MPも少なく先送りはしにくい。こうしたタスクはMPがほとんど残っていない夕方の時間帯でも取り組むことができる。

どの時間帯に取り組んでもいいなら、わざわざ午前中のような認知リソースが豊富にある貴重な時間帯に取り組む必要はないのだ。

滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。 

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月17日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。