完全な野次馬モードに入ってしまって、どうしても気になってしまうのがアコーディアゴルフのコンプライアンス問題→事業統合問題の成り行きであります。PGM社長さんの東洋経済インタビューや、現社長の退任を含めた昨日(5月21日)の会社側リリースなど、話題は尽きません。業務執行取締役候補として株主委員会側から推薦されていた3名の方々が、株主提案が通ったとしても取締役には就任しません、と回答されているそうですので、株主委員会側の次の一手も気になるところでありますが、代表取締役が交代した現経営陣の次の一手も気になるところです。
アコーディア社の新社長さんの記者会見によると、PGM・オリンピア側への買収防衛策として第三者割当増資も検討している(選択肢のひとつ)と述べておられるそうです(記者会見を報じるニュースはこちら)。現アコーディア社にホワイトナイトが登場するのかどうかも不明でありますが、そもそもPGM社長さんが「委任状争奪戦も辞さず」と述べておられる時期に、第三者割当増資による買収防衛というのは法律上大丈夫なんでしょうか?基準日以降に株式を取得した者による議決権行使の可否が問題となるところです。
たしかに2010年9月、東証マザーズ上場のアクロディア社は、基準日後に第三者割当を行い、その割当先の株主に定時株主総会における議決権を付与しております(具体的には、取締役会決議により割当相手先に議決権を付与したと公表。実際に議決権は行使されたようです)。したがって定時株主総会までに第三者割当を行い、その相手方株主に対して議決権を付与することは会社法124条4項の趣旨を援用して法律上も可能なのかもしれません。
会社法124条(基準日)
4 基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。
しかし株主総会の目前、会社支配権の争奪が生じることが予想される場面において、取締役会の多数派が自派に第三者割当ての方法による株式発行を行ったうえで、議決権の行使を認めることについては「違法になる可能性がある」(江頭「株式会社法 第4版」208頁)とされています。そもそも、そのような株式発行自体が「著しく不公正な方法による」ものとして差止めの対象となるのか、それとも議決権を付与する取締役決議自体が株主平等違反によって無効となるのかは迷うところでありますが、いずれにせよこの時期における第三者割当増資は買収防衛目的で行うにはリスクが高い、ということだろうと思われます。
本件は委任状争奪戦が予想されますので、どちらの側も好感度をアピールしなければなりません。一個人株主さんがコメントで述べておられるように、「これまで現経営陣側の社外取締役は何をしてたんだ?3人もいて結局コンプライアンス問題を指摘できなかったではないか。これなら、今後も同じじゃないのか?」という意見ももっともかと。おそらくそのあたりを大株主側は一般株主に対して強く主張されることになるでしょうね。また、昨日のPGM社長さんのインタビューにあるように、「我々は会社を乗っ取って、アコーディアを意のままにしようとしているわけではない。あくまでも株主共同利益を向上させることをきちんと監視できる人を推薦しました。今回の社外取締役推薦者の顔ぶれを見てください。私たちの意のままになるような人なんか誰一人いないでしょう?」(・・・・ん、そのあたりはなんとも・・・笑)とおっしゃっているのも一般株主へのアピールかと思われます。
株主委員会側としても業務執行取締役の候補者がいない・・・・・という問題は結構大きいように思います。特に一般株主へのアピールとしては苦しいはずです。大株主側から落下傘部隊で・・・ということになると、結局は「乗っ取り」というイメージが強くなるわけで。このあたり、大株主側の次の一手もたいへん興味の湧くところであります。
編集部より:この記事は「ビジネス法務の部屋 since 2005」2012年5月23日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった山口利昭氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はビジネス法務の部屋 since 2005をご覧ください。