黒坂岳央です。
「リモートワーカーになり、生活費を抑えるために地方移住をしたら大変な経験をした!」といったエピソードがSNSを中心に繰り返し投稿されている。中には確かにそれはあるかもと思いながらも、アクセス稼ぎのための作り話にしか思えないものもある。そして都会では起こり得ないようなトラブルなど、多くは否定的な意見が目立つ。
筆者は生まれも育ちもずっと都会だが、独立を機に熊本県の田舎に移住した。世の中によくある「地方移住の現実」について取り上げたい。
近所の過干渉は「ない」
都会からの移住者が驚くことに「玄関を勝手に開けて野菜を置いていく」「やたらと干渉して煩わしい」といった意見を見る。しかし、これは誤解だといっていいだろう。こうしたエピソードは「すでにご近所づきあいがある実家暮らしで起きる」に限定する話である。
自分を含め、新しく引っ越しをしてきた家庭に勝手に上がり込んでしまうような人はどれだけ田舎でもほぼ存在しないといっていい。田舎と言っても玄関には鍵がついているし、今どきプライベートに干渉するべきでないという感覚は地方在住者を含めて誰でも持っている。
この手のエピソードはすでに見知った間柄の近所の人が、畑で取れた野菜などを持ってきてくれるというものに尾ひれがついて「まったく面識がないのに玄関を開けて上がり込んでくる」という作り話に発展したものと考えられる。
また、自分は近所が牛や豚の飼育、野菜や果物農家ばかりの田舎住みだが、これまで過干渉された経験などない。自分は現地の方言を使えないので都会から来たことはすぐ相手に伝わるが、それで妙な距離感を取られたりしたことも一度もない。むしろ、大阪の方が「どこから来たか?」で他県では見られない距離感になる可能性の方がよほど多いだろう。
子育てに向いていない?
「田舎は子育てに向いていない環境だ」とされる。本当だろうか?自分の場合は逆が正しいと思っている。
田舎は家が非常に広いので、毎日50mダッシュをするように走り回っているし、庭でサッカーやキャッチボール、自転車に乗る練習まで何でもできる。また、学校も園もグラウンドが広いために、子どもたちも走り回り先生一人が面倒を見る子どもの数も少なめで目が行き届いている。また、誰に頼まれるわけでもなく、子どもの登下校は近所の人が見てくれているので安心できる。
自分は一度、23区内の高額所得者が多く入ると有名な園を見る機会があったのだが、そこには園内に走り回れるスペースはなく「遠足」がビルの隙間にあるブランコが1つだけの小さな遊び場だった。それまで自分の子どもの園ばかりみていたので、その違いに驚いたことがある。
もちろん、親が子供に希望する進路は様々なので都心のようにお受験を意識した一流の学校へ行かせたい場合は田舎は選択肢に入らないかもしれない。しかし、そうでない場合は、世間で悪く言われるほどダメなものとは思わないのだ。
生活が不便
田舎は買い物や娯楽がないから不便だと言われる。確かに東京都内で頻繁に開催されている大きいイベントはないかもしれない。
しかし、一通り必要なものはすべて揃っているし、都心に足を伸ばせば大きな百貨店があり、そこで頻繁にイベントがあるので自分はあまり不便に感じたことはない。むしろ、地産地消で地元で取れた鮮度の高い生鮮食品や海鮮がバラエティ豊かに揃っているので、スーパーでのショッピング体験は田舎の方が良いとすら感じる。
それに東京に住んでいるからといって、毎日イベントにいくわけではない。どうしても東京で開催されているイベントに出るならその時だけ足を伸ばせば合理的だろう。
東京の収入で地方に住む
そしてリモートで地方移住をして仕事ができれば、経済的合理的は極めて高いという話がある。こちらは正しい。いわゆる「東京の収入で地方に住む」という選択だ。
東京だと年収3000万円くらいでは庶民に毛が生えた程度のプチ贅沢しかできないし、1億円出しても大した一戸建ては買えない。しかし、地方でその収入なら日常生活で値段をみないような生活ができる。一億円出せば屋敷のような大きな家を買えてしまう。まるで同じ国とは思えないほど、生活水準に違いが生まれるだろう。
特に経費が使える地方在住の中小企業オーナー社長は強い。彼らは東京で厳しい競争に勝ち抜いたエリート社員が敵わないほどの「自由に使えるお金」を持っている。社会保険や所得税対策で名目上の年収を低めに設定していても、実際には経費で住居(社宅)や自動車、接待交際費を賄っていたりする。地方は値段も安いので、東京で同じ所得より地方の方が経済的な豊かさを実感しやすいだろう。
◇
地方移住というと「都会に住み慣れた人には耐えられないからやめておけ」という話をよく見る。そうした記事を読んでみると、実際に移住経験がない人が想像だけで書いていると感じる事が多い。実際に移住してみるとネットの噂とはかなり違うと感じるのだ。
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