途上国がなかなか発展しない理由をインプレゾンビの人々は何も知らない

谷本 真由美

日本人のXの人気スレッドに、ここ最近はインプレゾンビと言うアカウントが湧いてきており、かなりめんどくさいなぁと思っている方が多いでしょう。

インブレゾンビというのは、Xの人気の投稿やスレッドに意味不明な返答を送り付けて、他人の投稿人気にただのりして自分の投稿を見る人の数(インプレッション)も伸ばしてお金を稼ごうとするアカウントのことをいいます。

参照:途上国の人が『インプレゾンビ』になる理由を日本人は何も知らない

私の近著『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、海外のネット事情は日本と色々異なるので、インプレゾンビの出現に関しても海外の事情を知っておくと様々なことが読み取れます。

途上国ののインプレゾンビの人々を観察していると、発展途上国がなかなか経済的に発展しないのかという疑問へのヒントがあります。

Umesh Negi/iStock

もちろん、それまでの南北問題などの歴史的な経緯や地理的な条件などもありますし、歴史の流れ、国際政治などの地理的な条件もあります。

しかし資源や地理的条件、歴史的経緯に関しては、日本や韓国、台湾のような厳しい条件にあり資源すらない国々でも経済発展しているわけです。

日本なぞ首都が空襲で焼き払われて原爆が二発も落とされている。

その精神的なトラウマや人的被害は大変なものでした。一方で他の途上国は、植民地支配はありましたが、そこまでの戦災は体験していなかったりするのです。

そして途上国は長年他の国の莫大な支援を受けてきました。なぜ長年支援を受けてきた発展途上国が自国で産業を生み出せず発展できないのか。

私は発展がなかなかうまく行かない理由は、外部条件云々よりも、その土地の人々のやる気や想像力が大きいのではないかと思うようになりました。

つまりこれは想像力の話です。

想像力を駆使することができれば、他人の感情をなんとなく推測することができます。

顧客が何を思うか、何を求めているかということを想像力を駆使して考えることです。

これはビジネスにおいて最も基本的なことのひとつで、お客さまが求めているものを提供できなければ、その対価としてのお金をいただくことができません。

ビジネスというのは、求められているものを提供したことに対して報酬を得る活動だからです。

これは科学技術の発展や発明にもつながるものです。想像力を駆使して需要がある技術や製品を考えることができなければ、新しいものは生まれません。

例えば、ワクチンを作るにしても、それがどんな病原菌に対して効果があるのか、どのぐらいの数の人に需要があって、どんな効果を生むことが想定されるかと言う仮説を立てて、それに沿ってデータを収集し、研究課題を立てていかなければなりません。

データが左右する世界でも、やはり創造性が非常に重要になってくるわけです。

ところがインプレゾンビの人々をみていると、この想像力の徹底的な欠如がわかります。

日本人ユーザや他の先進国のユーザが何のためにXを使い何を求めているのかということを想像することができませんでした。

彼らは延々と嫌がられるクソリプを送りまくり、ユーザを激怒させて毎日のようにブロックされていたわけです。

ところがある日本人ユーザの指南によって前向きで面白い地元のコンテンツを投稿するようになってより多くのインプレッションを得ることができるようになりました。

そして顧客との対話も生まれたのです。

つまり持っていた道具は全く同じなのに、視点を変えることによって何倍も稼げるようになった、そしてそれはちょっとした想像力さえあれば、簡単に予想できることだったのです。

自分が相手の立場にたって、ほんの少し、どんな状況でツールを使っているかということを考えれば、何が喜ばれるかなと言う事はわかったわけです。

このようなインプレゾンビの体験はどうしたら途上国のビジネスがもっとうまくいくようになるかと言うことだけではなく、私たちにも様々な気づきを与えてくれます。

つまりビジネスの最も大事な成功要因と言うのは「相手のことを考えることができる」と言うことです。

それに必要なのは、相手の心を理解するだけではなく、異なった生活環境や仕事の人、年齢、性別の人の状況を知り、どんな気候か、どんな経済レベルか、どんなものが流行っているかといったことを当たりをつけて調べ、仮説を立て、証明するデータを収集し、相手に喜ばれそうなメニューや製品コンテンツを投入して反応を見て、結果が良い感じであれば、さらに良いものを提供する、いまいちであれば方向を修正していくと言うことを繰り返していくと言うことです。

このサイクルを割と真面目に回していたのが最近話題になった「いただきりりちゃん」であり、彼女のような結婚、詐欺や交際詐欺を行う人々と言うのは、お客さんの心を理解し、求めているものを提供することができたので、対価を得ることができました。

自分本位ではなく、徹底的な顧客主義にならなければ稼ぐ事はできません。

ただし、そこにはお客を絞り、本当にそのお客さんが求めていることを提供すると言ったターゲティングも重要になってきます。これを大学の経営学部やビジネススクールでは何百万円も払って勉強したりするわけです。しかし例えば地元で長年ラーメン屋をやっている方や、クラブを経営している方たちは、それを感覚として理解しているわけです。

そしてこれは日本がなぜアニメやゲームの世界では他国よりもずば抜けているかと言うことにつながってきます。

日本人は人のことを気にしすぎると批判されることもありますが、それはつまり他の人がどう思うのか何をしたら喜ぶかと言うことを常に考えているということです。

ユーザーや読者が喜ぶキャラクターをデザインし、ストーリーを描き出します。

そして日本人が作り出したものは日本だけではなく、北米や南米、中東欧州アフリカでも大人気です。ナイジェリアや今後でさえドラゴンボールやポケモンは大人気なのです。

ところがアジアの他の国が日本と文化が近いはずなのに、世界的に人気になるアニメやゲーム漫画を生み出せていません。

日本のものを真似した作品はありますが、あくまで二次創作に近いレベルにとどまっています。

これはやはり彼らが非常に自分本位でユーザや他人が求めることを決め細かく想像しないからと言うことに尽きるのではないかと思います。

【参考記事】