京大生「こたつでミカン食べていてはいけないのですか?」

昨年12月、ご縁があり、京都大学の単位履修クラスで外部講師枠として一コマだけ教鞭をとりました。東大に並ぶ日本の頭脳ですので期待感満載です。

90分のクラスのうち、45分が私のプレゼン、残りが質疑応答です。クラスは32名。男女比はやや女性が多い感じ。クラスが始まる前、学生がぽつぽつ教室に集まってくるとたいていは後ろの席から埋まっていき、前に座るのはまばらです。テーマは「日本人の国際化」を哲学的背景を含めて話すというものです。

順調に私のプレゼンが終わった後、質疑が行われたのですが、思ったほど日本人の国際化が盛り上がらないのです。学生さんの顔つきは頭ごなしに否定はしないけれど自分なら嫌だなと。そこで飛び出したのが男子学生の「こたつでみかん食べていてはいけないのですか?」です。

言わんとすることは日本は程よく心地よい国であり、就職率も高いなかでなぜ、わざわざ外国まで行かねばならないのだと。それこそこたつ(=国内)に入ってみかんを食べていても(=労働していても)全然問題ないじゃないか、と。

確かに京都には嫌というほど外国人がやってきてお金を落としてくれます。それだけを見ていればなぜわざわざ外国くんだりまで出向かねばならないのかという気持ちが出るのも分かります。

イメージ kokouu/iSOtock

「井の中の蛙」とはこういうことなのでしょう。先日、四国の高松に行ったとき、何十年の付き合いになる従兄の奥さんが「電車に乗るにも改札に切符切りのお兄さんがおらんのや。今は機械にいれるんやね」と言われ、私は新幹線タイムマシーン号に乗ってしまったのかと思ったほどびっくりしました。

ただ、田舎に行くと電車に乗る機会は少なくなります。ましてや高松あたりでは本州に行く用事がない限り電車に乗ることはあまりない閉鎖性があります。この従兄夫婦、私の知る限りもう20年以上四国から本州に行っていないはずです。つまり、日本全体で何が起きようが自分の生活圏内が平和であれば無縁な外の話になってしまうのかもしれません。それでも日当たりの良い家で子供や孫に囲まれて幸せに暮らしているのです。

外に出るべきか、今の穏やかな人生を愉しむのか、人それぞれです。それを強要する理由もありません。ただ言えることは日本は海に囲まれたほぼ単一民族の農耕民族である点です。

私は東京生まれ東京育ち、刺激いっぱいの学生時代を過ごし、バブル経済を謳歌し、プライベートジェットに乗って仕事をし、バンクーバーでがむしゃらに働き、挙句の果てに親会社が倒産したので自分の勤めていた会社を個人買収し、起業家の道を歩みました。破天荒かもしれませんが、これが私の運命だったと思うのです。人生いろいろです。

ただ全てが偶然かといえばそんなことはありません。会社で頑張らなければ秘書になんてならなかったし、親会社が潰れたらおとなしく日本に帰国するのが普通でしょう。ただ負けず嫌いの性格がそうさせなかったかもしれないし、海外に長く住んで狩猟民族的でチャレンジャーばかりの世界にいたこともあるし、私の周りは「上を向いて歩こう」の人が多かったこともあります。自分の立ち位置次第で「類は友を呼ぶ」とも言えそうです。

ところで、私が生まれ育った東京ですが、この街には活力があり、自然発生的に様々な似た者同士が集まる素地があります。そして私もそういう人に自然と寄っていきます。東京にいた際に、ある起業家とビジネスの話をしました。私からのアプローチです。それまでに何度かお会いし、その商品を購入し、カナダに輸出し使ってみて売れると判断したのです。

今回はずばり「カナダでの販売代理店」の相談をさせてもらい、良い感じで展開しています。この方も地方からなのですが、東京に起業家ばかりが集まるシェアオフィスを借り、地元と東京を週に数回、行き来しています。ビジネスそのものは既にアーリーアダプターの後期にあり大いなる成長期にあります。

氏曰く「国内から世界に目を向けたいのだけど自分ひとりじゃ…」「では一番力を入れたいのはどちら?」「アメリカです」「ならば社長はアメリカ市場を開拓するために精力を注いだらどうでしょうか?その代わり、その隣のカナダを私にやらせてもらえませんか?」と。

起業家は少しずつ増えています。東京都には「東京イノベーションベース」(略称TIB)という施設も有楽町にあります。渋谷はテック系の起業家には有名ですが、起業はなにもテクノロジーだけではないのです。

東京にはそれぞれの街にそれぞれの特徴があり、それを生かした展開は無限に創造できます。こたつから出てみようかな、と思った人たちがチャレンジする、そんな世界が少しでも広がれば世の中、もっと面白くなると思います。ワクワクさせる社会を築く、これが私の思う国家の活力であり、未来ある日本の向かうところだと信じています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月14日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。