難関資格は高収入なのか?国家資格のコスパ問題(横須賀 輝尚)

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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『資格起業バイブル』から、再構成してお届けします。

難関資格が高収入のからくり

Q:難関資格であればあるほど、高収入なのでしょうか?

同じ国家資格でも、難易度にはかなり差があると思います。やはり、弁護士や司法書士のような難関資格のほうが収入も高いのでしょうか? 比較的取りやすい資格で高収入を目指すことは不可能でしょうか?

ご質問にお答えする前に、なぜ「難関資格は高収入」といわれるのかをお話しておきましょう。おっしゃるとおり、難関資格を取ることで高収入を期待できる時代が以前にはありました。具体的にいえば、弁護士、司法書士のような難易度が高い資格に合格すれば高収入が約束されるという、いわば古きよき時代がありました。

なぜ、このような時代が存在したかというと、「報酬規定」が存在したためです。

かつて、資格の世界では報酬規定なるものがあり、仕事の内容ごとに金額が決まっていました。そのため、資格を取って仕事を受ければ、高単価での仕事が約束されていたのです。こういった背景があったため、資格を解説する本では自然と「弁護士の平均年収2,000万円」、「司法書士の平均年収1,800万円」のように解説され、今もその流れを受け継いでいるといえます。

しかし、この方程式は崩壊しました。

時代の流れとともに報酬規定はなくなり、自由競争の時代に移り変ったのです。その結果、多くの仕事の単価が下がり、難関資格にあった「高収入の保証」はなくなってしまったのです。

加えていうならば、報酬規定がなくなったことにより、士業も営業活動に力を入れるようになり、単純に資格を取っただけでは仕事が取れず、士業も選ばれる存在になってきたといえます。

弁護士も就職難の時代

かつては「鉄板」といわれた弁護士も、今では状況が違います。

弁護士は司法試験合格後、弁護士事務所に就職し、いわゆる「イソ弁(居候弁護士)」を経て独立開業するというのがセオリーでしたが、司法改革によって弁護士人口は増え、最難関といわれる資格に合格しても、就職すらできない状況になってきているのです。

「今後、資格は取っただけでは食べていけない」といわれるようになってから、それでもしばらくは資格の力で仕事を取ることはできました。特に難易度が高い試験の資格はそれなりに食べていけたという経緯があります。しかしながら、資格者人口の増加、法人数の減少、不景気の影響などによって、本当に難関資格を取っただけでは食べていけない時代になったといえます。

つまり、今後資格を取ろうと検討している場合、難易度だけで資格を選択することは非常に危険だといえます。ですから「難関資格=高収入」というイメージは早めに手放しておくべきでしょう。

そして、それ以上に重要なのが、あなた自身が何をやりたいかということです。

一般的にスキルアップ、あるいは独立起業する前に「手に職を」ということで資格を取る方は非常に多いですが、この資格の選択方法はちょっと考えものです。なぜなら、この選択は自分自身のやりたいことと直結しているとは限らず、難易度や受験要件などの取りやすさにフォーカスして選んでしまうことが非常に多いからです。

もちろんスキルアップは重要ですが、「資格を取ること」が目的となり、最終的にやりたいことに直結しているかどうかを考えずに資格を取ることのないように気をつけたいものです。

収入が多い人ほど、資格にこだわっていない

では実際に収入が多い人は、どのような資格で成功しているのかといえば、「どの資格でも高収入を得ている」というのが答えです。行政書士でも、社会保険労務士でも、税理士でもそれぞれのやり方で高収入を得ている人は多数存在します。

成功している人の中で、「資格があったから成功できた」と資格を成功要因に挙げる方は実に少数派です。なかには「税理士は顧問報酬の仕組みができているから成功できた」など、資格固有のビジネスモデルを理由にされる方もいますが、自分自身の営業努力、関係者の協力などがあって成功できたという人がほとんどです。

資格の解説書などに掲載されている士業の平均年収はあくまで目安であり、もしかしたら参考程度にもならないかもしれません。

たとえば、行政書士の平均年収なども数年に一度、行政書士会員に任意で取るデータの一部に過ぎませんので、実態は本当にわかりません。ひとつだけいえることは、「たしかな数字など存在しない」ということと、成功する人はそういった指針で自分のビジネスの方向性を決めたりしないということです。

私自身、23歳で独立起業しましたが、こうした資格の平均年収にはビクビクしていました。少しでも行政書士の年収を高く記載している本を探して安心する。こうした日々が続きました。しかし、結局のところそうした平均年収の記録を見たところで、自分の年収への影響がまったくないことに気づき、自分で行動することを始めたのです。

正しい営業努力をすれば月の売上が50万円になったり、100万円になったりするなどよい影響が自分自身に返ってきます。そして、何の努力もしなければ、資格図鑑にどれだけ高収入と記載されていても、自分の年収は増えないのです。

極論すれば、どのような資格でも高収入は実現できます。もちろん資格を取っただけでは叶わない夢ですが、取得後に正しい努力をすれば、年収1,000万円程度はどの資格でも可能です。

大切なのは、どの資格を選ぶかというよりもあなたが何をしたいのかです。

あなたが心からやりたいと思うことの延長線上に資格がないと、気持ちは長続きしません。ですから、資格図鑑の説明よりもあなた自身が何をやりたいのか、もう一度考えてみることが重要になります。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年7月18日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。