大きな事実誤認をした。物書きの一人として恥ずかしい。アラン・ドロン氏の愛犬ルーボ(Loubo)は生きているのだ。当方は前日のコラムで、ルーボが既に亡くなっていると思い込み、ドロン氏と愛犬の関係を書いたが、ドロン氏は間違いなく18日に88歳で亡くなったが、彼の愛犬ルーボはまだ生きているのだ。これほど大きな事実誤認はない。
先ず、ブリジット・バルドー財団が20日、「アラン・ドロンさんの犬は、ドロンさんの希望に反して、安楽死させられたり、一緒に埋葬されたりすることはありません。ドロンさんの家族は、犬の世話をすることを確認した」と発表したのだ。動物保護団体は「ルーボのことを心配しないでください。ベルギーシェパード犬はもちろん安楽死させられません」と表明したのだ。
当方のニュース源はバチカンニュースの18日付の記事だ。当方は震えながら18日付のバチカンニュースの記事(独語版)を再読したが、その記事を読む限りでは、「ルーボは既に死に埋葬されている。ドロンさんはその墓地の傍で埋葬されたい」と理解できるのだ。バチカンニュースは、記事の中ではルーボの生死には何も言及していないが、記事の内容(ルーボの傍で埋葬されたい)から当然の解釈として、「ルーボは既に埋葬されている」と理解できる余地が生まれてくるのだ。
それでは、事実誤認の責任は当方でなく、間違った解釈に誘導したバチカンニュースにあるのか。そうではない。バチカンニュースはルーボの生死に関して何も言及していないからだ。その意味で、ルーボ殺害の事実誤認の責任はやはり当方の思い違いにあると言わざるを得ないのだ。コラムを送信する前にパリの知人に電話してルーボの生死を確認すれば良かったかもしれないが、当方はその必要性を感じていなかったのだ。
そこで、なぜ当方はルーボが既に死んで埋葬されていると考えたのだろうか。ニュースソースのバチカンニュースは何も言及していない。にもかかわらず、当方は勝手にルーボは埋葬されている、その傍にドロンさんは埋葬されたい、という風に理解したのだ。バチカンニュースの記事を読む限りでは、先述したように、そのように解釈できるが、事実はルーボはまだ生きているのだ。
ドロンさんの愛犬の話を読んだとき、当方の脳裏にはシューベルトの「ベートーヴェンの傍に埋葬を」という話が直ぐに浮かんできた。「ああ、シューベルトが敬愛するベートーヴェンの墓の傍に埋葬されたという願いがあったように、ドロンさんは愛犬ルーボの傍に埋葬されたいのだな」と考えたわけだ。そのストーリーでは、ルーボはベートーヴェンと同じように既に埋葬されていなければならない。その結果、必然的と言えば大げさだが、「ルーボは既に亡くなり、埋葬されている」という当方の思い込みは一層深まったわけだ。
オーストリア国営放送(ORF)は21日、ドロンさんと愛犬ルーボの話について、「俳優は2018年に、自分が死んだ際には犬と一緒に埋葬されたいと発表していた。当時ドロンさんは雑誌『パリ・マッチ』に、『ルーボを子供のように愛している」と語り、『もし私が彼より先に死んだら、獣医に私たちを一緒に逝かせてくれるよう頼むつもりだ。彼に注射をして、私の腕の中で死なせてくれるだろう。その方が、犬が私の死を悲しんで私の墓の上で死んでしまうより良いからだ」と述べていた。
多分、事実関係はORFの記事が書いているようなものだろう。
当方の事実誤認に対してお詫び申し上げる。死んで埋葬済みと思っていたルーボが生きていたのだ。この知らせが愛犬家の読者の皆さんに少しでも喜びを与えることができれば・・・、と願っている。
(「アラン・ドロン『愛犬』の傍に埋葬希望」の記事で愛犬ルーボが死んでいたと受け取れる部分はすでに訂正してあります。)
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年8月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。