韓国の年金が現状の制度が維持されるならば2055年に資金が枯渇するという衝撃的レポートが発表されました。僅か30年後の話であり、現在35歳の人が年金受給年齢である65歳になった時、お金がないということになります。
何故そんなことになったか、言うまでもなく想定以上に早く進む少子化で財源が減り、年金受給者を支えられなくなるのです。制度的には日本と似ており現役層がリタイア層を支える形ですので今のような少子化となれば物理的に維持不可能になることはある程度自明であったわけです。
日本や韓国は少子化により国が消滅すると極論を述べる方もいます。イーロン・マスク氏もそれに言及しています。私はそれはないと主張しています。理由は種は保存しようとすると考えられるからです。天変地異が起きて一瞬にして消え去るような状況や人間そのものが自然淘汰されるケースを別とすれば、種が一定程度まで減ると増やさなければいけないということになり、ある程度の人口は維持されると思います。例えば戦争がはじまると子供が増えるのは「家系」が消滅するリスクを回避することが重要だったからではないでしょうか?
また、日本人はあまり口にしませんが、日本の歴史において正妻と側室の関係は実に大っぴらなものであり、まさに「家系」の維持が延々と行われていました。今風で言えば不倫とも言えますが、当時は子種を授かる目的であり現代のそれとは一線を画するのかもしれません。(議論はあるところですね。)フランスでは未婚の相手の子供も認知することから一時、子供が増えたとされます。ある意味人間の原点でしょうか?
さて、日本の年金制度は頑強なのか、本当に年金はもらえるのでしょうか?
韓国では現在、年金制度の見直しとして厚生年金負担額の引上げ、受給年齢の引き上げ、支給額を減らす、という3大タブーの荒治療を含む対策を検討しています。日本は年金の運用が順調なのであまりこの件に触れる人もいませんが、常に右肩上がりというわけでもないでしょうから同様の検討はいつかは求められるでしょう。
以前にも書きましたが年金制度の最大の問題点は少子化と共に平均余命が伸びていることにあります。年金制度が出来た頃はリタイアして10年ぐらいすればお亡くなりになるような時代でした。しかも当時は働く人がどんどん増えている時代です。まさに収入が増え、支給が減るで安定基盤が想定できるサイクルにあったわけです。ところが今は真逆。よって日本人が消滅するかどうかは別として年金制度はいずれ厳しい状態に追い込まれることは確かでしょう。
では現行制度である賦課方式を改革すればどうにかなるものか、というとたぶん無理じゃないかという気がします。つまりだましだまし改革を先送りすることは出来てもいつかは辻褄が合わなくなるとみています。
お前はどうすればいいと思うか、と言えば2つの仕組みを取り入れるしかないと思います。1つは自分が積み上げた年金は自分だけのために支給されるように変えること、2番目は公的支援の強化であります。
1つ目の仕組みは生命保険と同様だと思います。生命保険は毎月せっせと保険料を払うことで療養費や死んだときのお金が生まれます。年金制度もこれに変え、個人が負担する保険料と同額を勤め先の企業が支援することでより多くのお金が積み上がります。これを年金運用のプロに任せ年率4-5%目標で廻すのでしょうか?
2つ目は高齢者で生活に十分な蓄えがない人に限り、ベーシックインカム制度を導入するのでしょうか?黙って金がもらえるという期待感を下げるため、公的サービスは究極の選択だという仕組みと認識を植え付けることが大事です。例えば大規模な施設にて住居を提供し、食は賄。つまりベーシックインカム制度と言ってもお金を渡すのではなく、衣食住の最低限の支援をサービスとして行うのです。
年金支給開始年齢も先々75歳ぐらいまで先送りすることを視野に入れる必要があります。逆に言えばそれぐらい健康年齢は伸びているともいえ、少子化で労働力不足が叫ばれる中、リタイアを遅らせるしかないとみています。よって年金の払い込み期間が現在40年となっていますが、これを将来最大55年ぐらいまで伸ばすこともアリではないでしょうか?
今の世代の方が聞けば腰を抜かすような話ですが、日本を含む世界はこの50-60年で大きく変わってしまったのです。医療も圧倒的によくなり、健康意識も高まり、長生きするようになりました。外部環境が変わったのに年金の制度変更に抵抗をすることはナンセンスでしょう。最終的には自分の身は自分で守るという意識を身に着けるしかないと思います。
韓国は破綻予想という極端な危機が迫るからこそドラスティックな改革ができるかもしれませんが、日本は真綿で首を絞められている状態ですので最終的には日本の方が世界に比べ改革が遅れている国になることはあり得ると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年10月4日の記事より転載させていただきました。