近著に「オシリを洗うのはやめなさい」がある肛門科医の佐々木みのりさんに「オシリの真実」について伺います。本書は日本人のお尻事情が把握できる一冊です。
「痛み かゆみ 便秘に悩んだら オシリを洗うのはやめなさい」(佐々木みのり 著)
[本書の評価]★★★★(85点)
【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
痔核・脱肛からの出血
佐々木さんは、いぼ痔(痔核・脱肛)が原因で重症の貧血になっている患者さんを診察した経験があるそうです。実際はどのような感じだったのでしょうか。
「いぼ痔からの出血だったのですが、便器が血みどろになっていたそうです。家族にも内緒で、誰にも言えずに1人でもんもんと悩んでいるうちに貧血がどんどん進行し、ついに貧血症状が出るようになりました。顔は青白く、歩くのもフラフラで、階段を上がると息切れして最後まで上がりきることができない状態でした」(佐々木さん)
「動悸、目まい、立ちくらみなどの症状もひどく、日常生活に支障をきたすようになってきたため内科を受診しました。血液検査をすると、治療が必要なくらい重度の貧血でした。貧血の治療をしても一向に改善しません。毎日、トイレで大量の血液が失われていっているわけですから」(同)
大病院を紹介してもらい検査をしても貧血以外に何も異常が見当たりません。先生方も困り果てていたそうです。
「そこで思い切って告白しました。実は痔がひどくて、毎日、トイレで大量出血してるんです。それを知った内科の先生は、じゃあ、ちゃんと痔を治してください!と安堵されたそうです。うちの診療所で手術をして入院されたのですが、青白かった顔が血色良くなっていくのが分かり、どれだけひどい出血だったのか想像できました」(佐々木さん)
「たかが痔の出血」と侮るなかれ
たかが痔の出血とあなどっていると貧血になることもあります。
「本当は貧血になる前に治療してほしいです。痔からの出血で貧血になることがあります。どれくらい出血したら貧血になるのかは患者さんによっても違いますし、ケース・バイ・ケースです。ちょっとくらいの出血だから大丈夫だろうと思っていたら、長年続いて貧血が進行し、重症になっていたりすることもあります」(佐々木さん)
「貧血になると症状があるから分かるでしょ!と思うかもしれませんが、気付かないうちに進行していることもあります。特に少量の出血が毎日、何年も続いているケースに多いです。ちょっとずつ血液が失われているため、体が適応しているのでしょう」(同)
佐々木さんは、薬や注射療法で出血を抑えても「痔の原因になった便通を治さなければ痔を繰り返す」と言います。痔の根本治療は便通を治すことであり、そこを直さずに手術だけ受けても効果的ではないようです。さらに生活習慣の改善なども必要になります。
最近、医学書にもない肛門トラブルが増加しています。日本人の「オシリ」が大ピンチに見舞われているのです。この機会に正しい情報を収集してみてはいかがでしょうか。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)