旅行にサブスク、ヒットするのか?

「別荘もサブスク型、ホテルより安く気軽に 若者が支持」(日経)とあります。サブスク型の旅行が若者に受けているというのですが、本当なのだろうかと思います。マーケティングでいうイノベーターと称するマーケット全体の約2.5%の人にヒットしても最近は次の層であるアーリーアダプター(13.5%)にすらつながらないケースがあります。さて、このサブスク型旅行、ヒットするでしょうか?

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皆さんが旅行を計画するとき、何を基準に選ぶでしょうか?目的地や旅行先での行動が主でしょうか、どこでもいいからとにかく非日常を求めるでしょうか?あるいはとてもお得な金額の旅行パッケージがあったので飛びつくのでしょうか?どれもありだと思います。

が、基本的に言えるのは旅行には2つのエレメントが必ず必要になります。1つがお金、1つが時間です。両方ないとこれは成立しないのですが、これがなかなか難しいわけです。多くのお勤めの方は会社で許される範囲での休暇という時間的制約が付きまといますし、最近は訪日外国人が引き上げたホテル代金が日本人の国内旅行にネガティブに反応することもあります。特にダイナミックプライシングを採用していると同じホテルの価格が時期により3倍に跳ね上がることもしばしばあり、「あれ、あそこ、以前、8000円で泊まれたのに…」という失望感すら誘います。

さて、ではホテルのサブスクは受けるか?であります。個人的にサブスクというビジネス形態が感性的に理解できないということはあります。一時、サブスクのクルマから飲食店までサブスク プチ ブームだったのですが、沈静化したと理解しています。理由は毎月決まった金額を払うというコミットメントが難しいのであります。

記憶にあるのは飲食店で、一定金額を払うと通い放題を謳うところで、今でも健在のようです。おおむね月7-8000円ぐらいなのですが、星の数ほどある飲食店のうち、特定のところにそれほど通うという選択肢が正しい価値観なのか疑問があるのです。

これが宿泊地となればもっと複雑な価値観を提示します。先日、2拠点居住地はよいと申し上げました。ただし、その際、さほど遠くなく、いつでも通えるところと書かせていただきました。別荘でもせいぜい1時間程度で行け金曜日仕事を終えてからすっと行けてできれば月曜日早めに出れば朝の出勤時間に間に合うぐらいのところなら2拠点居住地の価値はかなり向上します。

一方、旅行となると常に前向きのサプライズやワクワク感を求める為、毎週というわけにはいきません。例えば皆さんに毎週一泊温泉旅行に行きたいか、言われたらNOだと思います。理由は金銭でも時間でもないのです。「そこまでしてまで」という飽きではないかと思うのです。

今から20‐30年前、世界ではタイムシェアホテルのビジネスが話題になりました。一定金額を払い年間〇ポイントを購入、そのポイントを使って1週間単位で指定の宿泊先に泊まれる、というものです。私の前の勤め先でもタイムシェアビジネスをやっていましたが、非常に苦労していたのをはた目で見ておりました。旅行に来た客に餌を見せてセールスセンターに連れ込み90分という時間枠で「〇ドル払えば世界中のこんな素晴らしい宿泊施設に泊まれるのですよ、さぁ、今、すぐに決めてください」というわけです。成約率は笑えるほど低く、マーケティングコストが異様なほど膨れ上がっているのを社内報告書で読んだ記憶があります。タイムシェアビジネスは顧客も事業主も血みどろだったのです。

今、サブスク旅行が流行っていると日経が報じるならその記者はタイムシェアビジネスを知らないのかもしれません。いや、知っていたとしてもそれが現実問題、どれぐらい禍根を残すことになるのかは肌感覚としてないのでしょう。

私は断言してもよいのですが、サブスク旅行は流行りません。理由は別荘でもない、旅行でもない非常に中途半端な立ち位置になるからです。ましてや今、ネットで無数の旅行先が簡単に選べ、体験できる上に時期によっては破格の値段でオファーがあります。旅行とは新天地を経験することに重みがあり、「あそこ、まだ行ってないよね」という感覚が大事なのだと思います。もちろん、同じところに行きたいという方はいらっしゃいます。ただ比率としては非常に小さいと思うし、そのコミットメントを3年間、期待できるかといえば厳しいのです。なぜなら必ず、不満になるあれやこれやが見えてくるのです。すると販売する側は常に高いコストのマーケティング攻勢をかけ続けなくてはならず、正直、体力勝負となるでしょう。

旅行は「行くまでが楽しみ」とも言われます。計画するのが楽しいのであって行くところが決まっているのは義務感でしかない、というのが私の経験も含めた意見です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年11月20日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。