正月に東京などで働いている子どもたちが、京都に里帰りしたときに京都人は、すき焼きなど肉料理を用意する。京料理なんぞ目もくれない。せいぜい、白味噌のお雑煮くらいである。
だから、暮れの京都では、肉屋の前に行列ができる。京都人にとってのご馳走といえば、美味しい肉なのだ。
毎年、微妙に違うのだが、47都道府県を比較した統計集など見ると、京都はエンゲル係数が全国トップクラスである。また、牛肉の消費量が一番ともいわれる。魚が少ない分そちらにまわるということもあるが、豚肉をあまり食べないということでもある。
京都に限らないが、関西では、肉といえば牛のことで、豚肉は豚、鶏肉は「かしわ」と呼ぶ。しかも、鶏肉は「かしわ屋」さんに卵やだし巻きと一緒に売っているもので肉屋さんにはない。
牛肉が好きなのは、近くに近江という日本の牛肉文化発祥の地があったからである。割り下というようなだし汁は使わずに、牛肉を砂糖と醤油だけで焼いて食べるという方法は、近江や京都の家庭での何か嬉しいことがあったときの最高のごちそうである。
三条寺町にある、「三嶋亭」という肉屋兼スキヤキ屋が定評があって、ここの切り落とし肉など運良く買えると得したような気になる。
それのライバルは、四条猪熊(四条大宮の近く)に本店がある「モリタヤ」で、支店も東京を含めて何カ所かある。すき焼き、しゃぶしゃぶ、オイル焼きなどひとつの標準になる。
レストランとしてはいろいろあるが、京都人の感覚としては、肉屋で肉を買って家庭で楽しむものという受け取り方が普通だ。
コスパのいいすき焼き屋となると、滋賀県に行った方がいいかもしれない。大津市石山の松喜屋。大津駅に近い「近江かど萬」。
彦根の近江肉「せんなり亭伽羅」。
近江八幡の「近江かね安」や「近江牛毛利志満」、「まるたけ近江西川」など定評のある名店である。