先日行われた名古屋市長選挙では、いわゆる「ゼロ打ち」(投票終了直後の当確)で河村たかし市長の後継である広沢一郎氏が圧勝しました。
一方で、敗れた大塚耕平氏は長年参議院議員として実績を積み上げてきた有能な政治家であり、温厚な人柄でも知られています。自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党といった主要政党の支援を受けながらも厳しい結果に終わりました。勢いのある国民民主党の代表代行を務めていた大塚氏ですら勝利を得られなかった事実は、河村氏の影響力の大きさを物語るとともに、既存政党全体への評価が全国的に低下している現象を示していると言えるでしょう。
名古屋市は、長年にわたり河村たかし氏が政治の中心に立ち続けてきた地域です。私自身、浪人時代を名古屋で過ごし、その頃から「総理を狙う男」として河村氏の名を耳にしていました。彼が自転車で街中を駆け回りながら「燃えよドラゴンズ!」をBGMに行う「自転車街宣」は、名古屋の風物詩として30年以上も続けられてきました。
河村氏は選挙において圧倒的な強さを誇り、そのノウハウを惜しみなく教える存在でもありました。私もかつて民主党の若手議員だった際に、同党に所属していた河村氏から「駅前で演説するだけではダメだ。自ら市民の元に出向け」とアドバイスを受け、自転車街宣を実践した経験があります。
今回の広沢一郎氏の選挙活動は、この河村氏の手法を忠実に再現していました。映像でも、電飾付き自転車を使った街宣や氷水をかぶるパフォーマンスなど、エネルギッシュな活動が目を引きました。広沢氏の庶民的で親しみやすい人柄も支持を集める一因となったでしょう。
河村氏は減税派として知られ、「税金を納める人が一番偉い」という姿勢を強調してきました。一方で、大塚氏は増税論者というレッテルを貼られたことが不運でした。実際には、国民民主党に所属してきた経緯からこのレッテルは事実に反するものですが、有権者の間では影響が大きかったと考えられます。
既存政党への不信の高まり
今回の名古屋市長選挙は、既存政党に対する市民の不信感を如実に示す結果となりました。これは名古屋特有の事情にとどまらず、全国的にも同様の現象が見られます。先日の総選挙では、既存政党(自民党、公明党、立憲民主党、共産党、維新)の比例区の得票率合計が前回から10ポイント程度低下しました。一方で、国民民主党が伸び、れいわ、参政党、日本保守党などが台頭するなど、新興勢力の勢いが目立ちました。また、兵庫県知事選挙では斎藤元彦氏が既存政党の支援を受けることなく勝利を収めたことも象徴的です。
従来のテレビ主体の選挙戦略が限界に直面している中で、SNSを活用した新たな戦略が求められるのは明らかですが、それだけで問題が解決するわけではありません。
自民党は変わらなければならない
これまで既存政党は、高齢者優先の政策を多く進めてきました。しかし、その結果に不満を持つ若い世代が最近の選挙で行動を起こし、その姿を見た高齢者が支援に回るという新たな流れが生まれています。団塊世代の高齢者の中には、孫の学費を支援するなど、若者の経済的な厳しさを認識している人も多くいます。自民党は、この世代間の連携を理解し、若年層に希望を与える政策を進める必要があります。
今回の経済対策の柱である住民税非課税世帯への3万円の給付金では、高齢者層が受給者の約75%を占めています。その中には十分な貯蓄を持つ高齢者も含まれていると見られます。このような支援の出し方が本当に適切であったのか、改めて検討する必要があります。
また、自民党が抱える裏金問題は国民の不信を招き続けています。このような状況の中で、安全保障環境が厳しさを増す現代において、国政をマネジメントできる政党は自民党しかないという立場を明確にしなければなりません。同僚議員とも協力し、こうした課題に特化したYouTubeでの発信を検討しています。準備が整い次第、改めてお知らせいたします。
以上のように、名古屋市長選挙の結果は地方政治における大きな転換点であると同時に、既存政党が直面する課題を浮き彫りにしたものです。これを契機に、自民党をはじめとする既存政党がどのように変革を進めていくのかが問われています。
編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(自民党・静岡5区)のブログ 2024年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。