勘違いしてる人が多いので、ここで正しい知識と認識が得られるようにしました。
兵庫県の財務部が公益通報結果を公表:パワハラと断定できず
【信頼確保に向けた改善策の実施】
職員公益通報事案の調査結果及び
公益通報委員会の審議等を踏まえ
改善策を実施します。・職員公益通報制度における外部窓口の設置
・物品受領ルールの明確化
・組織マネジメント力向上特別研修の実施 pic.twitter.com/M6y4khVges— 兵庫県広報 (@hyogokoho) December 11, 2024
令和6年12月11日、兵庫県の財務部が公益通報結果を公表しました。
結論としては「パワハラ等と評価できる事実の存在の確証までは得られなかった」ということになりましたが、関連事項について改善策の実施が行われています。
令和6年12月11日兵庫県知事記者会見での説明とパワポリンク
令和6年12月11日兵庫県知事記者会見でこちらのパワポに即して説明があり、記者との質疑応答がありました。
なお、県の公益通報担当部署が「パワハラ等は認定できないと判断」ということは7月20日の時点で報道はされていましたが、何故か現在まで県から公表されてませんでした。
3月の怪文書と4月の県制度における公益通報、百条委員会・第三者委員会の検証
現在、兵庫県議会の百条委員会(文書問題調査特別委員会)と第三者委員会で調査・検討されている話は、【3月12日付の文書】の記載内容の事実関係と、それに対する【公益通報者保護法】上の観点からの検証です。
一報、今回、県の財務部から公表された公益通報結果は【4月4日に県の財務部に申し立てられた通報】に関する【兵庫県の公益通報制度】における話であり、公益通報者保護法の話とは同じではありません。内容は、3月の文書内の7項目の内、五百旗頭氏に関する項目を除外した6項目だったようです。
兵庫県職員公益通報制度では以下書かれています。
県又は公社等の事業又は職員等の行為について、法令違反や職務上の義務違反又はこれらに至るおそれがあるもの、上記に準ずるものとして、県政を推進するにあたり県民の信頼を損なうおそれがあるものについて通報できます。
公益通報者保護法の「通報対象事実」は各種の法令行為に限定されているので、県の制度では、法律よりも遥かに広い範囲の事実を対象にしているのが分かります。
これに対して、公益通報者保護法の観点から見ると、3月12日付文書の場合は、内部通報の事実は存在していませんでした(以下図を参照)。
他方で、4月4日のものは元県民局長が在職中に作成者を明かした上で県の窓口に提出されています。
ただし、文書の内容は曖昧過ぎて法2条の「通報」要件を満たしておらず、誹謗中傷に渡る記述もあることから「不正の目的でなく」要件も満たしていないので、そもそも公益通報に当たらないと言えます。
もっとも、受け取った組織の側が任意に公益通報として扱うことは妨げられません。
この場合において敢えて法律上の概念に相当するか否かの話をするならば、4月4日の文書はいわゆる「一号通報」となり*1、「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合」に解雇無効や不利益取り扱い禁止の効力が法的効果として生じます。
ただ、裁量権の濫用という一般原則を論じるならば、通報された事実関係の真実相当性が勘案されることになりますが、仮定の上であってもそんな検討をする場所があるとは思えません。
まとめ:告発文書の記載事実の認定とパワハラと評価できるかという話は別
告発文書の記載事実があるかどうかと、パワハラと認定できるかどうかは、次元が異なる話です。記載されている事実関係について、それに相当する具体的な一定の事実はあったが、それが記載事実から伺えるものでもない上に、斎藤氏の事柄であるという事実はついぞ認定されなかったということです。
「無罪推定原則」の観点からは、「斎藤知事によるパワハラの事実は無かったとされた」と言及することは、県の認定判断の仕方の照会としては厳密さ・正確さを欠くことにはなりますが、物事の平仄からすればそこまでおかしな話ではありません。
問題はこれから判断結果が出る百条委員会と第三者委員会の検証結果・報告書の方です。こちらは公益通報者保護法の観点から判断をするわけですからね。
*1:法3条1号、6条1号
*2:ただし、当該事実が無いと知った上で文書を配布した場合は「思料」とはならない。
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。