- デロング『20世紀経済史:ユートピアへの緩慢な歩み』
- 西野智彦『ドキュメント異次元緩和』
- 脇田成『日本経済の故障箇所』
- 唐鎌大輔『弱い円の正体』
- ガーストル『新自由主義の終焉』
- 轟孝夫『ハイデガーの哲学』
- 千葉聡『ダーウィンの呪い』
- 和田泰明『ルポ年金官僚』
- ヘンリック『WEIRD「現代人」の奇妙な心理』
- クロポトキン『相互扶助論』
今年は意外に経済学の本が豊作だった。日本の長期停滞を考える上では、20世紀後半からの歴史的な視野で考える必要がある。1はかつてリバタリアンだったデロングが、アメリカの新自由主義は失敗だったと総括している。5はイギリスの保守派の新自由主義批判である。
アベノミクスが失敗に終わった原因を検証することも重要だ。2は黒田日銀の量的緩和が日銀OBや経済学者の反対を押し切って政治的に決まった内幕を当事者への取材で描いている。3はその失敗の原因をマクロ経済学で解明し、4はそれを現場のエコノミストの目で検証している。『宿命の子』は安倍政権の裏側を描いているが、安倍氏を敵視した朝日新聞の話を避けている。
日本経済の最大のテーマは社会保障の危機だが、問題があまりにも複雑で全体を理解するのが困難だ。7は年金官僚の立場から書いているが、彼らの論理がよくわかる。この問題を体系的に論じた本としては、昨年もベスト10にあげた『新しい「国民皆保険」構想』をおすすめしたい。
進化論の本もたくさん出た。7は「協力の進化」の入門書。9はやや牽強付会だが、一夫一婦制や夫婦同姓はカトリック教会のイデオロギーだということがわかる。10は大杉栄以来100年ぶりの新訳だが、今でも読むに値する。