米7月ADP全国雇用者数と、MBA住宅ローン申請件数指数をおさらいしていきます。
米7月ADP全国雇用者数は前月比17.9 万人増となり、市場予想の17.0万人増を超えた。前月の17.6万人増(17.2万人増から上方修正)とほぼ変わらず。ただ、2015年の平均値20.7万人増には届いていない。2010年2月以来の増加トレンドは維持した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
ADP全国雇用者数、2011年以降の平均値以下が続く。
(作成:My Big Apple NY)
内訳は、以下の通り。
▽企業規模別
中小企業 12.9万人増<前月は14.2万人増、6ヵ月平均は14.0万人増
大企業 5.0万人増>前月は3.4万人増、6ヵ月平均は4.2万人増
▽業種別
サービス業 18.5万人増<前月は20.3万人増、6ヵ月平均は20.8万人増
(米7月ISM製造業景況指数の雇用は51.4と、前月の52.7から低下)
・専門/ビジネス・サービス(派遣を含む) 5.9万人増<前月は7.8万人増、6ヵ月平均は5.2万人増
・貿易/輸送/公益 2.7万人増<前月は4.1万人増、6ヵ月平均は3.1万人増
・金融 1.1万人増>前月は0.9万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
財生産業 0.6万人減、4ヵ月連続で減少>前月は2.8万人減、6ヵ月平均は0.7万人減
(米7月ISM製造業景況指数の雇用は49.4と、前月の50.4を下回り再び分岐点割れ)
・建設 0.6万人減<前月は0.4万人減、6ヵ月平均は0.9万人減
・製造業 0.4万人増、6ヵ月ぶりに増加>前月は1.5万人減、6ヵ月平均は0.6万人減
ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受けて「雇用の増加は力強さを維持しているが、最大限の雇用に到達する過程で鈍化し始めた」と分析した。企業は人不足に直面し、求人中の職を埋めることが困難になっているとの考えを示す。
▽MBA住宅ローン申請件数指数、金利低下に反転も3週連続で低下
全米抵当貸付銀行協会(MBA)住宅ローン申請件数指数は、7月29日週に前週比3.5%低下し526.8だった。3週連続で低下し、過去5週間で3回目のマイナスとなる。借換が4.2%低下し2315.2と、3週連続でマイナスに。新規も3.3%低下の216.9と、3週連続で下振れしている。米4~6月期国内総生産(GDP)速報値が大幅に市場予想を下回り金利は低下したが、需要を喚起できなかった。MBA住宅ローン申請件数指数の前年比(季節調整前)は31.4%上昇し、前週の42.3%から鈍化した。新規も6.0%の上昇(前週は12.1%の上昇)、借換も55.5%の上昇(前週は71.8%の上昇)と、それぞれ下向いた。
30年固定金利型の住宅ローン金利(平均)は前週の3.69%から3.67%へ低下した。1年前の4.13%以下にはとどまり、過去3年間で最低近くを保つ。15年固定金利型(平均)は前週の2.90%から2.94%へ上昇。FHAのローン金利も、前週の3.53%でから3.56%へ上昇した。
申請全体に占める借換の割合(件数ベース)は60.7%と、2月以来の高水準だった7月15日週の64.2%を下回った。2009年6月以来の低水準である2015年7月3日週の48.0%から切り返した水準を維持。ただし2013年5月以来の高水準となった2015年1月16日週の73.9%からは、大きく遠ざかったままだ。
――米7月ADP全国雇用者数は、米7月雇用統計・民間就労者数のエコノミスト予想値(ブルームバーグまとめ)17.1万人増を上回りました。ダラス連銀のカプラン総裁が適正とする「12.5万人増」、並びにイエレンFRB議長が言及した水準を超える見通しです。米7月ISM製造業景況指数で明らかになった通り財生産業は減少の可能性を点灯させていますが、サービス業が補う公算。9月利上げ派を勢いづかせそうですが、米決算はキャタピラーが通期見通しを下方修正したように資本財関連は芳しくありません。テクノロジー関連が好調とはいえ、スターバックスやマクドナルドの最高経営責任者(CEO)からは消費者における需要低下の声が聞こえており、現状で堅調なサービス業の雇用が鈍化するリスクも残ります。MBA住宅ローン申請件数指数も金利が再び低下するなかでも軟調な推移を続けており、慎重な買い手の動向を反映しているかのようです。
(カバー写真:Northern Ireland Executive/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年8月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。