事業仕分けで次世代スパコン開発予算が事実上凍結された。このサイトでも仕分け賛成と反対の意見が交錯している。菅副総理は凍結見直しを表明するなど先行きは不透明だ。
次世代スパコンはかつての戦艦大和みたいな存在で時代に後れているから開発は不必要だという批判には組しない。その論はわがブログに書いた。私は次世代スパコンは開発すべきだと思うが、巨額の税金をつぎ込んで開発すべきかどうかは議論の余地があると思っている。
科学技術の開発は基本的に商業ベースに乗らない。基礎科学ならなおさらである。宇宙の成り立ちを科学で究明しても、その成果が即ビジネスにつながるわけではない。最先端の科学技術開発には波及効果があるといわれるが、それはおこぼれのようなもので、初めからそれを期待するのは間違いである。
科学技術の成果がビジネスに応用され、リターンが享受できるまでには相当の時間がかかる。だから公的支援が必要になるのだが、次世代スパコンはそうした類の科学技術なのだろうか。投資の回収に時間がかからないものなら、せいぜい低金利の政策金融でつなげばいい。
日米のハイテク企業は競争でスパコンを開発してきた。その競争は計算速度の競争だった。現在、日米の格差が広がり、日本の科学者に危機感が広がっていた。
科学技術立国は日本の生命線だが、科学者の要求通り予算をつけていたら、財政の底が抜ける。おのずと限度がある。
次世代スパコンになぜ1200億円ものカネがかかるのか。妥当だという側はきちんと積算根拠を説明する義務はある。もっと安いスパコンがあるのだから、それを買えばいいという人は、その安いスパコンでも十分に科学的難問を解決できることを証明しなければならない。
スパコンは汎用品ではない。特殊な用途しかない。次世代スパコンを開発したからといってスパコン産業が成立するわけでもない。だからといって最速スパコンが不要だという結論にならないのが、科学のやっかいなところである。
人類を初めて月に送り込んだアポロ計画に米国は約10兆円をつぎ込んだ。夢を買うには高すぎる、地上の問題に使え、という議論が米国社会にはずっと存在していた。それでも計画は実行され、現在は月面基地建設計画が進められている。
そのためにNASAは国民の理解を求める説明義務を果たしてきた。
科学分野への投資は、その開発がなぜ必要なのか、金額、その使途は妥当なのか、それらをだれがどのように評価するのか、を明らかにしなければならない。
今回の問題も政府、開発当事者の説明責任が果たされていたら、ここまでこじれることはなかった。
コメント
原氏と同じ意見です。
フィージブルであることはリターンがあることと同意ではありません。
国を企業に置き換えれば、基礎科学への投資はコストセンター業務への投資であり、また、基礎科学への投資には直接的/間接的な類があり、スパコンは間接的な投資の類だと理解しています。
「機密が漏れない範囲」で、妥当性をアピールしてほしいと思います。
「その安いスパコンでも十分に科学的難問を解決できることを証明しなければならない。」 こういう事を言う人は、金さえ掛ければどの様な難問でも解決できると思っているのだろうか。
災害対策などでも似たような傾向があり、予算のかけ過ぎとか無駄な公共事業と指摘すると、「では100年に一度の洪水が起こったら誰が責任を取るのですか」と言うようなものであり、これも金さえ掛ければ、どの様な災害でも防げると思っているのだろう。
では私からも提案しよう。
1250億の開発費を認めるとして、世界最速の期間を一年間維持する事を目的としよう。
もしこれを達成しなかったら、1250億円を開発スタッフの皆さんで賠償していただけるという契約でいかがでしょうか?
これでは厳しいと言われるのなら、競争に負けた相手方の開発費との差額を弁償するだけでも良い。これなら合理性があるでしょ?
いかがでしょうか。
赤の女王仮説というものがありましてね。
「その場にとどまるためには走り続けなければならない」
親は子供に投資をするが、投資をした分だけ子供が偉くなるとは限らない。貴方は東大にいく頭がないので投資はしませんと言うのと同じ。知的レベルまで貧しくなる必要はない。
5000億のアフガン支援・6000億円の高速道路無料化を止めなさいよ、と。
一番むーだ。
>次世代スパコンになぜ1200億円ものカネがかかるのか。
>妥当だという側はきちんと積算根拠を説明する義務はある。
おっしゃる通り。
>もっと安いスパコンがあるのだから、それを買えばいいという人は、
>その安いスパコンでも十分に科学的難問を解決できることを証明しなければならない。
これはおかしい。
当事者(計算が得意な科学者)が金額の妥当性を説明できないのに、
なぜ部外者にその説明を求めるのでしょうか。
事業仕訳のおかげで京速プロジェクトが一躍世間の注目を浴びることになった。
計画通り予算が付いたとすれば、数年後に完成する一号機は否応なしに世間から評価の対象と成る。
これで理研や研究者も成果の誤魔化しは出来ないでしょう。
また、国民やマスコミも科学技術の成果に対して関心を持つことになるはず(それが野次馬根性であっても)。
どっちに転んでも良かったと思う。