12月27日国連案保障理事会が採択した決議2767は、2024年最後の安保理決議となった。2024年で二年間の非常任理事国の任期を終えた日本にとっては、安保理での最後の仕事が決議2767であったことになる。
その内容はソマリアに関するものであった。日本にあまり関係がない内容であるかのようにも見えるかもしれないが、決して全く日本に関係がないということではない。
この決議によって、1月1日から新設(実態としてはATMISの名称変更)されるアフリカ連合(AU)のソマリアにおける平和活動ミッションであるAUSSOMが、正式に国連安全保障理事会の授権を受けることが確定されたからだ。AUSSOM設立日まで残すところ4日間というぎりぎりの時期になったのは、この決議にある重要な内容が含まれていたからだ。
すでに2023年12月の安保理決議2719で、アフリカ連合の国際平和ミッションに、国連拠出金からの資金提供を、予算の75%までを上限として可能とすることが決められていた。ただし実際にどの事例に適用するかは、個別案件ごとにあらためて審議決定をする仕組みとなった。それでも長年にわたるアフリカ連合のソマリアにおける活動の実績、規模、重要性から、ソマリアが想定された決議であることは、自明であると考えられていた。
これに異を唱えたのは、アメリカ合衆国である。ソマリアへの決議2719の適用に、単独で強硬に反対し続けた。アメリカ国内で予算配分の決定権を持つ議会は、もともと国際機関に対する懐疑的な議員が多かった。加えて11月の選挙で、上院も共和党が多数派になるに至り、強硬路線に拍車がかかった。
最終的には、時間切れの状況の中で、アメリカに棄権を選択してもらうことで、決議2767が採択された。そこでは国連拠出金が75%を上限として、AUSSOMに提供されることが定められた。
日本も有力な国連加盟国として、AUSSOMに財政的に関与することになる。ピーク時の半分以下とはいえ、2025年からの分担金負担率は6.9%なので、AUSSOM予算の5%程度が日本からの貢献になる計算だ。決して少ないとまでは言えない額であろう。
国連PKOは、過去10年ほどの間に、全体予算を3割程度減らした。活動範囲を狭めているためである。近年は特に、欧米諸国が、ウクライナへの支援で疲弊し、国際機関向けの資金提供を抑えているという事情がある。
もっとも武力紛争が多発しているにもかかわらず、国連PKOが活動範囲を縮小させている背景には、アフリカ連合などの地域組織が、独自の国際平和活動を行っているためでもある。
国連PKOの縮小の傾向と、アフリカ諸国の地域的な努力への支援を求める立場の均衡点として成立したのが、決議2719であり、決議2767であったと言える。今後の国際的な平和活動の行方にとって、ソマリアの動向は、大きな意味を持っていくことになる。
日本は、安保理への非常任理事国としての参加で、最高数を誇る。つまり常任理事国5カ国に次いで安全保障理事会に参加してきたのが日本である。しかし次に日本が安保理非常任理事国に立候補するのは、8年後とされている。他のアジア諸国の国力の充実という背景があり、全般的な傾向として、日本が安保理に加わる頻度は、低下していくことになるだろう。もちろん常任理事国になるなどという話は、過去の逸話である。
他方、日本は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を外交の指針として、国際協調路線をとっていく姿勢を持っている。東アフリカはインド洋の西岸だ。ソマリアが位置するアフリカの角の地域は、東アフリカの中でも、地政学的な要衝としての意味が大きい。日本の自衛隊の唯一の海外拠点が、隣国のジブチに置かれている。
安保理理事国としての最後の仕事が、決議2767であったことを想起して、地に足の着いた現実感の範囲内であっても、引き続きソマリアあるいは東アフリカに対する関心を完全に途切れさせることだけはないようにしたい。
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