最近の日本の外交を見ていると日本は政権交代したのかと思われるほどの変身ぶりを感じているのは私だけなのでしょうか?
石破政権になって閣僚のメンツはほとんど知らない方ばかりになりました。そして目立たないし、きっと不祥事も起こらなそうな人事ぶりです。岸田政権までは自民党の顔があちらこちらに見え、善きにつけ悪しにつけ自民党らしさがあり活気もありました。
今、私が感じるのは自民党ではなく石破組なんです。大組織である自民党が全然機能しておらず、かなり大きな不満のマグマを貯めていてそれを爆発させる機会を虎視眈々と狙っている、そんな感じに見えるのです。とすれば自民党という一つの組織である意味がほとんど理解不能、それが私の感じるところなのです。
石破外交は明らかに中国重視、アメリカ苦手意識です。日本は世界の主要国、アジアの盟主としてハイレベルの外交をし続けなくてはいけないのですが、自民党主流派が脈々と築いてきたアメリカとの蜜月関係のテンションが切れたように見えるのです。ケンカはしないけど今まで以上の付き合いもしない、そんな姿勢に見えます。それが石破氏ご本人の気持ちなのか、国としての方針かどうかは判断がつきかねます。外務省が「最近のアメリカは読みにくいから今は待ちのタイミングですよ」と囁いていないとは言い切れない気もします。
今回、森山幹事長以下の訪中団は中国で厚遇を受けています。石破氏の訪中、習近平氏との会談の実現もさほど難しくないでしょう。なぜ、中国が石破政権をウェルカムしているかといえば外交においてアメリカと中国を両方立てる「八方美人外交」は難しいので分断工作を狙っているからでしょう。
アメリカ政府は石破政権が中国と蜜月になっていることをトランプ政権に当然、報告します。トランプ氏は二国間ディール主義ですから石破氏と初会談があった際には踏み絵があるとみています。そうなると「あぶはち取らず外交」になるのです。トランプ氏は日本をどこまで重視しているか私は疑問を感じています。「アベがいた時はともかく、今も嫌いじゃないけれどアメリカにとってメリットがあるのか」と天秤かけているように見えるのです。
私は石破氏が中国偏重になることを悪いとは言いません。ただし、失うものもあるかもしれない、そしてそれはもっと大きなものになるかもしれないと思っています。
ところでカナダはトルドー氏が辞任表明をしたので3月9日に自由党の選挙が行われます。現時点で有望な候補はフリーランド元副首相とマーク カーニー元中央銀行総裁の2名に絞られています。ほかに名前が取りざたされていた候補たちが見事に辞退したからです。理由は仮に首相になってもすぐに野党から内閣不信任案が出る為、少数与党である自由党は解散総選挙をせざるを得ないのです。それが早ければ5-6月とされます。つまり首相になっても3か月の運命なのです。総選挙をすれば政権交代は確実視されています。
カナダの政治の不安定感はトランプ政権になった際、極めて不利に働きます。6月にはG7サミットをカナダが議長国として主催するのですが、首相が誰になるかわからないので議長が誰になるか直前までわからない、そんな状態なのです。これではトランプ氏は「カナダ州」と言いたい放題になるでしょう。私から見れば最悪のタイミングでのトルドー氏の辞任表明だったのです。彼は昨年までに解散総選挙を行うべきだったのです。
何故私がカナダの例を挙げたかといえば日本の政治も同様に方向感が無くなっているのです。いみじくもロシアのラブロフ外相が年頭記者会見において日本の方針に一貫性がなく、自国の意見や考えがないと揶揄しました。私は石破政権になってからますますわからなくなったのです。この国はどこを向いているのだろうと。
数日前、日本製鉄のUSスチール買収に絡み、ライバルであるクリーブランドクリフス社のゴンカルベスCEOが2時間もの記者会見で大放言をしました。その日本批判は見ている方が恥ずかしくなるくらいもの凄い態度でした。USスチールをめぐるビジネス戦争だけのはずなのに「我々の血を吸う」とか「1945年以降も日本は学んでいない」とか「邪悪な中国よりひどい国だ」と言いたい放題でした。
この発言が飛び出した遠因の一つは日本政府がうまく立ち回りできなかったことは否めないのです。アメリカは現代でも黒船役であり、日本市場の開放やアメリカ向け輸出の規制(自主規制を含む)などアメリカ都合主義に振り回されてきました。ですが、日本がアメリカを振り回したことはないのです。日本製鉄はバイデン氏を訴えました。その代わり矢も飛んでくる中で日本がアメリカとどう立ち振る舞うのか、もっと腰を入れないととんでもないことになると思います。
石破政権が苦手意識を持つ限りアメリカとの外交はネガティブになりやすくなるとみています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月16日の記事より転載させていただきました。