「訪日外国人で犯罪増加!日本に来るな」は正しい?

黒坂岳央です。

訪日外国人の増加が止まらない。東京や大阪はもちろん、地方の観光名所なんてない場所でもスーツケースを転がす外国人を見ることもある。

日本に魅力を感じ、日本経済にお金を落としてくれること自体は喜ばしいことだ。しかし、どうしても訪日客が増えるとそれに連動して悪いことをする人が増えるのはある程度避けられない。

SNSやメディアでは「インバウンドで治安が悪化した!」と騒いでいる。実態はどうか?

alashi/iStock

どんな犯罪が増えているのか?

始めから組織的に計画犯罪を行うために来日したケースを除くと、彼らの犯す犯罪にはある傾向が見られる。

犯罪白書(法務省)のデータによると、最も多かったのは窃盗(61.2%)、2位が傷害・暴行(12.5%)で全体の7割超を占める。

実際、SNS上でも電車の網棚に乗せていた荷物をまるで自分の荷物であるかのように外国人が勝手に持っていこうとした、といった投稿が見られた。また、街中で小競り合いが起きている動画もあり、その多くは外国人同士が喧嘩をしているケースが多いようである。

インバウンド増加に伴う観光公害によって、道路や公共交通機関が混雑していることは以前から問題視されていた。しかし、窃盗が増加すると我々の日常生活まで影響されてしまう。こうした内容で「インバウンド増加はまずい!」という記事や投稿が増えたものと見られる。

本当に治安は著しく悪化?

ただ誤解のないようにしたいのは、本稿は危機や不安を煽る意図はなく、むしろ「そうした記事や投稿に気をつけよ」といいたいのである。

日本ファクトチェックセンターの発表によると、「来日外国人犯罪が爆増、重要犯罪+2000件以上 性犯罪+5000件以上という投稿が広がっているが、これは誤りである」と注意喚起を促している。実際には日本人が日本で犯した犯罪も含まれている数字であることが明らかになっている。

SNSを見てみると、まるで訪日外国人が我が国で次々と重大犯罪を犯して、治安を破壊しているかのような印象を与える煽り投稿が少なくない。しかし、冷静になって統計の数字を見れば違った印象になる。

観光庁のデータでは、訪日外国人数は2024年11月の推計値で3337万9900人、このうち訪日外国人の摘発者数(刑法犯)は5735人で「約0.017%」なのである。「警察が認知していないものもあるはずだ!」と反論がありそうだが、さすがに実数の数百倍はないだろう。

また、警察庁のデータによると、犯罪が起きているエリアは関東の1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)に集中しており、確かに様々な人が行き交う一部エリアでは、公共交通利用時の手荷物へ意識をした方が良さそうだが、「日本全体の治安を破壊した」と言えるほどのインパクトはないといえる。

インバウンド増加を悲しむ人たち

昨今、インバウンド増加を嘆く投稿をよく見る。「犯罪が増加している!」「日本を安売りセール状態」といったものだ。

事実として特に窃盗が増加しており、彼らから見て割安かもしれない。しかし、全体論的にいえば、それでも「日本経済にプラス」と判断できるのではないだろうか?

だがいくら安くても、それだけで空前の売上や観光公害が生じるほど混み合わない。それは他の貧困国の観光事情を見れば答えが出ているはずだ。

前提として日本は魅力的であり、かつ安いから彼らも大挙しているのだ。加えて、昨今は円安が定着しつつあるもインバウンドは円買い圧力になるので、これはありがたいことである。実際、今や我が国における観光業は自動車産業に次ぐ第2位の「輸出産業」なのである。

確かに訪日外国人が増えすぎているのは事実である。ならば、観光地での売価や宿泊料を引き上げ、利用者の選別をすればいい。「不快だから外国人をいれるな」ではなく「訪日外国人の質を高め、さらに日本経済にプラスにできる戦略はどうすればいい?」と考える方が生産的だろう。

インバウンド増加を悲しむなら、それを止めることで日本経済へのネガティブインパクトと天秤にかけてからにするべきだろう。現在、観光業を失うことで、日本経済はネガティブな影響を受けることが避けられないだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。