中居正広さんのスキャンダルは、思わぬ展開になってきた。
これまで、フジテレビの社員が、中居さんと被害者が二人で会う段取りをしてきたと断定したところから、狂気の沙汰と思えるような10時間以上の記者会見に及んでいた。どこから見ても、人権侵害と言っていいような会見だった。どこのゴロツキが参加しているのだろうかと思えるような言動をしていた人もいた。
しかし、ここにきて、フジテレビの人はそれより以前に開催された中居さんの自宅でのバーベキューパーティーに関連しているだけで、和解金9000万円と噂される事件?が起こった時には関係しなかったようだ。
フジテレビの人が問題が起こった際のセッティングをしていたのかどうかで今回の問題の性質は大きく変わってくる。もちろん、和解金を払うような事案が帳消しになるわけではない。
会社ぐるみで起こった案件なのか、中居さんと被害者が二人で連絡を取った結果として起こった案件なのかによって、1か月以上の騒動の本質が違ってくる。
フジテレビにやましいところがなければ、二人の男女間の問題だと断言できたはずだが、それができなかったことで、1回目の意味不明な記者会見、そして、フジテレビ幹部の人権侵害と呼んでもいいような記者会見が引き起こされた。
多くの会社のテレビ広告の取りやめは何だったのだろうと思う。会社のイメージが悪くなるので広告を差し控えたのも、事実に基づいた騒動によるならば仕方がないが、今となってはこの空騒ぎは異常だ。
事実に基づかない批判はよくあることだが、SNSという道具が発達した今、虚偽が瞬く間に広がって真実がかき消され、社会全体によるつるし上げ状態となるので恐ろしい。バーベキューパーティーと問題となった案件がつながっているに違いないという憶測・思い込み(こちらの方が面白いのだろう)が根拠のないミスリードにつながった可能性が高くなってきた。
兵庫県知事のパワハラ問題もどこまでが事実で、どこからが虚偽かわからないし、最近亡くなられた県議に関しては、虚偽が行き過ぎると人の命を奪うことさえあると心に刻んでおく必要がある。人を貶めるような噂は背びれ尾ひれがついて面白おかしく拡散しやすい。匿名になると、心の中の醜悪さを包み隠さず、人を傷つけることなど想像もできないのだろう。
メディアにとって基本的な理念は事実確認だ。被害者の人権を盾に事実確認を怠れば冤罪は際限なく増えていく。
かつて、理化学研究所横浜研究所に在籍していた時に、委託企業がルール破りをして問題を起こしたが、新聞には「理化学研究所のセンターが問題を起こした」と見出しに大きく掲載されたことがある。新聞社に抗議した時、事実確認を怠ったことは認めたが、記事は訂正されなかった。メディアは人には厳しいが自分には大甘だ。
そして、笑福亭鶴瓶さんが、中居さんのバーベキューパーティーに参加していたことが報道されてから、寿司チェーンのコマ―シャルから姿を消したようだ。これを味噌と糞を一緒にするという。
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編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2025年1月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。