石破首相の訪米日程がいよいよ迫ってきました。2月6日から8日でトランプ大統領とは7日に会談します。正直、トランプ氏を取り巻く環境はあまり芳しい時期ではないのかもしれません。
関税問題でカナダとメキシコには一か月の猶予ができましたが、中国とは激しいバトルになり、春節明けの今日から大きく動くのではないかとみています。安っぽい言葉で言えば「混沌状態」の真っただ中にあるわけです。おまけにパナマのアメリカによる取り込みで中国の一帯一路からの離脱は中国には極めて屈辱的な事態とみています。国内外を含め、嵐の中でトランプ大統領としては金曜日は「心、ここにあらず」の状態かもしれません。
逆説的に言えばトランプ氏がらんらんと目を輝かせて日本ともガンガンやるぞ、という雰囲気がそがれているなら石破首相にとってはラッキーということにもなるかもしれません。ちなみに石破首相は記者団から訪中の話題に触れられ「信頼関係を高めるため最も良い時期に訪中する」と述べています。習近平氏と会うのは一番良い時期、トランプ氏とはあまり芳しくない時期となったのは皮肉とも言えるかもしれません。
さて、私が思いつく石破氏とトランプ氏の会談の主たるテーマです。
- アメリカ産LNGやシェールガス、石油など資源購入の拡大
- カナダ、メキシコへの関税実施の場合の日本の自動車産業への打撃に対する懸念表明?
- 日本への関税問題(トランプ氏は日本からの輸入品に関税をかける意図を示すか?)
- 日本企業による対米投資状況(孫氏の投資だけでなく、日本製鉄の案件にも触れるか)
- 日本と中国の外交関係に関する確認と議論
- 日米同盟の確認
- 防衛装備品の購入、防衛費負担の議論
- 北朝鮮問題、尖閣問題の確認、日本から見た韓国の状況?
- 日本への招聘(万博なら4月13日が開幕日だが安全対策上、好ましいとは思えない)
石破氏の性格からして本人がそのつもりがなくても観念的な話になりがちな気がします。より強固な日米同盟を確認し、両国間の安定的な発展が不可欠であると訴えるでしょう。トランプ氏は石破政権が中国寄りであり、同国と前向きな外交が行われていることは熟知している中で踏み絵を迫るかどうかです。トランプ氏は遠慮をせず、ズケズケモノを言いますので観念の話に対して実利の話として攻め込まれたとき、石破氏がどう対応するか、のらりくらりと返すのであればトランプ氏のハートはつかめないでしょう。
では日本政府の落としどころはどこにあるかですが、私は案外「ここは我慢の時」と思っている節があるような気がします。以前このブログでトランプ氏の賞味期限は実質2年と書いたことがあります。つまり1年目はガンガン攻め、2年目は中間選挙を意識し、アノマリー的には3年目は議会でねじれが生じてうまくいかず、4年目は退任後は再任がないことを見越されパワーが落ちる、というわけです。(万が一、トランプ氏が憲法改正してでも再選を目指すとしてもその時は82歳、いくら何でも現実性は低いわけです。)
とすれば日本政府としてはトランプ氏の火の粉が飛んでこない様に守りの姿勢に徹することも対策としては機能するのです。4年後の大統領が誰になっているかは全くわからないですが、トランプ氏はエキセントリックな人材と考えたほうが無難であろうと思います。とすれば現在進んでいる様々なトランプ政策がオセロゲームのように全部色が変わることも当然視野に入れなくてはいけないのです。
日本政府や日本企業が「トランプ氏がこう言った」として例えばアメリカに拠点を動かすとしてもそれは時間がかかり、ようやく稼働する頃にはトランプ氏はもういない、ということも当然起こりえるわけです。日本企業はそこは当然読み込んでいるはずで影響を受ける企業は冬の時代をどう耐え忍ぶか、そして万が一、4年後に状況が好転しないことを含めた対案も検討せざるを得ないとみています。
石破氏としては今後、日本の首相が誰になってもトランプ政権にアクセスしやすい第一歩を築くことに徹する程度でよいかと思います。個人的にはトランプ氏から無理難題を押し付けられ、持ちきれないほどのお土産をもらい、マイナス点になるぐらいならゼロ点でもよいと思っています。案外そのゼロ点を取るのすら難しいのがトランプ氏であるとも言えます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月5日の記事より転載させていただきました。