今度は関税関連のヘッドラインに翻弄された、やたらと長い1週間となった。
先週末からトランプ政権がメキシコ、カナダ、中国への関税発動を早々と決め、それらの国々も対抗措置を講じたため、またしても月曜は大幅下落で始まった。もっとも月曜中にはメキシコ、カナダの両国への関税発動を1ヶ月遅らせると発表したため月曜はボトムから大きく戻した。
ただ中国への関税については発動まで放置されたため、タイムリミットの火曜0時に一度はリスクオフになりかけた。決算はアルファベット、アマゾンに加えてAMDも大滑りしたが、指数には悪影響を与えなかった。
期待値が高いからか、EPSでビートしても売上げやガイダンスに不満が残れば大して上がらない決算期になった。ミスはしっかり罰せられている。
国債金利は恐らくタームプレミアムの再縮小で4.5割れまで低下している。発射台が下がって来たため、1月と違って雇用統計がやや強めに出ても2022年的なリスクオフには繋がらなかった。とはいえミシガン大消費者信頼感指数をきっかけにヘッジが入り始め金曜は寄り天となり、引けまで売り込まれた。
先週の記事で「6120は日次レジスタンスとなる。(それが)近い間は売り場となり得る」「週末は何があるのか分からない実感が戻ってきたため、今後も毎週金曜はヘッジ優勢になりやすいかもしれない」としていたが、「金曜の寄り付きで6120に近付いた」と二つ重なった場面でヘッジが入りやすいのは簡単に読めただろう。
今後も金曜にヘッジが入りやすいと学習する市場参加者は増えると思われるし、ミシガン大消費者信頼感指数のインフレ期待は意味のない経済指標であるが、この指標へのリアクションも碌でもないものになると思っておいた方がよさそうである。
2週目以降はCPIや小売売上高のような、どちらかというと金利上昇のきっかけになりそうな指標が並ぶが、発射台が低いのでアンチ・ゴルディロックスにはあまりならないだろう。
トランプ一期目の2017年年初もそんな感じだったが、ここまでは「金利低下、ドル安、S&P 500はオルカンをアンダーパフォーム、ビットコインは横ばい」と、トランプ政権を表現するコンセンサス・トレードはことごとくワークしていない。
DBの統合ポジショニングは12月FOMCで落としたところから復元している。
珍しいBofAのCTAモデル。やはり12月FOMCで一旦振り落とされた後に徐々にポジションを復元している。
機関投資家が身動きを取れない状態から降りるか降りないかというところで、アニマルスピリッツを発揮しているのは個人投資家である。Deepseekショックと関税ショックが作った窓は共に押し目買いによって押し戻されたが、下値での買い圧力の主体は明らかに個人である。
BloombergはこれをUnstoppable Retail Crowdと表現した。CNBCもRetai traders just can’t stop buying stocksと表現する。個人投資家の活発化はその流行りが分からない市場参加者にとって取り組みづらい時間帯であり、前回の記事でも触れたように、彼らは低くもないコストで大きなリスクを取っているので振り落としに遭いそうとすぐ心配になってしまうのだが、2021年のARKブームや2023年の0DTEブームでも個人投資家のアクティビティが活発化→クラッシュとなったわけではない。
ここ2週間に限っても個人投資家が大きなギャップダウンを押し戻し、いわば偽装横ばいを作ったことで日次ベースでリアライズドVolが上昇せず、CTAをはじめとする機械の逆流を防いだのは明らかである。代わりに個人投資家がYOLOしているミーム銘柄の急上昇を羨ましがって指数でも積極的にリスクを取ろうとすると途端に上値の重さに押しつぶされてしまう。
昨日今日の話ではないが、個別銘柄のレバETFの隆盛も際立っている。これらのファンドは個別銘柄が1日で大きく上昇した場合にレバレッジ調整の買い増し、大きく下落した場合にポジション削減を行いやすいと思われる。
NAAIMはやや楽観に転換しており、これだけ見ると放置上等だった先週対比では慎重になるべきである。
インサイダーは2週連続の強烈な売り越しが収まった。
テクニカル。6120レジスタンスは強烈にワークした。金曜高値の6100は次の日足レジスタンスとなる。サポートは引続き週足の5775と遠すぎて役に立たない。
Deepseekと関税と二週連続でショックがあり、今後も似たようなヘッドラインが控えていると思われるが、それらのバッドニュースがトレンドを作れるかどうかは引続き「S&P 500の1日2%以上の下げ」に結びついたかどうかで判断して差し支えないだろう。
仮に1日2%以上の下げが見られれば翌日の小十字に続き、押し目を拾えるのは三日目以降ということになる。逆に6100を上にブレイクした場合は一段と上値余地が広がるだろう。
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編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年2月9日の記事を転載させていただきました。