大阪維新の会の出した維新八策は、総花的で物足りない。地方分権や道州制といったありきたりなスローガンで国政に出ても、大した勢力にはならないだろう。それより今まで大阪で上げた実績をもとにして、都市から改革したほうがいい。
日本経済の直面している最大の問題は「デフレ」ではなく「低成長」であり、その根本原因は企業がもうかっていないことだ。おかげで図のように、アメリカの株価でさえ5年前の水準に戻ったのに日経平均は半減したままだが、企業買収は起こらない。一時「ハゲタカ」と呼ばれて恐れられた外資系ファンドが次々に撤退してシンガポールなどに拠点を移し、対内直接投資はマイナス(流出超)になっている。
日本企業が買収できないのは持ち合いが原因だといわれるが、英米でも敵対的買収には防衛策があり、ほとんどは友好的買収である。ところが日本では、友好的買収もできない。それは役員会や労働組合が反対するからだ。ニューズウィークにも書いたように、彼らはキャッシュフローを浪費して雇用を維持し、株主利益を犠牲にして従業員共同体を守っているのだ。これが株価の低迷する原因である。
その元をたどると、勤勉革命のエートスにたどり着く。これは意外に普遍的で、中国も東南アジアも基本的には勤勉革命の文化圏だった。「一所懸命」という言葉に象徴されるように、持ち場を守る勤勉革命のエートスは日本の「空気」に深く根ざしており、法律を変えただけで企業買収が起こるとは思えない。これは「解雇規制の緩和」だけで労働市場の流動化が起こらないのと同じだ。
こうした空気は「場」に依存しているので、都市空間を変える工夫が必要だ。法律を法律とも思わないで堂々と違法駐車している大阪には、自由都市の伝統がある。まさに都市の空気は自由にするのだ。維新の会も国政に出るより、法人税を廃止するなど尖った改革をやって外資を引きつけ、都市間競争に挑んでほしい。東京や名古屋なども合流して霞ヶ関を包囲すれば、国政も変わるかもしれない。