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John M. Chase/iStock
「2050年再エネ9割の未来」(安田陽著)を読みました。
「はじめに」に次のように書かれています。
本書では、「再エネの5つの神話を解体する①~⑤」という節も各章にちりばめて、次の5つの「神話」を解体していきます。
① 再エネはコストが高い?(2・5節)
② 再エネは未成熟?(3・5節)
③ 再エネを捨てるのはもったいない?(4・5節)
④ 再エネは環境破壊?(5・2節)
⑤ 再エネは不安定?(5・4節)このような科学的根拠が貧弱な噂レベルの言説や古い考え方に対して、本書は基礎理論や科学的根拠を提示し、国際的な合意形成の現場サイドからの情報も交え、バグを修正していきます。
この本を真面目に全部読むのは時間の無駄だと思うので、上記をメインにツッコみます。
少なくとも③以外は神話ではなく事実だと思いますが、一応読んでから否定しましょう。
① 再エネはコストが高い?(2・5節)
二章の最初に次のグラフを付けて「今ではむしろ再エネの方が発電コストが安く、競争力を持っています」と書いています。
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「2050年再エネ9割の未来」(安田陽著)より
こういうデタラメを書くから信用されないのですよね。
メリット・デメリットを正しく伝えた上で判断してもらうという気はサラサラないようです。
安いのならば、再エネ賦課金など不要なはずです。
また、フランスの安定した原発の電力と接続しているにもかかわらずドイツの電気料金がべらぼうに高いことからも嘘っぱちであることがわかるでしょう。
文献[1]からグラフを作ったと言っているので見てみました。
Renewable Power Generation Costs in 2023
p.38 に該当するグラフはありますが、これはLCOEをグラフにしたもので、太陽光・風力など基幹電源にはならない再エネに必要なバックアップ電源費用・蓄電費用・電力網の接続費用は含まれません。
完全な騙しです。
「基本政策分科会に対する発電コスト検証に関する報告」を見るとその辺のコストも載っています。
このことから「再エネはコストが高い?」は神話ではなく事実です。
② 再エネは未成熟?(3・5節)
太陽光・風力の発電効率に関しては多少の改善の余地はあるでしょうが100%は超えられないので、それだけについて言えば成熟したものと言えるでしょう。
仮に成熟した技術であるのならば、今の不安定・高コストの時点で再エネは使えないことになります。
少なくとも、蓄電技術は未成熟です。
トータルとして見れば未成熟なので、神話ではなく事実です。
③ 再エネを捨てるのはもったいない?(4・5節)
・捨てている部分が予備となる
・出力抑制(出力制御)は再エネのロスにおけるほんの一部に過ぎない
・系統対策、需要対策などで低減できる
だから問題ではないと言っています。
予備が欲しいのは基幹電源であって気まぐれで発電する再エネではない。
系統対策などは①で触れられていないコストなのですよね。
出力抑制される部分は、夜間・凪の時などの為に本来は蓄電してべきものです。
しかし、当たり前のように①でそのコストは発電コストに含んでいない。
話が矛盾しまくりです。
④ 再エネは環境破壊?(5・2節)
ヨーロッパでは法律で木を切り倒してソーラーパネルを設置することはできない。日本はその逆であり法律がだめであって、再エネが環境破壊なのではないと言っている。
これも騙しですね。法規制で設置場所が限られれば平地が少なく森林が多い日本では設置できません。
オーストラリア・カリフォルニアなど荒野が腐るほどあれば話は別だが、日本では環境破壊をしないと設置できないのですよ。
⑤ 再エネは不安定?(5・4節)
・電力システム全体で考えるべきで、再エネの個々の発電が不安定という話をしても意味がない
・そもそも需要は不安定じゃないか!火力だって予備率を設定している!
という論理のもと、不安定ではないと言っています。
アホですね。
火力で9割死ぬことは通常ないが、太陽光なら夜間10割死にます。
需要は不安定じゃないか!は詭弁も良いところ。需要が不安定なので出力調整できる火力で電力を調整しているのですよ。
曇っているのに90%の出力は太陽光で可能ですか?
最後に「海外ではビーガンむっちゃ流行っているんですけど・・・」というコラムについてツッコみます。
ビーガンが流行るのには科学的根拠があるそうですよ。
確かに、植物食の比率が高い方がCO2削減できます。しかし、子供のビーガンは栄養不足でありダメであることは科学的に明らかになっています。
非常に偏ったものの見方であり、詭弁を弄する著者らしいコラムだと思いました。
編集部より:この記事は晴川雨読氏のブログ2025年2月13日のエントリーより転載させていただきました。