公益通報制度の光と影?報復リスクと法的保護の狭間!

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兵庫県知事のパワハラ疑惑で関心が高まった「公益通報」。全国でトラブルが絶えないといい、公益通報者保護法で守られるはずの通報者が解雇されたケースも多発しています。

筆者は、労働者が会社と争うことはお勧めしていません。理不尽な扱いを受けたことに対する悔しい気持ちはとてもよくわかります。ただ、運よく復職できたとしても、その後に待っているのは茨の道です。

このような時の駆け込み寺として労基署が登場することがあります。労基署とは厚生労働省の第一線機関で、全国に321署あります。

法定労働条件に関する相談や、勤務先が労働基準法などに違反している事実に行政指導を求める申告を受け付けたり、定期的あるいは申告などを契機に事業場(工場や事務所など)に立ち入って監督・指導をます。

重大・悪質な事案については、刑事事件として取り調べなどの任意捜査や、捜索・差し押え、逮捕などの強制捜査を行い、検察庁に送検する司法警察事務も担っています。

そんな労基署について、使用者による不当労働行為の相談を何でも受け付けてくれる「駆け込み寺」であるかのようにアドバイスをしている識者がいますがそれは間違いです。

「労基署に駆け込め」とアドバイスされて、実際にそうしたらどうなるでしょうか。おそらく窓口で軽くあしらわれて相手にしてもらえないでしょう。

運よく監督官と面会できたとしても、対応は監督官のさじ加減ひとつです。労基署に持ち込まれる案件は山のようにあり対応しきれないことが原因です。

また、労基署が後ろ盾になり解雇の撤回を求めることはありません。違反があれば是正措置はするものの、解雇が有効か否かなどの判断はしません。労基署には司法警察としての権限がありますが、個別の事案については対処しません。

会社から退職を求められるような事態になったら、退職金などの面で有利な条件を引き出す交渉くらいにとどめ、次のキャリアパスを探したほうが生産的ではないかと考えています。

また、社内に情報が広まった場合、なんらかの報復が待っているケースが考えられます。本来、会社は報復をしてはいけないのですが、それは建前です。

懲戒、異動、降格、賃金カット、あらゆることを想定しなくてはいけません。どの手段をとっても、会社を相手に争うことになりますので、相当な覚悟が必要になってしまいます。

また、言い分は各々にあるものです。労働者側に言い分があるように、会社側にも言い分があります。それらをつき合わせれば、100%どちらかが正しいということはありません。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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