れいわ新選組はなぜ若年フリーターに受けるのか

このごろTikTokを開くと、必ず山本太郎の動画が出てくる。それもれいわ新選組の公式サイトではなく、匿名の支持者の投稿だ。大半は山本の街頭演説などを切り抜いただけだが、4万8000の「いいね」がついている。

@chigasaki_sarry_chan

#れいわ新選組 #山本太郎 #増税ダメ絶対デモ

♬ オリジナル楽曲 – 茅ヶ崎サリーちゃん – 茅ヶ崎サリーちゃん

おかげでフジ・サンケイグループの政党支持率調査では、30代でれいわ新選組が14.4%で国民民主党に次ぎ、自民党を上回った。NHKの調査でも、若年層では第3党である。

YouTubeでも5万回ぐらい再生されている。何がそんなに受けているのかと思って聞いてみたが、どれも話の中身は同じだ。

  1. 日本人はこの30年に貧しくなった。
  2. その原因は消費税の増税だ。
  3. 消費増税の目的は法人税の減税だ。

1は正しい。彼の指摘するように世帯所得の中央値が下がり、相対的貧困率が上がったことは事実だが、その原因は消費増税ではない。彼も認めるように法人税は下がったので、租税負担率は26.7%で、1990年とほぼ同じだ。上がったのは社会保障負担率で、1990年の約10%から今は18.4%になった。

国民負担率の推移(財務省)

 

ところが山本は、社会保険料にはまったくふれない。それは彼の支持層である若年フリーターが社会保険料を負担していないから、消費税以外の税は知らないのだ。

3は間違いである。法人税率は下がったが、法人税収は上がったのだ。もし法人税率が1990年の40%のままだったら、日本の税率は世界最高となり、企業は海外に脱出して成長率はマイナスになっただろう。

法人税率と法人税収(財務省)

法人税率を23.2%に下げても、産業空洞化は止まらない。その原因は人口減少・高齢化だけではなく、国内の生産性が上がらないからだ。それがこの30年の衰退の大きな原因だが、れいわ信者にはわからないだろう。

消費税を廃止したらどうなるか

山本太郎が首相になって消費税を廃止したら何が起こるか。税収は24兆円ぐらい足りなくなるので、その分は国債を発行するしかない。年間約170兆円の国債発行は約200兆円になり、国債は消化できなくなって暴落(金利は上昇)するだろう。

それを日銀が買うとマネタリーベースが激増し、激しいインフレが起こる。黒田総裁の時代には日銀が何をしてもインフレにならなかったが、今インフレは加速している。アメリカのように10%近くになってもおかしくない。

これがインフレ税である。フリーターの時給は実質1割下がるが、彼らは気づかないかもしれない。老人の貯蓄も1割下がり、年金も1割下がる。マクロ経済スライドを凍結すれば、現役世代の負担は軽減される。

そこで止まれば悪くないが、通貨の信認が失われると物価はコントロールできない。インフレ→円安→金利上昇→インフレというスパイラルに入ると、物価はトルコのように20倍になり、円は1ドル=1000円以下になるかもしれない。そういう世界を経験してみるのも悪くないが、最大の被害者はれいわ信者のようなプータローである。