薪ストーブ地獄の始まりと顛末②

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2016年の初夏

2016年の冬から始まった連日連夜の煤煙地獄は、その年の5月中旬、汗ばむ季節まで続いた。

それまで地域を覆っていた濁って燻った重たい空気が消え去った。

近隣の家屋はやっと安心し窓を開き換気ができ、洗濯物を外に干すことが可能となる。

これで煙を吸い込み咳き込んで苦しむことはなくなり、つかの間の平穏が訪れた。

しかしそれは淡く虚しい期待であった。

今度はチェンソーで造園廃棄木材を切り刻む大騒音が静かな地域にこだまする。

チェンソーの轟音は、朝から夕刻まで終日ということも多々あった。

毎週のようにそれは繰り返され、これが不定期的に秋まで続く。

きれいな間伐材とは言えない薄汚い廃木材が造園業者によって運び込まれる。

それを薪ストーブ家屋の住人がチェンソーで切り刻む。

それはこの年以降、毎年繰り返される定番騒音迷惑行為となった。

住宅地にあってはチェンソーの音は受忍すべき生活音とは言えない。

ここはキャンプ場でもアクティビティフィールドでもない。

そしてここは途上国でも重工業地帯でもない。

2016年の秋

10月中旬。秋晴れのまだ暖かい気温18度、清々しい秋の日。

近隣一帯の家屋は安心して窓を開け、洗濯物を外に干している。

子供たちは快適な環境下、外で遊んで秋を満喫している。

しかし突如、異臭が、焦げ臭い臭気が漂ってくる。

見ると、黒く不気味な煙突から灰色の猛煙が噴出している。

気の毒なことに何軒もの家屋の洗濯物はその場で燻製となったようだ。

その日以降、付近の家屋は秋から初夏までの間、洗濯物を外に干さなくなった。

薪ストーブが使用開始された日以降、重苦しい空気に切り替わってしまう。

これから来年初夏、GW明けまでは清々しい空気は残念ながらお預けとなる。

2016年12月

年末に近づき、1日の平均気温が10℃を下回る頃になると、煙の量が一層増加する。

大気逆転層が形成される気象条件になると煙害問題は深刻化する。

「熱い煙は常に上昇する」というのは真っ赤な嘘で、寒いほど煙は地上付近に溜まる。

目の前で見て体感しているからそれは間違いのない事実。

無風の場合は最悪で、煤煙地獄は途上国レベルを優に超える状況となる。

この脅威が先進国で発生していることに、政治家も研究者も誰も関心を持たない。

行政府は全て門前払い。政治家もこれを無視。研究者も無視。被害者は置き去り。

SDGsは何処に行ったのか、薪ストーブ業界に強く問い質したい。

12月から2月末までの期間は、薪ストーブの超ハイシーズンである。

気象条件を神頼みにする近隣住民。脱法発煙に対し、風向だけが唯一の救いとなる。

薪ストーブ家屋が風上に位置する風向にならぬようにただ祈る。助けは一切無い。

秋から初夏までは否応なしに天気予報の風向だけを無意識に注視することになる。

薪ストーブ家屋が風下になる幸運と、風上になる不幸。

薪ストーブは近隣住民たちを一方的に心身ともに追い詰めるAir Pollution Generatorである。

2017年の初夏

GW明け、8か月にわたる一方的で理不尽極まる煤煙地獄が終了する。

この毎年8か月にわたる地獄は、この先何年以上続くのだろうか。

こんな酷いことが先進国の住宅地で起きてはならない。

薪ストーブ煙害被害者はこの、偽の炭素中立を笠に着た悪事に絶望している。

しかし、だ。

筆者は実に興味深いものを発見したのだった。

(続く)


編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2025年2月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。