都議「裏金」収支報告書訂正は所得税逃れの虚偽記入:都議会自民党は一層窮地に

「自民党派閥政治資金パーティー裏金問題」に政治が大きく揺れた2024年が終わり、年が明けた早々、東京都議会の自民党会派で、政治団体の「都議会自民党」が政治資金パーティー収入など計約3500万円を会派の政治資金収支報告書に記載しなかったとして、会派の経理担当職員が政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で略式起訴されたことで、「裏金問題」が、今年6月に都議会議員選挙を控える自民党都議会議員に「飛び火」したことが明らかになった。

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【都議会自民党「裏金問題」、所得税納税をうやむやにしてはならない!】でも述べたように、国会議員の場合は、公設秘書、私設秘書等が複数いて事務所で政治資金の会計処理が行われているので、派閥から「還付金」「留保金」として供与された金銭を、政治資金として管理していたとして(実際に、そうであったかどうかは別として)、その金銭は「政治資金」であったと説明することは一応可能だが、都議会議員の場合、秘書の数も議員によって異なり、事務所による政治資金の収支管理がどの程度行われていたのかも不明であり、政治団体側からは「自由に使ってよい金」と説明されていたとされており、派閥から都議への「政治資金の寄附」というより、パーティー券販売に応じた報酬の性格が強かったと考えられる。

しかも、安倍派の政治資金パーティーのように、いったん派閥に納入した上で国会議員側に「還流」していたのではなく、すべて都議側が留保していたもので、実際に、都議個人が、政治資金パーティー券の売上の一部を個人の金と混同させていた場合が多かったと考えられる。このような資金の性格から考えて、個人所得に当たることは明白であり、納税をするのが当然だ。

会派の経理担当者の略式起訴以降、所属都議の方が、裏金についてどのような処理を行うのか注目していたが、政治資金パーティーで得た裏金の所得税の納税を行わないどころか、政党支部に入った政治資金であるように、政党支部の収支報告書を訂正し、所得税を免れようとしていたことが明らかになった。

2025年3月2日付け「しんぶん赤旗日曜版」が、「柴崎都議 取材後コッソリ削除」と題して、都議会自民党の裏金事件を受け、政治資金収支報告書を訂正した柴崎幹男都議の訂正が虚偽である疑いを報じた。これを受け、上脇博之教授は、3月3日に、柴崎氏のほか、都議会自民党の幹事長らを、政治資金規正法で東京地検に告発した。

都議会自民党の発表によると、柴崎氏は、2019年に131万円、22年に110万円の計241万円を、都議会自民党の政治資金パーティーでの売上の一部を手元に留保する「中抜き」の方法によって取得し、それについて、政治資金収支報告書には全く記載していなかった。

それを、柴崎氏が代表の「自民党東京都練馬区第11支部」(以下、「練馬区11支部」)では、1月23日付で収支報告書(22年分)を訂正し、都議会自民党から練馬区11支部に110万円の寄付があったと収入に追記し、その全額を、領収書の提出が不要な「経常経費」として使い切ったと訂正していた。

経常経費の内訳は、人件費が71万4000円、備品・消耗品費が8万7264円、事務所費が29万8736円。これらを足し合わせると、22年の裏金額110万円と完全に一致する。

そのような支出の記載について、しんぶん赤旗編集部から質問書の送付を受けた柴崎氏は、2月12日付で、収支報告書(21~23年分)を再び訂正。22年分の再訂正では、計110万円を支出したとする1月23日の訂正を削除し、23年分の収支報告書で、裏金の全額241万円を翌24年に繰り越す処理をしていた。裏金分を「経常経費」として使い切ったと「訂正」したはずが、その訂正自体を「削除」し、実際は1円も使わずに保管していたと再訂正したものである。まさに、「語るに落ちた」と言うほかない。

柴崎氏は、「中抜き」で得ていた裏金を、すべて個人の懐に入れていたのに、都議会自民党の政治資金パーティーの裏金問題が露見したことから、練馬区11支部への寄附として受け取って、経常経費として支出したように虚偽の訂正をし、質問状を受けて合理的な説明ができないことから、再訂正して全額翌年度に繰り越していたように説明した。

余りに不自然不合理な柴崎氏の訂正の経過は、柴崎氏が得ていた裏金が政治家個人宛であったのに、それを隠そうとして、一連の虚偽の訂正を行ったとしか考えられない。

上脇氏の告発状では、政治家個人宛の違法寄附にも該当するとされている。

確かに、「政治活動に関する寄附」であるとすれば、政治家である柴崎都議個人に宛てた寄附であることは明らかだ。しかし、果たして「中抜き」で得ていた裏金が、本当に政治資金に関する寄附であったのかどうかも疑わしい。「中抜き」で入ってきた裏金をすべて個人の懐に入れていたのであれば、むしろ、「政治家個人宛寄附」ですらなく、単なるパーティー券販売の謝礼であった可能性もある。

この場合は、「政治家個人宛の違法寄附」の問題は生じないが、柴崎氏の個人所得ということになり、所得税の申告をして納税する義務がある。それを、練馬区11支部への寄附として受け取って、経常経費として支出したように同支部の収支報告書を訂正したのは、収支報告書の虚偽記入の政治資金規正法違反に当たる。

元参議院議員の丸川珠代氏が安倍派から受け取った裏金の問題と同様に、所得税の課税逃れのための悪質な政治資金収支報告書虚偽記入罪の事案として、処罰を免れる余地はない。

上脇氏は、「都議会自由民主党」が寄附した相手方は“柴崎幹男個人”であり、131万円(2019年)及び110万円(2022年)はそれぞれ全額またはその一部を、同人の所得として確定申告する必要があるのではないかとして、刑事告発と併せて、管轄の練馬西税務署に情報提供も行っている。

このような柴崎氏の収支報告書の訂正と符合する政治団体都議会自民党の収支報告書の訂正が行われているのであるから、他の都議会自民党の都議も同様の方法で訂正を行った可能性が高い。

実際には、裏金が個人の懐に入っていたのに、それを政党支部宛の寄附であったように収支報告書の虚偽の訂正をして、所得税の修正申告も行わないで済まそうとしているとすれば、そのような「都議による悪質な所得税逃れ」は、東京都民にとって、到底許されるものではない。

今年6月の都議会議員選挙において、自民党が、昨年の衆議院議員選挙以上の大逆風を受けることは確実だ。