賃上げ続くも1月の実質賃金はマイナス:減税実施すればさらにインフレに

厚生労働省が10日に発表した1月の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.8%減少しました。

参照:実質賃金1月1.8%減、3カ月ぶりマイナス 物価高響く 日経新聞

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物価の上昇に対して賃金の伸びが追いつかず、実質賃金は3カ月ぶりにマイナスとなりました。その減少幅は、2024年3月以来の大きさとなっております。1月の消費者物価については、実質賃金の計算に使用される「持家の帰属家賃を除く総合」が前年同月比で4.7%上昇しました。

実質賃金は3カ月ぶりにマイナスとなりましたが、昨年11月・12月は冬の賞与の影響で一時的にプラスとなったに過ぎません。賞与を除く給与の実質賃金は3年以上にわたり減少が続いており、物価上昇に対して賃上げが追いついていない状況です。

コメを始め食品価格の高騰も家計を直撃しています。日本の米価は非常に高く、高騰前からすでに国際流通価格の数倍となっています。海外産の安価な米を購入しようとしても、280%の関税がかかるため、結果的に高額になってしまいます。農業に限らずこういった行政を通じた中抜きが横行しています。

日本経済の問題は、もはやデフレではなく物価の上昇に対して賃上げが追いつかず実質賃金が減少し続けていることです。

日本ではこの30年間で医療・介護の労働人口が6倍に増え、生産性の高い産業が圧迫されています。賃金の多くが社会保険料や税金に充てられ、実質的に準公務員が1000万人増加し、日本の貧困化が進んでいます。人口減少や高齢化が進み、エネルギーや食料、ソフトウェアも輸入に依存する中、この状況を維持できるのでしょうか。

減税を実施すればさらにインフレが進み、年に数万円程度の減税効果はすぐに相殺されてしまう可能性があります。今、本当に減税を行うべき状況なのでしょうか。

現在の賃上げは生産性の向上によるものではなく、価格転嫁によって実現されているため、物価上昇が賃金の伸びを上回ることで実質賃金が上がらず、結果として実質消費が減少するという“悪循環”が生じています。