それにしても奇妙なことをしたものです。石破氏が自民党1回生15人と食事会をするにあたり一人10万円の商品券を配ったというもの。全ての議員は受領を拒否したというのですから議員1年生の方がしっかりしていたとも言えそうです。石破氏は「法に触れるとは考えていない」と述べていますが、私はグレーだと思います。それ以上に野党の追及と自民党内部の「石破下ろし」の絶好のネタになってしまいました。

石破首相 首相官邸HPより
この訳ワカメの「10万円配布配布未遂事件」でそもそも不安視されていた石破政権の余命をぐっと縮めたと考えています。私の見方は最も早いシナリオでは2025年度予算を通したところで辞任するのではないかとみています。(遅いシナリオは参議院選後)
首相就任時から人物像や事前人気の高さに対してご本人の能力とセンスと政治家としての戦略性が欠けていたのは事実です。私の家の隣に住む庭いじりするおじさんならとても良い方だと思います。しかし、日本国を代表する人物としてはいかにも迫力がなく、手腕に欠けているように思えます。
語弊はありますが、日本のトップなのに国民に対して宗教家が説法を唱えているように見えるのです。宗教家でもあった稲盛和夫氏はビジネスでは縮み上がるほど厳しくその鍛え抜かれた精神力と迫力でJALを再生したケースとは大違いなのです。トランプ大統領との会談を無難にこなしたと評されていますが、「無難」ですので難があるところや骨っぽいところは一切避けたともいえ、腫れ物には一切触らず、ニコニコしながら「ごきげんよう、さようなら」だったと私は見ていました。もちろん一遍こっきりの会談ならそれで十分。そして何度も首脳会談を重ねることがないだろうのもトランプ氏側がそれなりに分析していたでしょう。
さて、では石破氏を引きずり下ろすとして次はどうするか、これが問題です。3月10日に麻生、岸田、茂木各氏が3時間にわたる会食をしています。NHKの報道によると話題は参議院選から政権運営、党内情勢、更には企業献金問題にまで触れたようです。私はそれよりもこの3人が久々に集まったというのが注目点で党内でいよいよ反旗を翻す準備を始めたのかな、と思います。ただ、この会食時点では二転三転した高額療養費問題をきっかけに集まったわけで、今回の「10万円配布未遂事件」により協力体制をより堅固なものにするのでしょう。
ではお前はどう見ているのか、と聞かれるとこれはなかなか難しいです。私は根本に自民党の時代ではないことと自民を割ることがボトムラインとしてあるわけですが、そこに至るにはもう少し時間がかかるかもしれないという前提で目先、つまり参議院選までを考えてみます。
石破政権が参議院選挙までに崩壊したら次の総裁、どうする?が注目点だと思います。私はずばり岸田氏が短期つなぎ役の首相に押される公算は大いにあると考えています。理由はシンプル。「失敗したくないなら経験者を持って来い」なのです。

岸田前首相 自民党HPより
この10数年、ハリウッドでは大ヒットが出ず、過去のヒット作品の続編でつないできた経緯があります。理由は映画への投資家がリスクテイクできなくなったのです。日本のアニメも実はそれに近いところがあり、今更これ、というケースは多々見られます。同様にアメリカではトランプ氏が首相に返り咲きました。これも氏の手腕の是非はありますが、過去経験者故に予想できるものがあるのです。日本でもそうです。安倍氏は返り咲きでしたよね。民主党政権で日本がぐちゃぐちゃになった中、この難局は安倍氏にしか託せないという判断でした。
皆さんは岸田氏というと「えぇー!」というでしょう。でも岸田氏の在職日数は1000日を超え戦後の首相では長命だったのです。手腕はわかっています。他に安心安全で政策運営に慣れているめぼしい候補者がいなければ消去法的に岸田氏はアリでしょう。20-30年前に比べはるかに複雑怪奇になった日本を取り巻く内外の環境に対応できる首相の器がいない、ということです。
参議院選は確かに相当の混戦が予想されますが、自民が底抜けになるほどの負けは喫しないとみています。理由は野党に政権を全うできるところがないからです。劇場型ならば国民民主のように一点突破で人気が上がることはあるでしょう。しかしそれは私から見ればフェイスブックの「いいね」でしかなく、玉木さんが日本丸の船長だったら私は下船します。それは経験十分な船員がいないからです。
日本国民はそれでは満足しないでしょう。私が自民の時代でもなく、自民を割るという意味は自民所属の中枢メンバーが野党の一部と超党派的な組織を新たに作り、自民に代わり日本のコアとなる「右翼ではない保守の政党」を作ればよいと思っています。日本の政治家にはしっかりした人が与野党に数多く所属しています。昭和の政治スタイルから離れ、現代にマッチした政党を立ち上げ、政治家の英知を集めた日本を担える組織を作る、これができれば日本は踏み出したな、と自信を持って言えるでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月14日の記事より転載させていただきました。