インバウンドが広がれば日本の外食の割安感は消えていく

国内のホテルの宿泊料金が急激に上昇しています。コロナ禍の時は1万円以下だったビジネスホテルが場所によっては2万円を超えて3倍以上になっています。高級ホテルも5万円程度だったところが15万円以上になっており、もはや自腹で泊れるレベルではありません。

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その原因の1つは言うまでもなくインバウンド需要の増大です。日本人の旅行需要がアフターコロナで高まった上に、来日する外国人旅行者が大幅に増えて、ホテルの需給が一気に逼迫し、価格上昇につながりました。

このような動きがこれからは外食業界にも広がっていくことが予想されます。

日本の外食は海外に比べ高品質で価格が安いというのが定説です。ファストフードでは特に顕著で、ワンコインで吉野家の牛丼のような完成された味わいの食事ができるのは先進国では日本くらいです。

これまでファストフードは価格の引き上げによる客離れを恐れ、料金の引き上げに及び腰でした。しかし、原材料費の高騰や人不足による人件費の上昇によって企業努力によって価格を抑えるのは限界に来ています。

そんな中、外国人観光客は日本のファストフードが値上げをしたとしても、元々の価格が自国より安いのでそれほど気にすることは無く利用すると思います。

値上げをして日本人の利用者が少なくなったとしても外国人が代わりに利用してくれれば、ファストフード店は売上を減らすことなく利益を確保できます。

ラーメンには「1000円の壁」というのがあって、値上げに慎重なお店が多いと言われています。しかし一方ではインスタグラムなどで人気化して外国人が大挙して来店するようなお店では1500円から2000円程度の価格でも集客ができているのです。

日本人だけを相手にしている低価格のお店は値上げすればメインの顧客を失ってしまいます。しかし、インバウンドも取り込んでいるお店であれば外国人価格で商売をすることができるのです。

高級店は価格に対する需要変動が小さく、外国人がいなくても価格引き上げが比較的しやすいと言えます。既に多くのお店の飲食代が上昇しており、価格のレンジが変わってしまいました。次は低価格のファストフード店の番です。

外国人観光客が牛丼チェーンやラーメンチェーン、回転寿司といったファストフードに普通に行くようになれば、価格上昇による高価格に抵抗の無い客層が増えていくことになり、日本の外食価格が海外に近づいていくことになるでしょう。

牛丼1000円、ラーメン2000円が当たり前の時代は、すぐそこまで来ているのです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年3月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。