上海歌舞団の「朱鷺」と華人ピアニストの大活躍

上海歌舞団の「舞劇『朱鷺』-toki-」の民音公演にお誘いいただいて観劇して感じたことと、最近、勢いのある華人ピアニストの話です。

「舞劇」というのは、京劇や武術、中国古典舞踊、琵琶・二胡・笛子など伝統楽器など中国風のテイストを加えた中国風バレエで、バレエでのポワントやターンナウといったアクロバティックな表現はなく、武芸由来の身のこなしや中国舞踊の身韻と呼ばれる動作などに重点があります。また飛び跳ねるより、姿勢が低いことが多いように見えました。指を使った表現はバレエにはあまりありませんが、舞劇にはあります。

「舞劇『朱鷺』-toki-」は『白鳥の湖』の現代中国版と言った趣です。筋書きは第1部では、朱鷺(トキ)と人間の青年との儚い愛の物語を描きます。朱鷺(トキ)の仙女・ジエと村の青年・ジュンが出会い恋に落ちる。しかし、ジエは人間の世界で生きていけず、ジエを守ろうとするジュンの葛藤が白鳥の湖風に展開されていきます。

第2部は、コンテンポラリーダンスが中心で、環境破壊が進んだモノクロの世界で今にも息絶えそうなジエの苦しみと、を助けようともがくジュンの苦悩、やがてジエは死んでしまいます。そして、年老いたジュンは博物館で絶滅した朱鷺の剥製のなかにジエをみつけ、その愛の力で朱鷺たちはよみがえり大自然の中に飛んで行くといった筋書きです。

2014年のプレビュー上演会には、三笠宮彬子さまや安倍晋三首相もご覧になりました。欧米人にも分かりやすい仕立てで、政治的な対立はともかく、中国文化は西洋でも受けて順調に進化し育っている印象です。

日本舞踊や能、浄瑠璃などを採り入れた舞踊劇などあってよいようにも思いますが、西洋のものに和風テイストを加えるのは日本人は得意ですが、日本のものを西洋風にするのは、あまり得意でありません。

服装でも、チャイナドレスは、中国服を洋風にしたものですが、和服をもとに活動的なジャパニーズ・ドレスなど開発すれば、絹産業の助けにもなると思って昔から提案しているのですが、嫌なようです。

たとえば、男性用の夏の涼しいシルクの礼服などつくったらいいと思うのです。東南アジアにはパテックというのもありますし。

それから、最近は華人のクラシックの音楽家が大活躍です。古いところでは、チェリストのヨーヨー・マがいますが、彼はフランス生まれ米国育ちですから少し別です。とくに、多いのがピアニストです。

華人のピアニストというと、旧体制で育った世代にも、ショパン・コンクールで3位になったフー・ツォンがいました。

ランランは現代最高の人気ピアニストの一人ですが、瀋陽の生まれで、15歳から米国のカーティス音楽院で教育を受けています。満族出身で中国民謡をアレンジして弾いたりもします。ショパンを得意としています。

ユンディ・リは重慶生まれで中国で教育を受けてショパン国際コンクールで優勝し活躍しています(香港市民。中国政府から買春容疑で処分)。

露出度の高いステージ衣装と即興性の強い演奏で人気沸騰のユジャ・ワンも北京生まれで15歳からカーティス音楽院です。ラフマニノフやプロコイエフに定評があります。

ほかに、チェン・ツォン(上海)、フランク・ワン(北京)、チャン・チン(台湾)ファン・ビン(武漢)など。打楽器の得意な中国人はピアノに向いているようです。

このようにクラシック音楽での華人の活躍をみていると、西洋文化のなかでの日本人の優位というのも崩れてきた感があります。これは、いろんな意味で残念ですし、外交戦略としても残念なことでもあります。