ネーミングもオリジナリティあふれる名古屋めし「あんかけスパゲティ」

3月23日、名古屋駅にやってきました。福岡に異動して初めての地元帰還です。福岡に異動するとき、名古屋で一緒に仕事してきた仲間から「いやー、福岡いいですねぇ。ご飯おいしいですよねぇ。」といわれ見送られました。

福岡はご飯がおいしい。それは否定することはないと思います。

ただ、わたしは愛知県民。自称わたしの血液の半分は赤味噌でできています。

福岡めしもうまいですが、名古屋めしはそれに劣らずうまいです。

名古屋めしは「味噌かつ」「きしめん」「味噌煮込みうどん」「ひつまぶし」。いろいろあるんですが、これらは最悪愛知県にいなくても食べることができます。今回は愛知県にいないとなかなか食べることができないものを食べることにしました。

それがあんかけスパゲティ!トマトベースを胡椒で味付けをした、中華餡のような粘り気のあるソースを油で炒めた太麺パスタに絡めた愛知県独特の料理です。1960年代に今も栄4丁目にある「そ~れ」に勤めていた横井博さんによって考案されました。

1980年代まではあまり人気は出ず地元で知る人ぞ知るメニューにすぎなかったのですが、名古屋めしブームに火がついた2000年ごろから脚光を浴びるようになり、今では全国でも知られる名古屋めしラインアップのひとつに数えられるようになりました。

今回は行ったのは名古屋駅内に店を構える「チャオ」さん。名駅に来るとかなりの確率で来店するお気に入りの店です。

あんかけスパゲティの特徴は先ほど述べたとおりですが、メニューの豊富さも特徴のひとつです。それも独特のネーミング。通い詰めた人じゃないとマスターすべてマスターすることはできません。

ミラネーズ「ウィンナー、マッシュルーム、ベーコン、ハム」と説明はあるんですが、ミラカンは「カントリー、ウィンナー」という説明。そもそも「カントリー」ってなんやねん。

解説すると「カントリー」は野菜炒めが乗ったスパゲティ。これに「ミラネーズ」のウィンナーがプラスして乗ると「ミラネーズ」+「カントリー」で「ミラカン」です。まさにここでしか使わない造語。名古屋に来てあんかけスパゲティのお店に入り「ミラカン」を頼んだらもうこれであなたも名古屋通です。

ちなみにミラネーズはミラノ市とは無関係。スパゲティがイタリア料理だからつけたネーミングで、これはナポリタンがナポリ市と無関係なのと同じです。

ちなみにミラカンのほかにも、

シシリアン=イカやタケノコを炒めたものを乗せたもの
コルシカン=小エビやアサリを入れたオムレツをトッピングしたもの
バイキング=白身魚フライ、目玉焼き、ウィンナーをトッピングしたもの

など、説明を見なきゃわからないネーミングの連続です。面白いのはチャオだけがこのネーミングを使っているのではなく、ヨコイもそ~れもほかのあんかけスパゲティを提供する店でも総じて共通した名前を使っていること。

オリジナリティあふれるネーミングですが、あんかけスパゲティ業界ではどこでも通じる共通語なのです(一部オリジナルアレンジはあります)。からあげ、ハムエッグなどわかりやすいものもありますよ!

というわけで私も福岡では食べられないあんかけスパゲティをいただくことにします。通常はお皿で来るのですが、オプションで、名古屋名物鉄板イタリアン(ナポリタンを鉄板の上で盛り付け、フチから溶き卵を流し込んだもの)風にしてもらいました。

カツレツとコーンの乗ったこちらのお名前は「コートレット」。フランス語の切り身肉料理を意味するcôteletteに由来し、カツレツの語源になっています。久しぶりのあんかけスパゲティ、トマトソースの甘酸っぱさと少しアクセントの効いた胡椒辛さが美味。食べなれていない他の地方の人の評価は分かれるところですが、愛知県民にはなじみのある味です。まだ試したことがない方。名古屋に来たらぜひ一度試してみてください。

別の日に戴いた「からあげカントリー」。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。