大阪が世界的観光都市として京都や東京より人気な理由

古地図と古写真で楽しむ 大阪歴史さんぽ』(TJMOOK)というムック本の編著を担当した。4月3日発売ですでに予約は始まっている。

本書では、水の都・大阪を形作った水の流れと地形の変遷、豊臣秀吉による大坂城の築城(難波京・石山本願寺跡に建設)、江戸時代に「天下の台所」と呼ばれた商都としての大阪、そして日本一の大都会と称された戦前の大阪といった内容を扱っている。

大阪について書籍を執筆することは以前から希望していたが、東京や京都に比べて全国的に売れるテーマとはされず、なかなか実現に至らなかった。しかし、大阪・関西万博の開催を控え、国際的な観光地としての地位も確立された今、ようやく実現することができた。そこで、本書で展開した世界都市としての大阪についてエッセンスを紹介したい。

bee32/iStock

大阪は、「一度は訪れたい観光地」「住みたい街」として、世界の中でも高い評価を受けている。東京や京都よりも高くランクづけされることも少なくない。

インバウンドが本格化した2018年度には、高島屋百貨店の難波店(登記簿上の本店)の売上が、終戦直後の1952年以来、66年ぶりに東京・日本橋店を上回った。

その後、新型コロナウイルスの影響で一時的に減速したが、現在は再びインバウンド需要が回復し、逆転現象が再び起きている。

外国人観光客に大阪の魅力を尋ねると、「活気があり楽しい」「新旧の文化がバランス良く存在している」「都心機能がコンパクトにまとまっており、高低差が少なく歩きやすい」「東京と同様の高級ブランドが揃っており、敷居が高くない」「食べ物が安くて美味しい」といった声が多く寄せられる。

観光ルートとして特に人気が高いのは、難波→日本橋→黒門市場→心斎橋→道頓堀と続く「ミナミ」の盛り場である。

「キタ」は大阪駅のある梅田一帯を指し、阪急百貨店などの商業施設、北新地の歓楽街、中之島・堂島のビジネス街、高級ホテルが集中している。大阪城も至近にあり、大川(淀川の旧本流)でのクルーズも楽しめる。人気テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」も、大阪駅から20分余りの距離にある。

興味深い点として、値切り文化が楽しいと感じる観光客が多く、とくにアジア諸国からの旅行者にその傾向が見られる。近隣諸国からは東京よりも地理的に近いことも、大阪の魅力の一因である。

大阪の街を高所から見渡す展望スポットとしては、かつては通天閣や大阪城が主流であったが、現在では日本一の高さを誇る「あべのハルカス」や、名建築として名高い「梅田スカイビル空中庭園展望台」が人気を集めている。

歴史都市としての大阪も、東京や京都に劣らない。大阪には何度も都が置かれた歴史があり、京都よりも古い由緒を持つ。江戸もまた、豊臣秀吉が大阪の地形に倣って徳川家康に命じて築かせた都市である。

江戸時代には京・江戸と並ぶ三都の一つとされ、昭和初期には東京よりも人口が多く、世界第六位の人口を誇る大都市であった。日本の大企業の多くが大阪に本社を構え、あるいは大阪を発祥の地としている。

住友グループ、三菱銀行、丸紅、伊藤忠、日本生命、パナソニック、シャープ、サントリー、大丸、高島屋、ジャスコ、ダイエー、野村證券などが該当する。五大全国紙のうち、朝日新聞・毎日新聞・産経新聞は大阪発祥である。

スポーツでは、高校野球の甲子園、ラグビーの花園競技場が全国大会の開催地となっている。芸能分野では、人形浄瑠璃の「文楽」、吉本興業のお笑い、宝塚歌劇団などが大阪文化を代表している。京セラドームでは、国内外の人気アーティストによるライブ公演が行われている。

「大阪は東京のまねをしても意味がない」といわれることがあるが、アミューズメントやショッピングの面では東京とほぼ同等の体験が可能であり、混雑も少ないため、西日本のみならず東京からも多くの来訪者を集めている。

料理においても、大阪は多彩な魅力を有する。たこ焼きなどのB級グルメも人気だが、高級和食もまた大阪で発展したものである。日本一の高級料亭と称される「吉兆」も、大阪高麗橋の本店から全国にチェーンを展開している。

大阪は日本で最も在日韓国人が多く住む都市であり、韓国焼き肉も半島から伝わったものではなく、大阪の鶴橋などに住む在日コリアンによって考案された料理である。

1970年には万国博覧会(大阪万博)が開催され、大阪は大きく飛躍した。そして2025年には再び大阪・関西万博が開催される予定であり、統合型リゾート(IR)の開業も控えている。欧米から見れば東京も大阪も同じように感じられるが、中国や韓国からは距離的・費用的に大阪の方が近く、より利便性が高いという点も強みである。

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