黒坂岳央です。
40代の今、過去を振り返って「若い頃にやっておいて本当に良かった」と思えることはいくつもある。その中でも、特に重要だったと感じるのが「20代でたくさんのバカを経験しておく」ということだ。
年齢を重ねるごとに、社会からの期待値はどんどん上がっていく。「このくらいできたり、経験して当たり前」「冷静で落ち着いていて当然」といった、暗黙の要求水準が年々厳しくなる中で、少しでも世間の常識から外れると「非常識だ」「狂っている」とすら言われかねない。
だからこそ、「まだ若いから仕方ない」で済まされる人生の前半で、思い切り“バカ”をやっておくことには大きな意味がある。若い頃の失敗は、自己理解を深め、将来の選択肢の取捨選択を明確にし、感情のコントロールにも繋がってくるのだ。

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なぜ人は中年で狂うのか?
「狂う」という言葉は少し過激かもしれない。だが、これを「中年の危機(ミッドライフクライシス)」と置き換えれば、多くの人に心当たりがあるはずだ。
仕事一筋だった人が、突然バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥って退職・引きこもりになる。推し活が高じて生活費を注ぎ込み、金銭的に破綻する。あるいは家庭を持ちながら不倫に走って信頼を失う、ネットでの誹謗中傷で訴訟される。このような転落劇は、決して珍しくない。
心理学的にも、中年期は「人生の棚卸し」を行いやすい時期とされる。過去の選択や現在の立ち位置に疑問を持ちやすく、「このままでいいのか?」という漠然とした不安に襲われる年頃だ。
こうした不安から、「こんなはずじゃなかった」「このまま年を取るだけの人生に耐えられない」と、感情が不安定になり、時に突発的な行動に走ることがある。まさに“人生で最も惑いやすい年代”と言えるだろう。
20代で失敗しておけば後悔しない
筆者は10代、20代は顔から火が出そうな黒歴史を山ほど持っている。
中学、高校はほぼいかずにゲーム三昧。
派遣の仕事で得たお金で全国を旅行しまくりで貯金ゼロ。
仕事では上司に嫌われて首に。
ネット掲示板でケンカをして管理人に厳しく叱られる。
後輩を信じて借金に応じたら持ち逃げ。
実らない一方的な恋愛も数しれず。
宗教やネットワークビジネスの勧誘で軟禁される。
他にも挙げだしたらきりがないほど失敗だらけで、およそ当時の若い人がやるであろう失敗の多くを経験した。
だが、そんな痛みを通じて得たのは、「これは自分には合わない」「二度とやらない」という確固たる“自分軸”だった。だから今では、「新しいことに興味はあるけど、怖くて踏み出せない」と迷うことがほとんどない。
よく言われる「元ヤンキーが落ち着いたいい父親になる」現象のように、若い頃に“やりきった感”があると、大人になってから自然と落ち着いていられるのだと思う。
許される年齢の間に失敗をしておけ
人生の前半戦は、言ってみれば“ボーナスタイム”だ。多少の失敗は許されるし、時間が経てば笑い話にもなる。だが、同じ失敗でも40代を過ぎてからでは許されないことが多く、信頼も一気に失うリスクがある。
人間は「未経験のこと」をどうしても試したくなる生き物だ。しかし、何歳でやるかによって、その結果は大きく変わってくる。だからこそ、若いうちに経験しておくべきなのだ。
もし今、あなたが20代や30代前半なら、ぜひ“バカ”なことをしてみてほしい。常識を破ってもいい。失敗しても構わない。それはあなたの人生における“予防接種”になる。
◇
中年以降を健やかに、そして冷静に生き抜くためには、若いうちにあえて“狂って”おくことが大切だ。失敗して痛みを知り、自分に向いていないものを知り、迷わない自分を作っておく。これはビジネスにおいても、人生そのものにおいても、大きな資産となる。
「若気の至り」は、若いからこそ許される。だからこそ、あなたがもし今その“特権”を持っているなら、迷わず使ってほしい。それが、将来を支える武器になるのだから。
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