消費減税は政局の焦点になってきたが、世論調査では圧倒的に減税派が多い。どこの社でも6割を超え、特に気になったのは、NHKの調査では40歳未満で消費減税+廃止が75%と、圧倒的な支持を得ていることだ。

これはSNSの影響だろう。XでもYouTubeでも、減税派が圧倒的だ。TikTokには財務省解体や消費税廃止やれいわ新選組の動画があふれている。
超長期国債の金利は急上昇(価格は暴落)
彼らは減税の財源をどうするつもりなのか。どうも「赤字国債を発行すればいい」と思っているようだ。国債が増えても「借り替えればいい」というのは、彼らの生きてきた時代のほとんどが、ゼロ金利だったからだろう。
だがきょう行なわれた30年国債の入札では、2.961%という史上最高の利回りをつけた(落札価格は最低)。これは超長期債に買い手がつかないことを示している。特に市場の半分以上を占める海外ファンドが、日銀の介入しない超長期債で空売りをかけている。

30年債の残高は149兆円。これに3%の金利がつくと、毎年4.5兆円の利払いが発生する。国債の残高は約1100兆円だから、金利が平均3%まで上がると毎年30兆円以上の利払いが発生し、一般会計予算の3割が金利に消えてしまう。
日銀が国債を買い取るとインフレが悪化する
消費税を5%下げると毎年12.5兆円の国債発行が必要だが、これは今年度の新発債22兆円の半分以上であり、債券市場では消化できないので金利は急上昇するだろう。
石破首相は国会で「そういう(消費減税という)主張をする方々は、金利のある世界を甘く見ていないか。低金利やゼロ金利の時代が続いたので、感性が鈍くなってしまったのではないか」と答弁した。
これは…
石破総理、ズバッと言ったわ「財源を赤字国債発行で賄うべき」とする主張に対して
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石破総理
「そういう主張をする方々は、金利のある世界を甘く見ていないか」「低金利やゼロ金利の時代が続いたので、感性が鈍くなってしまったのではないか」 pic.twitter.com/RcGBq4VBqk
— Chum(ちゃむ) (@ca970008f4) May 12, 2025
買い手のつかない国債は、日銀が買い取るしかない。これは2022年末の黒田日銀と海外ファンドの戦いと同じである。日銀が円債を買う資金は無限にあるが、買い取りで大量のマネーが供給され、インフレが起こる。

このときは日銀が約23兆円のマネーを供給したため、円安もあいまって消費者物価指数(東京都区部)は4.2%と急上昇した。日銀は結局、YCC(長短金利操作)の目標を修正し、2023年には事実上YCCをやめた。
問題は日銀の財務ではない
今後、海外ファンドがアタックして来るときは、こんな規模ではすまないだろう。危険なのは国債の暴落で政府の信認が毀損され、トラスショックのような混乱が起こることだ。日本の財政状況は、2022年のイギリスよりはるかに悪い。
日銀が国債を買い取ると評価損で債務超過になるおそれがあるが、日銀の資産は時価評価しないので大した問題ではない。日銀当座預金と逆鞘になると危険だが、ETFの含み益があるので資金繰りは心配ない。
問題は金融村である。銀行や生命保険は日銀の500兆円とほぼ同額の資産をもっており、その大部分はゼロ金利の国債である。長期金利が上がると国債価格が下がり、巨額の評価損が出る。40年債の価格は半分以下になった。
40年国債(13回債)の価格の推移。価格の低下の激しさが分かります。 pic.twitter.com/xFQdmJyIbg
— 服部孝洋(東京大学) (@hattori0819) May 9, 2025
国債バブル崩壊は確率の低いテールリスクだが、インフレの最中に国債を大量発行する政府は(トラスと同様)頭がおかしいと思われてもしょうがない。1990年代の不動産バブルの清算では約100兆円の資産が失われたが、国債バブルの崩壊で失われるのは資産だけではなく、日本政府への信頼である。






