学歴コンプレックスは男の病?男女の思考差で文章はこう変わる

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その文章は、男性読者に向けたものですか? それとも女性読者に向けたものですか? もし、あなたが書き手として成功したいのなら、男性と女性の思考の違いについて理解したほうがいいでしょう。

「学歴コンプレックス」という言葉があります。学歴は一生ついてきます。でも、学歴で人生が決まるわけではありません。学歴コンプレックスに悩むのは圧倒的に男性です。

一方で、女性で学歴コンプレックスを持っている人はほとんど見かけません。今の男性社会では、「頭脳明晰とか東大出身という学歴はかえって邪魔になる」と考える女性も少なくありません。

男性は過去の失敗にこだわります。大学の偏差値などにこだわるのも同じことです。大学の偏差値が低いのは「男性としての能力が低い」とレッテルを貼られたことと同じです。会社組織に所属している人ほど、学歴や偏差値を引きずります。

また、女性よりも男性のほうが過去の恋愛(失恋)を引きずる人が多いのは、「男性としての能力が低い」ことと同じだからでしょう。

女性は争いごとを嫌い、共感を大切にします。学歴が邪魔になることはあっても、男性の場合のような意味ではありません。

男性は物事のプロセス(過程)よりも「結果」がすべてです。仕事に一度失敗しただけで、ずっと引きずって落ち込んでしまいます。それに対して女性は、プロセス重視ですから、過程における「楽しさ」「面白さ」「やりがい」といった感情を揺さぶられることに関心を抱きます。

また、男性の会話の中心は「自分」であるのに対して、女性は「みんな」になります。女性は結果にこだわるよりも、「みんなが共感したか」「みんなが喜んだか」といった視点を重視します。

男性は、一つの結果がダメだったら、すべてが台無しと考えますが、過去から学ぶことができます。人生にはいくらでもチャンスがあることを理解して切り替えることができます。

このように男性と女性では「感じ方」や「求めていること」がまったく異なるということがおわかりいただけたかと思います。そこを理解せずに文章は成立しません。

たとえば、次のようなケースはいかがでしょうか。京都旅行に行ったときの出来事を男性思考でまとめたものです。

『東京十時発の新幹線に乗って、十二時に京都に着いた。昼食を食べて、金閣寺に行ったが、時間に余裕があったので銀閣寺まで足をのばした。十七時の新幹線で東京に向かった。』

これは単なる事象の報告にすぎません。

女性思考でまとめるとどうなるでしょうか。

『十時出発の新幹線だったので早起きしなければならなかったけれど、久々の旅でワクワクして目がさえちゃって、前の日はなかなか眠れませんでした。金閣寺に行って、紅葉を見ながら散歩しました。すごくきれいだったので、たくさん写真を撮っちゃいました。お昼には精進料理を食べたんですけど特にお野菜がおいしかったです。』

大きな違いは論理的か感情的かの差です。女性からしたら男性の話は、「へえー、それで?」と物足りなく感じるでしょう。一方、男性からすると女性の話は、「要点は何?」と思うかもしれません。

しかし、どちらが正しいということではありません。大切なのは、読者がどちらのタイプなのかを理解し、それに合わせた文章を書くことです。

ビジネス文書や報告書なら男性思考の論理的な書き方が適しています。しかし、エッセイやブログ、SNSの投稿なら、女性思考の感情豊かな書き方のほうが読者の心に響くことが多いでしょう。

優れた書き手は、この両方を使い分けることができます。時には論理的に、時には感情的に。読者や目的に応じて、自在に文体を変えられるようになることが、文章力向上への第一歩なのです。

あなたの文章は、誰に向けて書かれていますか? その答えが明確になれば、自然と適切な書き方も見えてくるはずです。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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