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この記事では、保健衛生・社会事業の固定資本減耗を国際比較してみます。
1. 保健衛生・社会事業の固定資本減耗
経済活動別の固定資本減耗の国際比較を試みます。
今回は、公務、教育と共に公共的な経済活動である公務・教育・保健の一角を占める保健衛生・社会事業の固定資本減耗について注目してみます。
特に介護領域を中心に労働者数の増える経済活動ですが、固定資本減耗はどの程度なのでしょうか。

図1 経済活動別 労働者1人あたり固定資本減耗 日本
OECD Data Explorerより
図1が日本の労働者1人あたり固定資本減耗の推移です。
今回着目する保健衛生・社会事業(緑)は上図からは読み取りにくいですが長期的には減少傾向が続いていて、近年では宿泊・飲食業に次いで低い水準で推移しているようです。
保健衛生・社会事業における固定資産とは、病院や介護施設などの建物がメインとなっていると思いますが、設備なども多く必要となる経済活動でもあるはずですね。
2. 労働者1人あたりの推移
保健衛生・社会事業の固定資本減耗について労働者1人あたりの水準(名目、為替レート換算値)の推移を見てみましょう。

図2 労働者1人あたり 固定資本減耗 保健衛生・社会事業
OECD Data Explorerより
図2が主要先進国の保健衛生・社会事業における、労働者1人あたり固定資本減耗の推移です。
日本が非常に高い水準から、近年では他国並みとなっているようです。
労働者1人あたりなので、労働者の増加に合わせて水準としては低下傾向となっている影響が出ているものと考えられます。
3. 労働者1人あたりの国際比較
最新の2022年の水準について国際比較してみましょう。

図3 労働者1人あたり固定資本減耗 保健衛生・社会事業 2022年
OECD Data Explorerより
図3がOECD各国の2022年の国際比較です。
日本は4,335ドルで、OECD30か国中9位、G7中4位で、先進国の中では高い水準のようです。
ドイツの水準が非常に高く、イギリス、フランスが相対的に低いのが印象的ですね。
4. 対国内総生産比の推移
続いて、各経済活動における国内総生産(Value added, gross)に対する比率でも比較してみましょう。

図4 固定資本減耗 対国内総生産比 保健衛生・社会事業
OECD Data Explorerより
図4が教育分野における固定資本減耗 対国内総生産比の推移です。
日本は非常に高い水準から、近年では低下傾向となっています。
ドイツは逆にやや上昇していて、2000年代後半には逆転しています。
他の主要先進国は6~8%で推移していて、ドイツ、日本、韓国とは差がありますね。

図5 経済活動別 労働者数シェア 保健衛生・社会事業
OECD Data Explorerより
図5が労働者全体に占める教育の労働者数シェアです。
日本は他国と比べると少ない割合から、急激に拡大している事がわかります。
少子高齢化に対応して、介護職をメインに労働者数が増加している状況ですね。
OECDの統計データでは公務・教育・保健と一括りにされがちですが、個別に見ると公務・教育と保健衛生・社会事業はやや異なる傾向がありそうです。
5. 対国内総生産比の国際比較
最後に、対国内総生産比の国際比較をしてみましょう。

図5 固定資本減耗 対国内総生産比 保健衛生・社会事業 2022年
OECD Data Explorerより
図5が2022年の固定資本減耗 対国内総生産比の国際比較です。
日本は11.3%でOECD30か国中3位、G7中2位と高い水準となります。
韓国、イタリアも相対的に高く、イギリス、フランスが低い水準なのが特徴的です。
6. 保健衛生・社会事業の固定資本減耗の特徴
今回は経済活動のうち保健衛生・社会事業の固定資本減耗について着目してみました。
日本は労働者1人あたりの金額で見ても、対国内総生産比で見ても高い水準となっています。
ただし日本は減少傾向というのが気になりますね。
この分野の中でも、相対的に属人的で対価の低くなりがちな介護関係の労働者が増えている影響も考えられそうです。
まさに人間らしいホスピタリティの必要な領域ですが、その対価の設定や、自動化などの投資との関係性についても注目すべきかもしれませんね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2025年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。






