
参政党公式HPより
この古谷経衝氏の参政党支持層についての分析が興味深いものだったので、それをもとに生成AIに分析をしてもらいました。
序論:停滞する政治風景における新たな勢力
日本の現代政治において、参政党は単なる小政党として片付けられない、重要な政治現象として浮上している。その出現は、福島第一原発事故後および新型コロナウイルス感染症パンデミック後の社会不安、長期にわたる政治的無関心、そして政治動員のツールとしてのデジタルメディアの成熟といった、複数の潮流が合流した地点に位置づけられる。本報告書は、参政党を世界的な右派ポピュリズムの潮流が日本特有の文脈で現れたものとして捉える。
本分析の出発点は、ユーザーが提示した参政党の支持層に関する分析記事である※1)。この問いの核心は、なぜ特定の層がこの新しい政党に惹きつけられるのかという点にある。この謎を解明するため、本報告書は参政党のエコシステム全体、すなわちそのイデオロギー的メッセージングから組織構造に至るまでを解剖し、いかにして、そしてなぜ特定の人口層を惹きつけているのかを明らかにする。
本報告書の中心的な主張は、参政党の急速な台頭は、デジタルネイティブで反グローバリズム的、そして陰謀論的な色彩を帯びたイデオロギーと、強固な地上の草の根組織を融合させた、巧みに実行されたハイブリッド動員戦略の成果であるという点にある。
この戦略は、オルタナティブヘルス、スピリチュアリティ、そして既存の権威に対する不信感を中心とした「ライフスタイル・ポリティクス」によって自己のアイデンティティを定義する、政治的に疎外された層を効果的に捉えることに成功したのである。
第1章:創生と制度的発展
1.1 創設者の道程:神谷宗幣の政治的進化
参政党のイデオロギーと手法を理解する上で、創設者である神谷宗幣氏の経歴を詳細に分析することは不可欠である。
彼の党結成以前のキャリアは、参政党の思想と戦術の重要な揺籃期であったと言える。彼の政治的キャリアは、吹田市議会議員という地方政治の伝統的な出発点から始まった※2)。しかし、彼は既存政党に幻滅し、一時は自由民主党の支部長も務めたが、そこからも離れていく※2)。
彼のキャリアで特に注目すべきは、「意識改革」を掲げた起業家としての活動である。彼が設立した「イシキカイカク株式会社」やインターネットチャンネル「CGS(Channel Grand Strategy)」は、単なる政治活動ではなく、来るべき政治運動のためのコミュニティとメディアプラットフォームの構築であった※3)。
これらの事業を通じて、彼は参政党が結成される何年も前から、歴史、経済、ナショナリズムを融合させた彼独自の政治思想に共鳴する視聴者層を育成していた。
この「コミュニティ第一、政党第二」のアプローチは、従来の政党形成モデルを逆転させるものであった。伝統的な政党が運動を創り出すのに対し、神谷氏はまずメディア中心のコミュニティを特定のイデオロギーの周りに形成し、それを後に政党として正式化したのである。この長年にわたる下地作りが、参政党の「急速な」台頭に見える現象の背景にある。
また、彼自身が語る、いじめや挫折を乗り越え、「日本の若者の意識を変える」という使命を見出したという個人的な物語は、彼のカリスマ的魅力と党の創設神話の中核をなしている※3)。
1.2 「投票したい政党がない」人々のための党:草の根の創設物語
参政党の最も強力なブランド・メッセージは、「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」というスローガンに集約されている※6)。これは、腐敗し、国民の声に耳を傾けないエリート層に対し、一般市民の主権を訴える古典的なポピュリスト的アピールである。
この物語は、日本の政治における投票率の低下や無党派層の増大といった、実在する制度的空白を戦略的に突くものであった。参政党は、政治的に疎外された人々に「DIY(Do It Yourself)」プロジェクトとしての政党参加を提示し、彼らの無力感と参加意欲に応えたのである※8)。
この物語を補強するのが、特定の支援団体や資金源を持たないという主張である※6)。企業、宗教団体、労働組合からの支援を受けず、党費と個人の寄付によって運営されていると強調することで、自らを「普通の国民が集まった」政党として位置づけ、既存政党の「しがらみ政治」と明確な対比を描き出している。
1.3 政治サークルから国政政党へ:急成長の軌跡
参政党の制度化は驚異的な速さで進んだ。2020年に政治団体として結成され※4)、当初はオンラインでのエンゲージメントと書籍出版を通じて支持基盤を構築した※12)。
そして、2022年の参議院議員通常選挙で大きな躍進を遂げる。この選挙で、代表の神谷宗幣氏が議席を獲得しただけでなく、全国比例で約176万票を獲得し、得票率2%の国政政党要件を満たした※8)。これにより、政党助成金を受け取る公党となり、活動の安定基盤を確保した。
国政での成功と並行して、地方レベルでの拡大も着実に進められた。2023年の統一地方選挙では100名の地方議員を誕生させ、それ以前の31名から大きく勢力を伸ばした※15)。2025年3月時点で、所属地方議員は140名以上に達している※6)。
これらの地方議員の多様な職業的背景(元会社員、元公務員、元教員など)は、「普通の国民の党」というイメージをさらに強化する役割を果たしている※5)。
第2章:イデオロギーの枠組みと政策課題
2.1 中核哲学:保守的ナショナリズムと「反グローバリズム」
参政党の公式な理念と綱領を分析すると、その思想的核が明確になる※10)。
理念として掲げられる「日本の国益を守り、世界に大調和を生む」という言葉や、綱領にある「先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」「日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる」といった項目は、保守的でナショナリスティック、かつ伝統主義的な世界観を強く反映している。
特に重要なのは、党が自らを「日本初の反グローバリズムを掲げる政党」と位置づけている点である※19)。この「反グローバリズム」は、国際金融資本、外国資本、世界保健機関(WHO)のような超国家機関など、日本の主権を脅かすと見なされる様々な外部の力に対する反対意見を包括する、極めて重要なキーワードとなっている。
このイデオロギーは、教育、健康、安全保障といった多様な問題を「グローバリスト勢力による主権侵害」という単一の根本原因に帰結させる、首尾一貫した世界観を支持者に提供する。この統一された物語は、複雑な社会不安に対してシンプルで包括的な説明を与え、心理的に強力な魅力を持つ。これにより、個別の懸念は、壮大な一つの闘争へと昇華されるのである。
2.2 政策の三本柱:その解体
参政党は、抽象的な哲学を具体的な政策に落とし込むため、「3つの重点政策」を掲げている※11)。
- 教育(人づくり):「テストの点数」よりも「自ら考え学ぶ力(学習力)」を重視し、「自尊史観の教育」を推進する※11)。これは、管理されるのではなく自ら仕事をつくりだせる人間を育てることを目指しており、神谷代表が長年注力してきたテーマと直結している。
- 食と健康:「農薬や化学肥料、化学薬品を使わない農業」の推進、食品表示法の見直し、そして医療における「化学的な物質への依存」からの脱却を訴える※11)。この柱は、「自然派」やオルタナティブヘルスに関心を持つ層に直接的にアピールする。
- 国・地域をまもる:外国資本による企業や土地の買収を困難にする法整備、外国人参政権への反対、そして「個人情報と通貨発行権を守る」ための新たなデジタル政府通貨の導入などを提案する※11)。この柱は、伝統的な安全保障への懸念と、現代的なデジタル社会への不安の両方に応えるものである。
これらの政策には、明示的には語られないものの、「生産者主義(プロデューサーイズム)」というポピュリスト的イデオロギーの要素が色濃く見られる。これは、社会の「生産的な」構成員(農家、中小企業経営者、労働者)を称揚し、「寄生的な」エリート層(金融資本家、官僚、グローバル企業)を敵視する思想である。国内農業の保護や外国資本への批判は、左翼的な階級闘争論とは異なる形で経済的不安を持つ層に訴えかけることを可能にし、党を右派の立ち位置に固定している。
2.3 比較で見る参政党の政策的位置づけ
参政党のユニークなイデオロギー的位置づけを明確にするため、その政策を自由民主党(LDP)および同じく反既成政党であるれいわ新選組と比較する。
| 政策分野 | 参政党のスタンス | 自由民主党のスタンス | れいわ新選組のスタンス |
|---|---|---|---|
| 経済政策 | 国富の防衛、反グローバリズム。経済政策の全体像は不明確。 | 親ビジネス、グローバル経済との統合推進。 | 積極財政、反緊縮、消費税廃止※23) |
| 外交・安全保障 | 反グローバリズム、国家主権の絶対視、防衛費のGDP比3%への増額※19) | 日米同盟を基軸とし、防衛力を段階的に増強。 | 反米軍基地、外交努力を重視 |
| 公衆衛生(COVID-19) | ワクチン接種義務化に反対、WHOパンデミック条約に反対※19) | ワクチン接種の推進、国際機関との協調。 | 影響を受けた個人への経済的支援を重視 |
| 教育 | 伝統主義、「自尊史観」教育の推進※11) | 伝統主義的要素と改革主義的要素が混在。 | 教育の無償化、学生支援 |
| 移民政策 | 外国人労働者の増加抑制、外国人参政権に反対※11) | 労働力不足を補うための外国人材の管理された受け入れ。 | 国籍を問わず労働者の権利を重視 |
第3章:参政党支持層の解剖
3.1 新しい反既成政党の有権者:そのサイコグラフィック分析
参政党の支持層を理解する鍵は、東京大学の研究グループによる分析にある※1)。この研究は、特にコロナ禍で新たに「反ワクチン」の立場をとるようになった人々が、参政党の支持基盤の中核を形成していることを示唆している。
この層の主な特徴は以下の通りである。
- パンデミック以前は、従来の政治への関心が比較的低かった。
- 「スピリチュアリティ」「陰謀論」「自然・オーガニック食品」「代替医療」といったトピックに強い関心を持つ。
- メディア、政府、科学界といった主流の情報源に対して強い不信感を抱いている。
この層にとって、パンデミックは一種の「政治的覚醒」のきっかけとなり、参政党は彼らが新たに抱いた世界観にぴったりのイデオロギー的受け皿を提供した。
参政党は、単に政治的な信条を変えさせたのではない。彼らが既に持っていたライフスタイルの選択やアイデンティティを肯定し、それを政治的なものへと昇華させたのである。
例えば、オーガニック食品を買い、医薬品に懐疑的で、特定のスピリチュアル系インフルエンサーをフォローしていた人物は、参政党から「あなたの選択は単なる個人の好みではなく、腐敗したシステムに対する正義の政治的行為なのだ」というメッセージを受け取る。これにより、消費・ライフスタイル上のアイデンティティは、強力な政治的アイデンティティへと転換され、極めて熱心で忠実な支持者が生まれる。
3.2 「目覚め」の物語:世界観の分析
党の書籍に対するレビューや支持者の声明を分析すると、「目が覚めた」「真実が見えた」「全てが腑に落ちた」といった言葉が繰り返し現れる※27)。この「目覚め」の物語は、支持者を単なる有権者ではなく、選ばれた者だけがアクセスできる「隠された知識」の継承者として位置づける。
党の書籍や動画は、この知識への鍵と見なされ、日本がいかに「巨大な構図」によって搾取されているかを暴露してくれるものとして熱狂的に受け入れられている※28)。
3.3 若者とジェンダーの側面
JNNの出口調査では、参政党が特に若い世代から高い支持を得ていることが示唆されている※19)。これは保守政党としては直感に反する結果であり、分析に値する。
この若者からの支持は、日本の「長老支配(ジェロントクラシー)」に対する反発の一形態と解釈できる。若者層は、旧態依然とした既存政党が自分たちの未来に対する不安に応えていないと感じており、参政党の「DIY」精神や「次の世代へ」というメッセージに、既存政治にはない主体性と使命感を見出している可能性がある。
また、党の街頭演説では女性候補者が「母親の視点」を強調する場面が多く見られる※22)。これは、子供の健康や教育に関心が高い女性、特に母親層にアピールするための意図的な戦略であることを示唆している。
第4章:コミュニケーション、動員、そして戦略
4.1 デジタル・ポピュリストの手法:オンライン空間の制覇
参政党の戦略の核心は、デジタルプラットフォーム、特にYouTubeの巧みな活用にある。長時間の演説、政策討論、イベントのライブ配信などを通じて、主流メディアを介さずに支持者と直接的かつ無修正のコミュニケーションを図っている※7)。
さらに、「会費ペイ」というシステムを利用した洗練されたオンライン会員制度は、資金調達とコミュニティ管理の両方のツールとして機能している※33)。
サポーター、メルマガ会員、一般党員、運営党員といった階層的なメンバーシップは、より深いコミットメントを促す「エンゲージメントのはしご」を作り出している※19)。この構造は、参政党が伝統的な政党というより、政治イデオロギーを製品とする多角的メディア企業のように機能していることを示している。
彼らは日々コンテンツ(動画、機関紙など)を制作し※8)、「タレント」(神谷氏など)を擁し、「オーディエンス」(支持者)を育成する。その政治的成功は、メディアとしての成功の直接的な結果なのである。
4.2 ハイブリッド動員:「クリック」と「ブリック」の統合
参政党は、単なる「ネット政党」に留まらない。その強みは、デジタルでの存在感を、熱心な現実世界での活動と統合している点にある。
全国に張り巡らされた284以上の支部(2024年9月時点)が、その活動の背骨となっている※9)。これらの支部は、地域のイベント、勉強会、選挙活動を組織する。
全国各地で精力的に行われる街頭演説は、党の可視性を高め、一般市民との直接対話を可能にする重要な戦術である※7)。そして、その様子は撮影され、再びYouTubeにアップロードされる。これにより、オンラインとオフラインの活動が相互に強化しあう好循環が生まれている。
4.3 政治実践としての出版活動
神谷宗幣氏や吉野敏明氏といった党の主要人物による書籍の出版も、戦略的に活用されている※8)。これらの書籍は、党のイデオロギーを成文化し、知的な権威性を付与するだけでなく、重要なリクルートツールとしても機能する。
オンラインレビューには、本を読んで支持者になったという声が多数見られ※28)、支持者が物理的な書籍を自身の社会的ネットワーク内で共有することで、オフラインでのメッセージ拡散にも貢献している。
党が「学び」を強調し、党員であることを政治学校(「DIYスクール」)への参加と位置づけるアプローチは※19)、日本文化における自己啓発や集団学習の価値観に訴えかける、極めて効果的な動員戦術である。これにより、政治参加のハードルが下がり、「共に真実を学ぶ」という経験を通じて、メンバー間に強固な連帯感が育まれる。
第5章:論争と対決の結節点
5.1 「陰謀論」という批判
参政党が最も激しい批判にさらされているのが、「陰謀論」との関連性である。学術誌やジャーナリズムは、党の主張のいくつかを陰謀論的であると指摘している※5)。
論争の的となっている主な主張は以下の通りである。
- COVID-19とワクチン:ウイルスの人工起源説、mRNAワクチンの危険性(不妊や免疫不全のリスクを含む)、ワクチン義務化やWHOの「パンデミック条約」への反対※19)。
- グローバリストの影響:ジョージ・ソロスのような「国際金融資本家」が利益のために国政を操っているという、漠然としながらも執拗な言及※45)。
- 食と健康:加工食品や化学添加物の危険性、製薬業界と食品業界の癒着に関する主張。
この対立は、単なる政策上の意見の相違ではない。何が証拠として認められるのか、誰が信頼できる権威なのか、そしてどのように真実を決定するのかという、認識論(エピステモロジー)レベルでの根本的な不一致である。
参政党とその支持者は、事実上、主流の認識論的コミュニティから「離脱」している。彼らは主流科学やメディアからの情報を、それ自体が腐敗し偏っているとして初めから拒絶し、代替的な情報源(特定の医師、オンラインのインフルエンサー、党自身のメディア)を優先する。これにより、異なる世界観の間での合理的な対話はほぼ不可能になっている。
5.2 修辞戦略:「知的怠慢」という反論
これらの批判に対し、参政党は洗練された防御戦略をとる。彼らは主張そのものを否定するのではなく、「陰謀論」というレッテル自体を攻撃する。
党の主張を「陰謀論」として一蹴することは、体制側(政府、メディア)が不都合な真実を隠蔽し、正当な議論を封殺しようとする試みであり、「知的怠慢」であると反論する※43)。この修辞戦略は、自らを情報操作の被害者ではなく、勇敢な真実の探求者として描き出す効果を持つ。
興味深いことに、これらの論争は党にとって不運な副作用ではなく、動員戦略の中心的な要素となっている。主流メディアから攻撃されればされるほど、それは支持者に対して「強力で腐敗した体制が我々を黙らせようとしている」という党の中核的な物語を証明することになる。
攻撃はメディアの注目を集め、支持層を活性化させ、強力な内集団・外集団のダイナミクスを生み出し、忠誠心を育むのである。
5.3 論争の的となる主張の分析
客観的な分析のため、参政党の主張と、科学的・事実に基づくとされる主流の見解を並べて提示する。
表 主要な論争的言説と主流の見解
| 主張(参政党による) | 主流の科学的・政治的見解 | 関連資料 |
|---|---|---|
| COVID-19ワクチンは危険であり、広範な死や後遺症を引き起こす。 | 主要な保健機関は、ワクチンの安全性と有効性を確認しており、稀な副反応のリスクは利益をはるかに下回ると結論付けている。 | ※24 |
| 国際金融資本家(「グローバリスト」)が国策を秘密裏に支配している。 | ロビー活動や企業の影響力は現実の政治問題だが、これはしばしば反ユダヤ主義的な比喩に依存する、過度に単純化された陰謀論的説明と見なされる。 | ※45 |
| WHO「パンデミック条約」は日本の主権を奪う。 | 支持者は、将来のパンデミックを防ぐための国際協力の枠組みだと主張。法的分析では、国内法を覆すものではないとされる。 | ※19 |
| 無化学肥料・無農薬農業は国家レベルで実現可能な解決策である。 | 主流の農学では、大規模な人口を養うには非現実的であり、特定の「化学物質」の定義に依存するとされる。 | ※11 |
第6章:日本政治のエコシステムにおける参政党
6.1 右派ポピュリズムの新たな潮流:比較分析
参政党を日本の政治地図の中に位置づけることで、その特異性がより明確になる。
- 対 自由民主党:参政党はLDPよりもイデオロギー的に硬直的で、より公然とナショナリスティックであり、根本的に反グローバリズムである。これは、LDPの実利的、親ビジネス的、そして親米同盟的な保守主義とは対照的である。参政党は、LDPの支持基盤の中から最もイデオロギー的な保守層の一部を引き抜いている※19)。
- 対 日本保守党:同じく新しい右派政党である日本保守党との比較も重要である※46)。両党ともに保守的・ナショナリスティックであるが、参政党が「食と健康」や特定の陰謀論的要素を強調するのに対し、保守党はより伝統的な安全保障や歴史問題に焦点を当てており、異なるライフスタイル志向の層にアピールしている。
- 対 れいわ新選組:左派ポピュリズムの代表格であるれいわ新選組との比較は、現代日本のポピュリズムの性質を浮き彫りにする※23)。両者は共に反既成政党的なレトリックを用いるが、その「敵」は異なる。れいわが国内の経済エリートや緊縮財政を攻撃するのに対し、参政党は外部の「グローバリスト」勢力を標的とする。その診断と処方箋は、鏡像の関係にある。
参政党の出現は、これまでLDPという「大きなテント」の下にまとめられてきた日本の保守主義が「アンバンドリング(分解)」しつつある可能性を示唆している。参政党や日本保守党は、より純化され、イデオロギー的に先鋭化した「ブティック型」の保守主義を提供している。参政党は、その中でも「反グローバリズム、健康志向、伝統主義」というニッチ市場を開拓した。
6.2 将来の軌跡:可能性と落とし穴
参政党の将来には、大きな可能性と同時に深刻な課題も存在する。
- 機会:政治不信の継続、将来の健康危機や経済危機が支持層をさらに活性化させる可能性、そして強力な組織・メディア基盤が挙げられる。地方選挙での成功は※15)、将来の国政選挙に向けた足がかりとなる。
- 障害:そのニッチなアピールが「ガラスの天井」になる可能性がある。さらなる成長のためには、最も物議を醸す主張を穏健化させる(しかし、それは中核的な支持層を遠ざけるリスクを伴う)か、あるいはそれらの主張を主流派にも受け入れられるようにする方法を見つける必要がある。また、党が成長し多様化するにつれて、内部の結束を維持することも課題となるだろう。
参政党の長期的な成否は、日本の民主主義制度と公共圏の強靭さを示すリトマス試験紙となるだろう。
主流メディアや既存政党は、彼らの迫害コンプレックスを煽ることなく、その物語に効果的に対抗する方法を見つけられるか。教育システムは、参政党が繁栄するような情報環境を乗り切るために必要なメディアリテラシーを育成できるか。
この党の軌跡は、21世紀の日本の民主主義の健全性に関するこれらの重要な問いに、答えを与えてくれるだろう。
結論
参政党は、健康、国家アイデンティティ、グローバリズムを巡る社会不安を巧みに政治的エネルギーに転換した、極めて成功したデジタルネイティブの右派ポピュリズム運動である。その成功は、「ライフスタイル・ポリティクス」というアイデンティティを肯定する一貫したイデオロギー、既存のメディアプラットフォームを持つカリスマ的リーダー、そしてオンラインとオフラインを融合させたハイブリッド動員戦略という三つの要素に起因する。
この現象が日本の民主主義に与える影響は大きい。グローバリズム対ナショナリズムという新たな政治的対立軸の出現、政治的現実を形成する上でのオルタナティブ・メディア・エコシステムの力の増大、そしてこの種の高いアイデンティティとコミットメントを要求する政治が、日本の伝統的な低関与型の政治モデルに突きつける挑戦である。
今後の研究課題としては、①参政党支持者の信念の変遷を追跡するための長期的なパネル調査、②草の根活動の社会的ダイナミクスを理解するための地方支部の詳細なエスノグラフィー研究、③実際の統治への影響を評価するための、参政党所属地方議員と他党議員の政策アウトプットの比較分析などが挙げられる。
これらの研究は、この新しい政治勢力とその日本社会への影響について、より深い理解をもたらすであろう。
【引用文献】
※1)PRESS RELEASE 人はなぜワクチン反対派になるのか – 工学系研究科 – 東京大学
※2)神谷 宗幣 | 講師紹介 – 未来政治塾
※3)第1回 神谷そうへいの想いとこれまでの活動 – 選挙ドットコム
※4)神谷 宗幣(かみや そうへい):参議院
※5)メンバー紹介 – 参政党
※6)参政党紹介 – 参政党静岡県支部連合会
※7)参政党 -sanseito-
※8)参政党BOOK
※9)参政党東京都多摩支部連合会 公式ホームページ
※10)sanseito- | 参政党とは? – 参政党
※11)参政党の政策 – 人がつなぐ、あったかいまち板橋
※12)投票したい政党がないので自分たちでつくってみた (扶桑社BOOKS) eBook : 参政党
※13)参政党 検索結果一覧 – 扶桑社
※14)第26回参議院選挙[参院選2022]
※15)【統一地方選挙】合計100名の地方議員が誕生! – 参政党
※16)理念・規約 | 参政党
※17)党員募集 – 参政党東京都城東支部連合会
※18)參政黨- 維基百科,自由的百科全書
※19)参政党- 维基百科,自由的百科全书
※20)参政党Q&Aブック 基礎編 / 神谷 宗幣【編著】 – 紀伊國屋書店
※21)機関紙一覧 – 参政党
※22)【衆院選2024ネット演説】参政党 江崎さなえ候補/応援:神谷宗幣代表 – YouTube
※23)基本政策 – れいわ新選組
※24)新型コロナワクチンに関する提言 – 参政党
※25)人はなぜワクチン反対派になるのか ―コロナ禍におけるワクチンツイートの分析― – 東京大学工学部
※26)陰謀論やスピリチュアリティが反ワクチン的態度のきっかけとなった可能性 コロナ禍におけるツイートの分析により解明 – 東大新聞オンライン
※27)参政党の理念と綱領に、私が心から共感する理由
※28)【楽天市場】国民の眠りを覚ます「参政党」 [ 吉野敏明 ](楽天ブックス) | みんなのレビュー·口コミ
※29)【楽天市場】参政党ドリル [ 神谷宗幣 ](楽天ブックス) | みんなのレビュー·口コミ
※30)動画チャンネル – 参政党
※31)【参院選公約発表】参政党 参院選公約発表 全編ノーカット配信 2025年7月参院選 – YouTube
※32)【都議選2025】参政党が初議席獲得 神谷宗幣代表「他党のチェックが甘い外国資本流入や公共施設の民営化、パンデミック対策、脱炭素など訴え」「民族主義を煽りすぎるのも危険、歴史認識の光と影の両論併記を」 – YouTube
※33)党員登録|サポートサイト – Google Sites
※34)街頭演説一覧 | 参政党
※35)【楽天市場】参政党の通販
※36)参政党Q&Aブック基礎編 – 実用 神谷宗幣(青林堂ビジュアル):電子書籍試し読み無料
※37)会派名及び会派別所属議員数 – 衆議院
※38)選挙 – 地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等 – 総務省
※39)参政党を取り巻く陰謀論 : 自然派、反ワクチン、レイシズム…… | CiNii Research
※40)参政党を取り巻く陰謀論 : 自然派、反ワクチン、レイシズム…… (特集 カルト・宗教・政治) | NDLサーチ | 国立国会図書館
※41)日本の「陰謀論」最新事情、反ワクチン団体・神真都Qと参政党の内実 – ダイヤモンド・オンライン
※42)地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等(令和5年12月31日現在) – 総務省
※43)【国会】神谷宗幣 防衛予算に関連し、生物兵器、新型コロナワクチンについて問いただす | 参政党
※44)参政党の新型コロナ・ワクチン政策
※45)【記者会見報告】2月28日定例記者会見 | 参政党
※46)【公式】日本保守党|日本を豊かに、強く。
※47)【速報】都議選 参政党が初の議席獲得 大田区の最上佳則候補が当選 – 広島ホームテレビ
編集部より:この記事は島田裕巳氏のnote 2025年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は島田裕巳氏のnoteをご覧ください。






